チベルト山脈③
ノーブルウルフを狩るために中層へ通りて来たラウラたちであったが、ノーブルウルフどころか他の魔物も出てこなかった。そして、周囲の木はほとんどが折られていたり、燃やされたりしていた。
「おかしいですね。上へ向かうときは気にしませんでしたが、思い返してみれば、行きの時も何も出てきていなかったですし。ラウラさん、周囲の警戒を頼めますか?」
「分かった。気配も探っておくよ・・・・・・・・・・少し降りたところの木の陰に、人が十三人いる。おそらく、PKのやつらだ」
「ありがとうございます。では、こちらが気づいていることを悟らせないように進みましょう。そうすれば、横を通った後にでも奇襲をかけてくるでしょう。奇襲はばれていたら意味がありません。逆に叩きましょう」
ラウラ達は警戒している様子は見せつつも、相手のことに気づいている風には見えないように進んだ。
ラウラ達が、PKの隠れている木の横を通ると、木の上から飛び降りきりかかってきた。
「ヒャッハー!!やるぞお前らー!!!」「「「「おう!!!!!」」」」
「元々気づいていましたが、ここまで大声出して奇襲してくる意味はあるんでしょうか?声を出さずに攻撃した方が、倒せる確率は上がるでしょうに。
神明流剣術奥義【覇剣】ハアアアー!」
神明流は攻撃力をひたすらに鍛えた流派で、他の攻撃力を鍛えた流派と比べても頭一つ抜けている。
「きっと~この人たちは~バカなんだよ~【二重詠唱:火壁】」
ハルの放った火壁はハルの周りを囲み、敵の侵入を阻んだ。
「私も同意見です。【シールドカウンター】」
シュリは盾で相手の攻撃を受け止め、剣で攻撃をした。
「おそらく、火力集中型の魔法使いがいるから気をつけろよ
『我は龍。最強の種族にて敵を潰すもの
原初の力を用いて、敵を滅する矛となれ』喰らえ【龍喰】」
ラウラが詠唱を終え相手に手を向けると、手から龍が現れ仲間以外のすべてを喰らい始めた。
それを見た、その場にいたラウラ以外の全員の心の声はほとんど一致した。『火力集中型の魔法使いより、お前の方がやばいだろう』と。
ラウラが出した龍は、周囲50mほどを喰らいつくした。その攻撃で敵はいなくなったようで、報酬が手に入った。
その日はノーブルウルフを狩るために、山を一周したという。