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第二話

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした。颯太、これから外で遊ぶけどお前も行こうぜ」

「いや、俺は遠慮しておく。食休みが欲しいんだ」

「食休みって高校生らしくねえな、それじゃ、また今度な」

「そんなに笑うなよ……またな」


 外に行く準備を始めた修斗を尻目に俺は中庭に行こうと教室を出た。


「さすがにもう補充されたか」


 あれから数日後、しっかりと補充された自動販売機からコーヒーを買った俺は中庭においてある椅子に向かう。するとそこには先日の女の子が座っていた。

 

「この間はありがとうございました」

「いや、気にしないでいいよ。こちらこそ貰ってくれてありがとう」

「本当にカフェオレよりブラックの方が飲みたかったんですね」


 俺の手元を見ながら意外そうな顔をする。


「まあね、隣いいかな」

「ごめんなさい立たせたままで。もちろん、いいですよ」

「えっと……名前を聞いてもいいかな」

「白峰です。白峰美雪」

「白峰さんね。俺は柊颯太、よろしく」

「はい、よろしくお願いします」


 花が咲いたような笑顔を浮かべる白峰さん。


「同じ一年生だし敬語は無しでいいよ」

「わかりました。じゃなくて……わかったわ、これからよろしく」

「敬語だとなんだかむず痒いからありがたいよ」

「同い年の子から敬語だと確かに違和感があるものね」

「そうそう」

「敬語っていうと生徒会長さんは2年生なのに1年生にも敬語よね」

「あー、あの人は確かにそうだね。上級生に敬語使われると困るよね」

「私この間たまたま話す機会があってびっくりしたわよ、先輩なのに敬語だから」

「いきなりだとびっくりするよね」

「そうなのよ」

「そういえばもうすぐテストだね……」


それから色々な話をし、予鈴が鳴ったので教室に戻る。


「それじゃあ俺は向こうだから、またね」

「ええ、また今度」


 普段のように昼休みに1人でのんびりしていることも好きだが、ああして話すのもとても楽しかった。


「颯太なんか嬉しそうな顔してるな、いいことあったのか?」

「まあちょっとね」

「ふーん」

「なんだよニヤニヤしやがって」

「なんでもない、授業始まるぞ」


 修斗がニヤニヤ顔のまま自分の席に急いで戻って行く。なんだかムカつくが授業が味丸のは事実なので自分も渋々席に着く。



           ☆



「やっと授業終わったな、帰りどっか寄っていこうぜ」

 

 最後の授業が終わり先生が退室してすぐに前から声がかかってくる。


「今日は予定もないしいいよ、いこう」

「颯太は予定があるほうが稀だろ、金ある?せっかくだから夕飯も食べよう」


 失礼な奴だ、自分だってめったに予定なんてなくていつも俺を誘ってくるくせに。


「それはお前も同じことだろう修斗。お金は大丈夫、全然余裕」

「今日は……カラオケはこの間行ったしゲーセンでも行くか、そのあと近くのファミレスにしよう。行こうぜ」


 言うや否や机にかけてあるかばんを手に取り教室を出ていく修斗、いつものことながら行動が早い奴だ。

 俺も手早く先ほどの授業で使った用具を鞄に詰め込み修斗を追いかけて教室を出る、この学校に帰りの会のようなものは存在しないのだ。朝はあるが。


「ちょっと待てって、なんでお前そんな出るの早いんだよ。授業中ちゃんと教科書とか出してるのか?」

「授業終わりそうになったら片付け始めるんだよ、そのほうが早いし効率いいじゃん」

「最後まで真面目に授業受けろよ……」


 そんなこんなで適当に会話しながら近くにあるゲームセンターに寄ってホッケーやレースゲームなど二人で遊び、そのまま話した通り近くのファミレスに入る。ファミレスは幸い待つことなく入れはしたが席はほとんど埋まってるようだ。俺たち以外にも結構な数の生徒が遊んでいたらしく、店内には同じ制服を着た人たちがそれなりの数居た。

 

「結構混んでるな、まあご飯時だしこんなもんか」

「まあ座れたしいいでしょ、さっさと頼んじゃおう、何にする?」

「俺ピザが食べたい、マルゲリータピザ」


 各々メニューに目を通す、目を通すと言ってもここのレストランにはよく来るし頼むものも決まっているのでほとんどポーズだ。と思ったが、新メニューの玉ねぎのスープが美味しそうだったのでそれを頼むことにする。


「決まった?俺はスープと……あとパンにする」

「俺はハンバーグとドリアかな、あと2人でピザ分けよう」

「おっけー、じゃあ頼むよ。……すみませーん!」


水を取ってきたり手を洗いに行ったりで数分たった頃料理が届く。


「ここの料理安いのはいいけど量少ないから結局満腹になろうと思うとそこまで安いわけでもないよな」

「今回はスープにパンを浸して食べるというすごく腹持ち良さそうなコンボがあるから俺は多分満足する」

「その手があったか……いや、俺もこのハンバーグを念じて増やせるから行ける!」

「念じて増やせるってお前それ最高かよ」


 念じて増えたらどこの店も商売あがったりだろう。


「テスト来週だっけ?俺なんも勉強してないしスタートから落ちこぼれそうだ……」

「ちゃんと復習してればそこまで苦にもならないだろ、瑠花姉も一年の間はそんなにテスト難しくないって言ってたから」

「俺は毎日復習するような勤勉さは持ち合わせてないんだよ、頼む颯太、テスト勉強付き合ってくれ」

「中学の時から進展しねえなお前、よくここ受かったな」

「あの時は人生で一番勉強させられたな、瑠花姉には二度と教わりたくねえ」


 縛り付けて勉強させられたんだろうな。こいつは全然勉強しないし。


「そういえば瑠花姉といえば今日のお昼に話してた子との話題に上がってさ」

「どんな会話をしてたんだ」

「敬語がどうこうって話。いきなり上がったからびっくりしたよ」

「まあ瑠花姉は生徒会長もやってるし学内でも有名だからな」

「なるほどねぇ」


 まあ可愛いし頭いいしでそりゃあ有名にもなるなあって感じではある。

 そんなことを思っていたら前にある顔がニヤニヤしだした。面倒臭そうだ。


「ところでお昼に話してた子ってのについて聞いてもいいか?」

「別になんでもないよ、ただ偶然知り合った子ってだけで」

「なーんだ、彼女でもできたのかと思ったわ」

「そんな簡単に彼女なんてできねーよ」

「だよなぁ……あー彼女欲しい」

「好きな子はいるの?」

「んー、いないかな」


 無節操なやつだ、好きな子もいないのに彼女も何もないだろうに。


「好きな子いないのに彼女欲しいっておかしいぞ」

「だいたいの男子高校生はそんな感じだと思うぜ。颯太は好きな人いるのか?」

「そんなもんなのかね。俺も好きな人は……いないね」

「なんだよその間は」


 一瞬白峰さんの姿が浮かんだが好きってことはないだろう。一目惚れじゃあるまいし。


「別になんでもないよ」

「そうか。まあ、お前にも好きな人くらいすぐできるさ」

「お前にもってお前もいないじゃねーかよ」

「まあな」


 ニヤリと笑う修斗。多少の贔屓目はあるかもしれないが、どう考えてもこいつはいわゆるイケメンの部類に入るので、作ろうと思えばすぐできると思うんだが。この大雑把さじゃダメか……


「それはともかくテストだテスト」


 話が逸れてしまった。なんとかこいつにテスト勉強をさせないと。


「忘れようとしてたのに……」

「今からやれば間に合うから」

「このままでもなるようになるだろ」

「なるようになるってのは、しっかりやった人が使っていい言葉なんだよ」

「はぁ……答えが降ってこねえかな」

「頭の中に答えが降ってくるように勉強しような」

「颯太の家で勉強会しよう!」

「会っていうか一方的に俺が教えることになるけどな」


 俺がこいつに教わることなんてない。少なくとも勉強に関しては。


「なら誰か他に友達も呼んでさ」

「話にも上がったし瑠花姉を呼ぼうか、そしたら過去問とかも教えてくれるかもだし」

「やっぱこの話はなかったことにしよう。俺は1人で戦うぜ」

「本当にちゃんと勉強しないと留年しちゃうぞ」

「任せとけって」


 サムズアップをかましてくる修斗。心配だ。

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