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第三話

「終わった……留年するかもしれない……」


 テストの終わりを告げるチャイムの音とともに机に突っ伏す修斗。

 あいつテスト勉強ちゃんとやらなかったな。今回のテストは思っていたよりも難しく、きちんと対策しなかった人にとっては厳しい現実を突きつけられるものとなるだろう。

 実際、周囲からも似たような声が聞こえるし。


「明日は試験休みだけどテストできなかったやつはきちんと復習しておけよ。次のテストでも出てくるかもしれないからな。それじゃあ解散」


 回答用紙の枚数を数え終わったようで、解散となったのでまだ顔を上げない修斗の元へ向かう。


「昼ごはん食べに行こう」

「慰めの言葉くらいかけてくれよ」

「ドンマイ、未来の後輩くん」

「ちくしょおおおぉぉ!俺は飯食べないで帰る!!!」


 突然立ち上がって叫びながら出て行ってしまった。仕方ない、昼ごはんは1人で食べるか。どこに食べに行こうかな。


「あ、柊くんだ」


 教室を出たら白峰さんとばったり会った。


「こんにちは、白峰さん、テストお疲れ様」

「こんにちは、柊くんもお疲れ様。先輩に聞いてた感じよりも難しかったわね」

「そうだね、俺も結構簡単だよって聞いてたんだけど、あの感じだとあんまり期待できないや……」

「私もそこまで一生懸命テスト勉強しなかったから今回はダメそう」


 それぞれ靴を履き替え学校を出る。


「柊くんはこの後どうするの?」

「昼ごはん食べてから帰ろうかなって思ってたけど……一緒にご飯食べに行く?」

「そうしようかしら。どこかおすすめのお店はある?私あまり外食はしないの」

「おすすめかぁ……」


 必死に美味しい店を思い出す……ラーメン屋と焼肉屋しか思い浮かばない!なんで俺はおしゃれなイタリアンとかに行かなかったんだ!!


「いろいろ種類もあるしファミレスに行こうか、近いし」

「それじゃあそこに行きましょう」


 次の機会までにしっかりおしゃれなイタリアンを探しておこう。次があるとも思えないけど。


「柊くんはテスト勉強ちゃんとしてたのね」

「いやいや、あんまりテストできなかったしちゃんとって程ではないよ」

「私のクラスの男子は大体青い顔してやばいって言ってたわよ」

「あぁ……まあ、あそこまでなるほどやって無かったわけではないかな」


 脳裏に修斗の姿が浮かぶ。やってなかった人は大体あんな感じなんだろう。


「ちょっとサボったからあんまり人のことは言えないけれど、ああなるほど勉強しないってのはアホよね。端的に言って」

「あはは、まあ遊びたい盛りだしね」

「授業を真面目に聞いて、家に帰ってから1、2時間復習するだけで避けられるのになんでやらないのかしら」


 心底不思議そうに呟く白峰さん。


「白峰さんは時間の使い方がうまいんだね」

「時間の使い方?」

「1、2時間なんて別になんてことないだろうけどダラダラ過ごしちゃうと意外と時間がないもんだからね。大体の男子はめんどくさくて勉強後回しにしたら、もう寝る時間って感じなんだよ」

「なるほど、よく知ってるわね」

「友達がちょっとね」


 修斗だってちょっとでも復習をしていればああならなかったはずなのに。まあそのおかげでこうして可愛い女の子とご飯なんていう素敵イベントが舞い降りてきたわけだが。

 そんなことを考えていたら目的地に着いた。


「ここだよ」

「こんなところにあったのね」

「友達とよくご飯食べるからこういうところはちょこちょこ知ってるんだよね」

「そうなんだ」


 テスト終わりだけあってうちの生徒が結構席を埋めていた。うちの高校御用達って感じだ。席数は結構ある店なので、待たずに2人席に座る。


「待たないで座れてよかったね」

「1年生はテスト終わりが他の学年より早いのが功を奏したわね」

「来年からはもっとテスト時間伸びるのか……面倒だなぁ」


 テストはなんだかんだ緊張するし普段の授業よりも長く座っていないと行けないから苦痛だ。


「まあ仕方ないわよ、内容も難しくなるわけだし」

「それはわかるんだけどね、頭でわかっても心はわかりたくないんだよ」

「わかりたくなくても来年はそうなる運命なんだから諦めるしかないわね」

「今の短さを噛み締めて生きていくしかないね。ところで何食べようか」


 メニューを差し出す。自分は大体目星がついているし後回しでいいだろう。


「ありがとう。何にしようかしら、たくさんあるのね」

「まあそれが売りの店だからね」

「うん、決まった。パスタにするわ」

「了解。俺はハンバーグにするよ、それじゃあ店員呼ぶね」



           ☆



「今日はありがとう。機会があればまた行きましょう、それじゃあ私はあっちだから。」

「こちらこそ楽しかったよ、ありがとう。またね」


 食事が終わった後、少しおしゃべりをして途中まで一緒に帰ってから別れる。方向的に多分駅に向かうのだろう。俺の家は学校の近くなのでこのまま少し歩けばすぐだ。

 振り返って歩いている白峰さんを見る。今日は楽しかった、修斗に感謝だ。そのまま突っ立っていると白峰さんもこちらを振り返った。手を振ってくれたので振り返す。あまり見ているのもあれなのでいい加減家に向かって歩く。今日はテストがあったけどなかなか楽しい1日だった。


「そーちゃんだ!おーい!」


 家に向かって歩いていると後ろから声がかかる。振り向くと見知った顔が走ってきていた。


「そーちゃん、テストお疲れ様。どうだった?簡単だったでしょう?」

「瑠花姉もお疲れ様。こんな時間までテストだったの?こっちのテストは聞いてたよりも難しくて焦ったよ」

「いんや、ちょっと生徒会の仕事があってね。難しかったの?おかしいなぁ、私の時は最初のテストはかなり抑えめって感じだったのに」

「おかげで修斗が絶望してたよ」

「あーあ、ちゃんと勉強しないから。今度会ったらみっちり教えてあげなきゃだね!」

「優しくしてあげてね」


 これは修斗が悲鳴をあげそうだ。


「これも優しさだよ!ちゃんとやらないと後できつくなっちゃうんだから」

「最初のテスト抑えめって言ってたけど最近のは難しいってこと?」

「そう!そうなの!2年に上がってから難易度上がっちゃってさ。おかげでテスト勉強が辛いよ」

「俺らの時はどうなるんだろう……せめて現状維持がいいな」

「まあそーちゃんが難しかったっていうならそれ以上になることはきっとないんじゃないかな……多分」

「それを祈るよ」


 というかなってくれないと困る。主に修斗が。


「まあなるようになるよ。そーちゃんはこんな時間まで何してたの?テスト終わるの早いよね確か」

「ちょっと友達とご飯にね」

「そうなのね。しゅーちゃんは一緒じゃなかったの?」

「テストできなさすぎて泣きながら帰ったよ」

「明日1日使ってテスト直しさせないとだね!」

「まあやらせないと次もまずそうだよね」

「それじゃあ今からしゅーちゃんのとこ行って明日のこと伝えに行こう」

「わかったよ。ありがとうね、瑠花姉」


 この人のお節介にはいつも助けられる。


「いいんだよ。わたしは2人のお姉ちゃんだからね」

「助かるよ。それじゃあ行こうか」

「ところでご飯に行った友達ってさっきの女の子?」

「ゲホッゲホッ、見てたの!?」

「バッチリね!」


サムズアップしながらウィンクをかましてくる瑠花姉


「まあそうだけど……」

「彼女?彼女?友達って言ってたから違うのかな。好きなの?」

「違う違う!彼女でもないし別に好きってわけでもないよ!!」

「え〜、あの子白峰さんでしょ?可愛いじゃない」

「なんで知ってるんだよ……ってこの間話したことあるって言ってたな」

「ちょっと生徒会の事でね。ふーん、私と話したことあるっての聞いたんだ」

「たまたまね、たまたま話した内容がそんなことだったの」

「たまたま私のことをねぇ」


 ダメだ、このままだと墓穴を掘り続けてしまう。


「この話終わり!俺と白峰さんはただの友達!終了!」

「まあいいや、また今度詳しく聞くね」


 今度がやってきませんように!


「まあまあ、もう修斗の家着くよ!早く行こう!」


 ちょうどあいつの家が近づいてきたので走って向かう。


「もう。女の子を置いて走って行くなんて……白峰さんに嫌われちゃうぞ」

「その話はいいから!」


 家に着いたのでインターホンを押す。


「はーい」

「柊です。修斗はいますか?」

「颯太くんじゃない。久しぶりね、あの子ならいるわよ。上がって上がって」

「ありがとうございます。お邪魔します」

「お母さん、お邪魔しまーす」

「瑠花ちゃんじゃない。いつもありがとうね、あの子なら部屋にいるから、ビシバシしごいてやってちょうだい」


 修斗の部屋に入ると修斗はゲームをしていた。


「おう、颯太。もうすぐ終わるからちょっと待っててくれ、そのあと一緒にやろう」

「お前何やってるんだ!早くゲーム消せ!」

「なんでそんな焦ってるんだ……よ……」

「しゅーちゃんテストお疲れ様、その様子だとかなりできたみたいだね」

「げっ!瑠花姉」

「げって何よげって。そーちゃん曰く全然テストできなかったそうじゃない。落ち込んで帰ってったのになんでゲームしてるの?」

「いや……これはちょっとした息抜きってやつなんだ……」

「じゃあ丁度いいから息抜き終わりね。お姉ちゃんと一緒にテスト直ししようか」


 笑顔で修斗に迫る瑠花姉。修斗の自業自得だから何も言わないが普通に怖い。


「そーちゃんもついでにやるよ。問題用紙出して」

「えっ、明日やるんじゃ……」

「明日もやるよ。今日はちょっとだけ、ね?」

「はい……」


 修斗のせいで俺まで巻き添えを食らってしまった。


「ほら、早く始めるよ。そーちゃんは後半がちょいちょいって感じだね」

「前半はまあ多分大丈夫だよ」

「しゅーちゃんは……基礎からだね」

「はい!すみません!!」

「まあ過ぎたことは仕方ないから、ちゃんと復習して次のテストは頑張ろうね」


 その日は夜までみっちり復習することになってしまった。教えてもらえるのは大変ありがたいのだけどちょっと休みたい……。


「思ってたより早く終わったね。しゅーちゃんは理解力はあるんだからちゃんと勉強しなよ」

「はい!すみません!!」

「大体終わったから明日は無しでいいや、お疲れ様。次のテストは事前に私とみっちり勉強しようね」

「はい!……って、事前に?」

「そう、事前に。次のテストで挽回しないとでしょ」

「そんな……あんまりだ……」

「ちゃんと復習して大丈夫そうだったらやらないから。普段から頑張るんだよ」

「そうだぞ修斗、復習は大切なんだ」


 復習は大切だ。うん。


「そーちゃんもありがとね、付き合ってくれて」

「いや、俺の方が助かったよ。1人で直しするよりも分かりやすいし」

「それなら良かったよ。それじゃあ帰ろっか、じゃあね、しゅーちゃん」

「そうしようか。修斗、ちゃんと復習しろよ。またな」


 荷物を手早く片付けて家を出る。


「お邪魔しました」

「お邪魔しました、またねお母さん」

「いつでも遠慮せず来てね」

「はい!」


 そのまま瑠花姉と2人で家に向かう。向かうといっても2人ともすぐそばなので特に何を話すでもなくついてしまう。


「じゃあまたねそーちゃん」

「ああ、また」

「今度白峰さんのこと聞かせてね!」

「……だから別に何もないって!」

「お姉ちゃんの勘が何かあるって囁いてるんだよ」

「ほんと何もないから!じゃあね!」


 逃げるようにして家に帰る。明日は絶対テスト休みを満喫するんだ!勉強はお休み!!

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