Fear of Friday the 13th (13日の金曜日)
昨日、女が殺されたという。
ナイフで首を引き裂かれて、道路に捨てられていた。
金品を奪われたわけではない。
怨恨か?
それは犯人しか分からないことだ。
それから毎週金曜に女が殺されるようになった。
同じようにナイフで首を引き裂かれている。
明らかな同一犯だった。
警察は威信をかけて犯人を捜した。
だが、捕まえることは出来ていない。
人々は恐怖に慄いた。
次は私かもしれない、と全ての女は思った。
金曜日は恐怖の金曜日となった。
女達は金曜には出かけなくなった。
それなのに女は殺され続けた。
犯人は誰なのだろう?
どうして殺すのだろう?
何が目的なのだろう?
分からないことばかりで警察も途方に暮れた。
金曜が恐ろしいからといって出かけることを止めることは出来ない。
私には仕事があるし、生活がある。
気楽な主婦ではないのだから働かなければならない。
大丈夫、夜遅くに帰らなければいいことだ。
私が殺されることはない。
よく分からない自信があった。
それが間違いだと知るのは後のこと。
仕事で遅くなってしまった私は家に向かって走っていた。
暗い夜道は気持ち悪い。
自然と駆け足となる。
私の足音と共にもう一つの足音が聞こえた。
誰かがついて来ている?
今日は何曜日だっけ?
そう思ってゾッとした。
今日は恐ろしい金曜日。
女が殺される金曜日だ。
恐怖で後ろを振り返ることも出来ない。
だが、知らない誰かは確実に近づいて来ている。
私は息を乱しながら走った。
ぐいっと腕をつかまれて、首筋に冷たい感触がした。
鋭い痛みと体から力が抜けていく感覚。
ああ、私は生きるために働いているのに。
それだけなのに…
そうして私は冷たくて汚い道路に横たわった。