紅竜
二人の紹介を終え、ユウとハルが出かける準備を終えると俺達は平原へと向かった。
「・・・・ってことで、今から戦うのは恐らく水土竜だ。希少種が出る確率もあるから注意しておけよ」
「お兄、フラグ立てないでよぉ」
「お兄様と一緒なら、私はなんだってできます!」
「私が皆を守るから、心配はいらないよ!」
「何が来ようと、やることは同じです」
「出来る限り~頑張るよ~」
「皆準備は出来ているようだし、ボス戦頑張ろうか」
俺達はボス出現エリアへぼすえりあへと入った。
「ほらー。お兄があんなこと言ったから、希少種が出ちゃったじゃん!しかも、レベルだけ見ると、第七エリアのボスと同じくらいだよ!」
「は、は、は。それはすまなかったな。でも、まあ、勝てない相手ではないだろ」
出てきたエリアボスは水土竜を食らっているところだった。姿形は西洋の伝説で出てくる竜そのものだ。鱗の色は赤。名前は紅竜、レベルは96。今の俺のレベルが48。経験値増加の影響でレベルが上がりやすくなっているのに加え、50で職業を進化させることになるが、そこからレベルが上がりづらくなることを考えると、この竜はかなりの強さと言えるのだろう。
「で、どうするの?お兄」
「お兄様ご決断を」
「そうだな、シュリはいつも通りに頼む。ハルは基本シュリの補助。ユウは俺と一緒に攻撃、コトもだ。ユズはパーティのHPの管理とバフを頼む」
「はい!」「分かったよ~」「了解」「はーい」「お兄様に従います」
「じゃあ行くぞ!」
先に攻撃してきたのは紅竜だった。使ってきたのは尾での薙ぎ払い。
シュリが盾出防ぐが、それなりにダメージをくらった様だ。
「今回復します!」
「ありがとう。思ったよりきいたな~。次は受け流すか弾くようにしないと盾の方が持たないかも」
シュリの盾は今の一撃でひびが入っていた。シュリの盾はここら辺で使えるものとしてはぶっちぎりの最高品質だ。つまりは竜がここら辺のエリアで出るには早すぎたんだろう。
「今だ!攻めるぞ!」
「はい!」「りょ!」
「一気に決めるぞ!
神楽流【識】【繋】【伶】
神楽流秘伝・七の型【連奏】
【光牙】
【八咫烏】
【波切】
【鵺斬】
【双刻】
【鏡写し:『神星流』彗星】
【鏡写し:『神鳴流』覇牙】」
神楽流に伝わる秘伝と呼ばれる技の一つ【連奏】。これは、奥義までの技をいくつも繋げて放つ技である。【繋】を使っていればこれに近いことは出来るのだが、それをさらに精度を高めるために作られた技だ。周りから見ると舞っているようにも見えるらしい。
「私も行くぞ!
神鳴流剣術奥義【豪天】
神鳴流剣術奥義【鳴轟】」
この二つはつなげる技として使われることも多く、空中に打ち上げる【豪天】、地に撃つ【鳴轟】。二つをつなげることで、ダメージは数倍に上るとも言われえている。
「私もいっくよー!
神楽流槍術奥義【螺転】
神楽流槍術奥義【天刺】」
こちらは繋げるのではなく、同時に放つことで威力が増大する技である。手の中で回転させることで貫通力を上げる【螺転】、刺すことに特化させた【天刺】。天刺は天をも突く技として後世に伝えられてきた技である。
小菟琶は周りから見れば天才と矢ばれる部類の人間である。しかも、神楽流門下生として見られても天才と呼ばれる部類だろう。小菟琶が天才として呼ばれるのは主に運動である。(勉強は小柚子である)
しかし、俺が兄だったため(血がつながってないのに)『兄と比べると・・・』『羅優喇君と比べるとちょっと・・・』などと言われてきた。小菟琶には俺が到達するべき目標として見えていたはずだ。
しかし、小菟琶が才能を発揮したのは槍術だった。俺が近接と遠距離が得意なのに対して、小菟琶は中距離武器。しかも、俺が槍を使っても同じ程度の実力はあると来た。それでも小菟琶はめげづに努力に努力を重ねることで、槍での戦いならば俺に善戦出来る様になり、その内俺に勝てることの方が増えていた。
小菟琶は槍術と言う一つの分野に関してだけならば、海田をも使いこなせる実力を持っているだろう。
俺、ユウ、コトの攻撃が竜に集中して当たった。
『ギャアァァァアアァァァァァ!』
コトの槍で前足は両足とも貫かれ、ラウラの連奏によって体中ボロボロ。それがユウの豪天によって打ち上げられた間に行われ、そこに追い打ちをかけるように鳴轟で地面に叩きつけられた紅竜は満身創痍の状態だった。
「さて、これでおわ『まってください!』ん?」
「どうかしたのか?」
「お兄いきなりどうしたの?」
「何か声が聞こえてな。まあ、気のせいだろ」
『きのせいじゃないよ!』
「まさか・・・お前か?!」
俺は竜の方を見て尋ねた。そう事実なら納得もいく話である。俺の種族は龍人なので、竜の声が聞こえても可笑しくないのだろ。
『ぼくをつかいまとしてつれていってください!』
「まあ、いて困るもんでもないし別にいいか。で、どうやればいいんだ?」
『ぼくにまりょくをながしてくれればだいじょうぶです』
「こうだな。ほらよ」
俺は紅竜に掌をつけると魔力を流した。
『・・・・・』
「・・・・・」
『ちょっと、おおすぎです!』
いつになったら流すのをやめるのか待っていたのだろう。いつになっても流すのをやめない俺に、突然紅竜は突然声を上げた。
「ああ、多かったのか。いつになってもストップをかけないからまだ必要なのかと思ったよ」
「スキルを取れば一瞬で解決でしたよね」
ユズはもう一つの方法を言った。たしかにその方法ならば魔力を流す必要はなかったのかもしれない。
「まあいいや。こいつの名前を考えようぜ」
「『アポリマタ』何てどうでしょうか?」
「却下だ。何で屑なんて名前にしようとする」
「『キリオス』何てどうだ?」
「それじゃ流石にカッコよすぎないか?」
「そうかもしれないな」
「『コーク』何てどう?」
「案の一つには入れておくか」
「『カタラ』はど~」
「呪術師か、それは酷くないか?」
「い~や適当に言っただけだよ~」
「そうか。じゃあ俺からも『クルト』はどうだ?」
「却下」「それは無いよ」「チーズかな~」
「すいません、お兄様。流石にないかと」
「ごめん、ラウラ君。それはない」
「チーズの方じゃないぞ!さっきから『クルクル』鳴いているから、それに語呂合わせで『ト』を入れたんだよ」
「それならいいのでは?」
「お兄が飼い主だからねー」
「私は何でもいいよ~」
「お兄様が考えたものに依存はございません」
「私も。ラウラ君が飼い主なんだから、自由に決めていいと思う」
「シュリは何かいい案無いのか?」
「え!私?特にないよ。それに私、前家で犬を飼った時に名前つけようとしたら、両親に『もうお前は名前を考えようとするな』って言われたから」
「何て付けようとしたんだ?」
「『ネクロス』だよ」
「「「「「あ(察し)」」」」」
「可愛いと思わない?」
「確かにかわいいとは思うが、まさか意味を知らないのか?」
「どういう事?」
「それはギリシャ語で『死者』と言う意味を持っているんだが、まあ、子供の頃は兎も角として、お前はあの高校に通っているんだろ?よくこんなことも知らないでは入れたな」
「うぅ・・・半分はコネ入学みたいなものだったから。入ってからラウラ君に教われって言われて」
「お前大変なんだな」
「分かってもらえたか。ともかく、これで俺とコトのどっちかに決まったな。お前はどっちがいい?」
『ぼくはごしゅじんさまにつけてもらったなまえがいいです!』
「じゃあ、お前はこれから『クルト』だ」
こうして、新たにクルトが仲間となった。