新しい生活
午前5時半、いつもより少し早く目が覚める
いつも1人分だったけど昨日から新しい同居人が増えた
2メートルをゆうに越える長身だけあって彼の食べる量は多い
約6合分の白米が1回分の食事で消費される様はなかなか圧巻だった
(いっぱい作らないと)
手間は大幅に増えたものの心底美味しそうに頬張る姿を見ると頑張ろうかという気分になる
(じいちゃんが帰ってきたみたい)
母が亡くなり、仕事に打ち込み帰る事が無くなった父をみかねて祖父が自分を引き取ってくれた日々は祖父が亡くなるまで幸せだった
老齢になっても宇宙開発に携わっていた祖父は父ほどでは無いにしろ忙しかったはずだがそれでも自分との時間をたくさん作ってくれていた
朝早く出かけてはほぼ毎日夕飯には帰ってきて一緒に食卓を囲む
毎日作った夕飯を必ず美味しいと言って喜んでくれた
本当に幸せだった……
『おはよっ!手伝うよ』
『わっ!びっくりした』
物思いにふけっていたらいつの間にか起きてきたマグニに声をかけられた
ニヤけてた姿を見られたと思うとちょっと恥ずかしい
『とりあえず冷蔵庫からキャベツとトマトとりんご取ってくれるかな』
『オッケー』
その間に卵とハムを焼く
自分の分はひとつずつ、マグニの分は5つずつ
(バイトしようかな…)
今朝炊いたご飯は既に炊飯器から綺麗に無くなって、また準備しないといけない
現状祖父の遺産や父の仕送りで全く不自由は無いしマグニはマグニで支給されている生活費を出してくれたものの油断は出来ない気がする
向こうの基準とこっちの基準が同じなんてアテには出来ない
朝から世知辛い事を思いながら準備を済ませた
『行ってきます』
『行ってらっしゃい』
色々と不安もあるけれどきっと大丈夫
屈託のない笑顔に見送られて新しい今日が始まる