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魔王へのレクイエム  作者: 浜柔
第一章 魔王は座すのみ
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第二話

 ここはダンジョンの最奥、魔王の居室。

「ああ~ん、魔王さまっあ~ん。いいの~、いいの~、イッちゃうのぉ~ん!」

 ビクン、ビクン。

「ひゃーっははは! 魔王! 死ね死ね死ねぇ!」

 どっかん、どっかん。

「くっ、殺せ!」

 ぼっかーん。

 独りでよがった挙げ句にエクスタシーに達して身体(からだ)を痙攣させる女、魔王に向けて魔法を連発する女、スライムに絡まれる恥辱に身体を震わせながら爆発を起こす女。

 見ているだけの魔王は言葉も無い。魔法攻撃を受けてはいるが、何の痛痒も感じない取るに足らないもののため、相手にする必要を感じていない。


 独りでよがっていた女の名はリリナ。元は聖女である。ところが初めて魔王を前にした時に瘴気に汚染され、瘴気で快感を得る変態となった。そして魔王の許を訪れては、自らの両のおっぱいを激しく揉みしだきながら快感に浸るのだ。

 それまでは聖女らしかった服装も、今では殆ど全裸に等しい破廉恥な服を身に着けている。ホルターネックでおっぱいの先端だけが隠れるくらいの幅の布が二本有るだけの上半身、ヒップの幅の半分以下の幅しかない布で前後の中心部だけを覆った下半身と、服とも言い難いワンピースのドレス。ただの布切れと言っても過言ではない。下着は着けておらず、おっぱいの大半をはみ出させ、(へそ)も丸出し、背中も丸出し、ヒップの両脇も丸出しで、真横から見れば殆ど全裸にしか見えない。

 これが今の常の服装でもある。ある意味で今も聖女に違いない。


 魔法を放つ女の名はエミリー。今も昔も魔法士である。ただ、初めて魔王を前にした時に瘴気に汚染され、ヒャッハーな戦闘狂になった。そして魔王の許を訪れては、攻撃魔法を放つのだ。

 魔王には一切通用していないのを解っていながら攻撃するのだから酔狂の極みである。


 爆発を起こした女の名はオリエ。今も昔も騎士である。ただ、初めて魔王を前にした時に瘴気に汚染され、恥辱を受けて快感と歓喜を覚える変態になった。そして魔王の許を訪れては、魔王の居室に居座っているスライムに絡まれ、装備や服を全て溶かされて恥辱的なポーズを取らされては高まる快感の中で「くっ、殺せ!」の言葉と共に爆発を起こすのだ。

 わざわざ全裸に剥かれるために魔王の許を訪れているようなものである。


「今日のところはこれで勘弁してやるぜ」

 オリエの爆発を合図にエミリーが攻撃を止めるのもいつものことだ。

 この頃にはリリナも「ん、んー」と小さな呻き声を発しつつ目を覚ます。

 そして三人して「今日も駄目だったねー」と言い合いながら帰って行くのである。

「お前達は毎度毎度何がしたいのか?」

 魔王が零した問いに三人が振り返る。

 真っ先にリリナが身体をくねらせ、おっぱいを揉みしだきながら答える。

「勿論、魔王さまから直接愛を注いで戴くためですわん」

 魔王には間接的だろうと愛を与えた覚えが無い。しかし言わんとするところは魔王に触れたいと言うことだろうとは判る。今はかなり離れた場所で瘴気に悶えるばかりなのだから。

 次にエミリーが答える。

「魔王を倒すために決まってんだろうがよ!」

 魔王には理由は理解できても力不足がはっきりとしたままで繰り返す意味が解らない。

 最後にオリエが答える。

「恥辱を克服するためなれば」

 魔王、関係無かった。

 質問して魔王に解ったのは、大凡(おおよそ)理解できない女達だと言うことだけだ。

「もう良い。立ち去れ」

「またお伺いいたしますわん」

「おう、またな!」

「また(まみ)えようぞ!」

 口々に再会を約束して立ち去る三人。しかし魔王にとっては会う必要がまるで無い。慣れすぎだと呆れるばかりである。


 三人の気配が遠くなってから、魔王はスライムを見やる。オリエの爆発でバラバラに飛び散ったスライムはまた一つに寄り集まって、傷を癒すかのようにじっとしている。

 このスライムはカーミットと言う名の剣士の成れの果てだ。リリナ、エミリー、オリエと共に初めてここに訪れた際に、瘴気に汚染されてスライムと化した。最初はマーブル掛かった肉色をしていたが、日を追うにつれて透明感が増している。今ではほんのりと向こうが透けて見えるほどだ。

「お前も何がしたいのか?」

 問い掛けてもスライムは答えない。口も何も無いので当然だ。だから少しだけ想像する。

 このスライムはあの三人が揃って訪れた際にはリリナに飛び掛かる。しかしいつもオリエが立ち塞がるので、嬲る相手がいつもオリエになる。そして一度オリエを嬲り始めたらリリナに目移りすることも無い。

 スケベなだけかと結論付けるより無さそうであった。


 魔王の居室を辞した三人はダンジョン内を駆け上がる。内二人は豊かなおっぱいがたゆんたゆん、ぷるんぷるんと揺れるのもお構いなしだ。エミリーは豊かと言うほどでもなく、服も普通に着ているので殆ど揺れない。そして日の暮れない内に地上に着く。

 魔王の居室は地中に奥深い場所に在るが、元々魔王がダンジョンを作る際に地上からジグザグに掘り進んで居室を一つ造っただけだったため、直通と言える経路が存在する。平坦な道であれば多くの人が半日で歩ける程度の距離だ。だが、それはもう五百年余り前であり、人がダンジョンに入るようになったのは、そこから百年も時を下った後のこと。それまでの間に、たまたま住み着いた動物や瘴気から生まれた魔物によってダンジョンは縦横に掘り進められて大きく広がっていた。人はそんな末節に当たる出入り口から侵入を果たしたのだ。

 そしてリリナ、エミリー、オリエ、そしてカーミットは入り口こそ末節ながら、直通経路を見つけたのだった。

 ダンジョンの入り口は魔物の闊歩する魔の森と呼ばれる森の中に在り、最寄りの町は森の(ほとり)に在る。ダンジョンの魔物を狩る魔物猟師が主に暮らし、三人が拠点にしているのもその町だ。

 三人が魔王の居室を訪れる大まかなスケジュールは、朝早くに町を出て昼前に魔王の居室を訪れ、魔王と戯れた後は昼頃には魔王の居室を出てまだ日のある内に町に戻る、と言うもの。行き帰りの途中では生活費のために魔物を倒して魔法結晶を採取したりもする。そんなこんなで殆ど走りっぱなしなのだが、瘴気に順応した今なら大して疲れもしないのだった。


 どこかさっぱりした様子で歩く三人を目撃して慌てるのは町の人々である。

 カンカンカン、カンカンカンと警鐘が鳴らされる。

「オリエ警報! オリエ警報!」

 町の治安を担う自警団員が警報を発して駆け回る。

 リリナ、エミリー、オリエはいずれも厄介な存在になっているが、オリエの厄介さばかりは特別な警戒を必要としている。

 何がと言えば、「くっ、殺せ!」からの爆発である。爆風だけで殺傷力は低いのだが、周囲を巻き込んで色々なものを破壊するので物的被害が甚大なのだ。

 事の起こりは彼女らが初めて魔王に出会った後のこと。オリエは服の切れ端を身体に貼り付かせただけのほぼ全裸のまま、リリナとエミリーを抱えて町に戻った。当然のように何ごとかと人々が集まる。そして当然のように全裸のオリエに注目が集まる。するとオリエが羞恥に身体を捩らせたのだ。

「す、すげー」

 鼻息も荒く、生唾を呑み込む幾人もの男達。オリエは恥辱を感じた。

「くっ、殺せ!」

 ぼっかーん。

 爆風に吹き飛ぶ男達。オリエはリリナとエミリーをその場に放り出して逃走する。町に着いているので二人を放り出しても大丈夫だと言う打算だ。しかし逃げた先にも人は居る。それも血の気の多い猟師がそこかしこにだ。全裸の女が彷徨(うろつ)いていれば思わず襲い掛かってしまう輩も出ようと言うもの。路地裏に入り込んだところをオリエは三人の男達に襲われた。

「そんな格好をしている方が悪いんだぜ」

「堪らねぇ」

「直ぐに気持ち良くさせてやるからな」

「そ、そんな……、こんな男に好きにされるなど何たる屈辱……」

 押さえ付けられ、(ねぶ)り回されて身体を震わせながらそんなことを言うオリエ。実はこれ、腕力で三人を払い除けることもできるのに敢えて好きにさせているのだ。

 そしていよいよレイプされそうになった時。

「くっ、殺せ!」

 ぼっかーん。

 吹き飛ばされる男達。周囲の建物の壁にも穴が空く。

 するとその騒ぎで人が集まって来る。そうしたらまたレイプされそうになった姿を目撃された恥辱にオリエは身体を震わせる。

「くっ、殺せ!」

 ぼっかーん。

「くっ、殺せ!」

 ぼっかーん。

「くっ、殺せ!」

 ぼっかーん。

 来る人来る人吹き飛ばされて、周囲の建物は半壊した。

 自警団が駆け付けても自警団が吹き飛ばされるので、その場は騒ぎの途中で意識を取り戻したリリナとエミリーに任せて後日に事情聴取をすることになる。しかしその事情聴取でも、当時の状況を訊かれる途中。

「くっ、殺せ!」

 ぼっかーん。

 色々破壊はしても悪事を働いてのことでもなく、そっとしておいた方が被害が少ないと言うことで、取り敢えずは放免になった。

 しかしその後も事件を知らない者がオリエを襲って同様の事件を起こすので、特別に警戒態勢が敷かれるようになったのだ。


「じゃあ、オリエは先に帰っててねん」

「おう、寄り道すんなよ」

「そのくらい心得ている」

 疑わしそうにオリエを見る二人である。

 最初の頃こそエミリーが自らが羽織るマントをオリエに貸したのだが、それを羽織ってもオリエのおっぱいや下半身は隠れなかった。却って卑猥なほどだ。そして「何たる恥辱。くっ、殺せ!」ぼっかーんとやらかして、マントもずたぼろにしたのでエミリーも怒り心頭になった。その上、いざ全裸を衆目に晒した時には顔を上気させるばかりで嫌がっているようにも見えない。両腕でおっぱいと股間を隠してはいるが、色々隠しきれず、特に乳首がこぼれっぱなしなのだ。

 皆が見て見ぬ振りをするのを良いことに、そのままあちこちをふらふら彷徨(うろつ)きそうではないか。

 いや、二人にとって、特に全裸も同然の格好のリリナにとっては彷徨くこと自体は問題ではない。ぼっかーんだけが問題なのだ。

 そんな二人の様子を知ってか知らずか、オリエは真っ直ぐ自宅の方に向かう。言い付けは守るらしい。

「さ、あたしらは買い物して帰ろうぜ」

 エミリーの言葉にリリナが頷いて二人は商店が集まる方へと向かった。


 自警団が警戒線を敷くためにオリエの姿を見られない男達の興味は専らリリナに向かう。あんな格好なんだから色々見えるんじゃないかと思って周囲を彷徨きながら核心部分が見えるのを心待ちにする。

 ところがそれはもどかしくも叶わないのだ。それはそれは悪魔的に叶わない。特に悪魔的なのがそんな格好をしていながら時たま乳首がチラッと布からはみ出すことが有るだけで、どんな場合もどこから見ようと下半身の核心部分は見えない。

 その理由は彼女のいつ覚えたのかも知れない固有魔法による。

 魔法の名はチラリズム。豊かなおっぱいの揺れに合わせて布から乳首がはみ出ても、揺り戻しに合わせて乳首が布に隠れる。常識ではあり得ない動きをする。更に下半身の布は激しく動いても謎の動きで秘密の場所を隠す。あまりにトリッキーな動きで小さな布では隠しきれない場合でも謎の光が秘密の場所を隠してしまう。どうあっても核心部分は乳首がチラッと見えるだけなのだ。

 思いあまって襲い掛かる者も居た。しかし不思議な力でねじ曲げられて触れようとしても掠りもしない。これもチラリズムの効果で、チラチラを損なってモロになるのをいかなる場合でも防ぐのだ。

 見たくて見たくて仕方がないのにどうしても見えないので血の涙を流した男が居るとか居ないとか。


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