第十三話
ノルトが日記を読んでいる間にも瓦礫の搬出は進み、瓦礫を退けながらなら床の調査ができるまでになった。ここからはドレッドとクインクトが床の調査をし、ノルト、サーシャ、マリアンが既に見えている遺物の搬出をする。天井が崩れてしまった今、雨にも風にも直接曝されるのだ。天気が良好な間に全て運び出さなければ遺物が台無しになってしまう。
バケットを遺物搬出用のものに変えたら作業開始。最初のバケットにはノルトとサーシャで本などの遺物を詰める。それを吊り上げる間にサーシャは地上に上がってそのまま地上に留まり、バケットから降ろす作業をマリアンと共に行う。これ以降のバケットへの積み込みはノルト一人になる。
一方のドレッドとクインクトは白骨の所持品を調べて遺物になるものが特に何も無いことを確かめた後で、白骨を袋に詰めて地上に上げる。後で埋葬する予定だ。その後は白骨の有った場所をまず調べ、そこから順次瓦礫を後ろに送りながら床を調べてゆく。
途中で日が暮れても照明灯で照らしながら作業を進める。見つかった遺物を全て回収しなければ、落ち着いて休めない。
ランプは魔法結晶を動力源にして光を発する器具のことで、大型のものを幾つか設置した。
そうする内、クインクトがノルトとサーシャが転落した場所に在るテーブルの残骸に挟まれた紙切れを見つけた。
「ノルト! ちょっと来てくれ!」
「どうしました?」
呼び声に応えてクインクトの傍まで足を運ぶノルト。そのノルトにクインクトが紙切れを指し示す。
「これを見てくれ」
「これは……」
残骸と言っても一部は原形を留めていて、紙はその原形を留めている部分に挟まれている。下手に動かすと破れかねない。ただでさえ、ノルトとサーシャが落ちたせいだろう破れが見て取れる。クインクトはそれを証明するために先にノルトを呼んだのだ。先に回収して破れたものをノルトに見せたら後がめんどくさいのを知っている程度には二人の付き合いは長い。
「……地図のようですね」
全体像が見えないのでどこの地図かまではまだ判らないが、地図であることは判る。不敵な笑みを浮かべるクインクトを恨めしげに見ながら、ノルトは慎重にテーブルの残骸を取り除いてゆく。先に見せられたら文句も言えないのだ。
「隠し引き出しか二重底の引き出しだったようですね」
地図に噛んでいる部分が有ったが、引き出しだからと引き出しては地図が破れてしまう。クインクトの手を借りつつノルトは引き出しを慎重に壊す。
そして多くの時間を引き替えにして、一枚の地図がノルトの手に収まった。
地図を検分するノルト。みるみるその目が見開かれる。
「凄い! これは大発見ですよ!」
ノルトは地図に驚いたのだろうが、皆はそのノルトの叫び声に驚いた。サーシャが地上から口に手を添えて大きな声で尋ねる。
「何が見つかったのですか!?」
「ログリア帝国の地図です! 大崩壊前の魔の森の地図ですよ!」
ログリア帝国が在った土地の殆どが、今は魔の森に呑み込まれている。魔の森は危険も多く、遺跡の調査も進んでいないのだ。しかしこの地図が有れば都市の位置が判る。無為に探し回ることが無いのであれば、魔の森への調査隊の派遣もし易くなるのだ。
ところがサーシャはピンと来ない様子。
「地図が大発見なのですか?」
「地図は軍事機密になりますから、一般には出回らないものなんですよ」
「そうなのですか?」
サーシャがドレッドに確認すると、ドレッドは頷いた。
「その通りです。我が国の詳細な地図が敵国に渡れば、侵略の糸口を見つけられてしまいます。そのため、我が国の詳細な地図は厳重に管理されて複製も禁止されております」
「そうなのですね……」
「この家の持ち主がどうやってこの地図を手に入れたかは判りませんが、ブグートやラインクに見つからないようにここに隠していたのでしょう。でもそのお陰で、ログリア帝国の調査が進みますよ!」
今までログリア帝国についてはラインク王国の遺跡から見つかった伝聞程度の情報が有るのみだったが、魔の森に在るだろうログリア帝国の遺跡を調査することでログリア帝国について、そして魔王についての調査が進む見込みなのである。




