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  作者: えりか
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それは麗らかな午後、我がランシェルン伯爵家が誇る庭園でお茶をしていた時でした。

きっかけは、お母様が「シェフが新作のデザートを作ったらしいの。お父様にお出しする前に試食させてもらいましょう」と言ったから。


余談だけれど、強面なお父様は甘いものが大好きです。でも、これは我が伯爵家の秘密の1つ。舐められないように、と社交のときは甘いものを我慢しているお父様は、シェフに次々と甘いものを作らせ、日々堪能しているのです。

お父様にお出しする前に、お母様と私とでいただくのも恒例です。

黄色いぷるぷるしたものに少し苦味のあるカラメル、そしてふんだんに盛られた果物とホイップクリーム、これを口にした瞬間、稲妻がはしりました。


いえ、天気はよかったのです。実際に走ったわけではなくて。

とにかく!私の中でそういった感覚だったのです!


(このお味、知ってますわ、ぷ、ぷり...!ぷりーあらもーどですわ!)


と。

これでも伯爵令嬢ですから、口には出しませんでした。口に出していたら侍女や同席していたお母様が驚きますから。


ただ、そのぷりーあらもーどを思い出したときから、膨大な記憶が溢れ出し、処理できなくなった私の小さな頭は、一旦の睡眠を要求しました。


気絶です。


それから、高熱を出して寝込むこと3日。思い出した記憶が前世のものだとわかりました。


ぷりーあらもーどは、正確にはプリンアラモードでした。前世の私の大好物。趣味は乙女ゲーで、今期イチオシ作品をコンプリートした私は、ご褒美のプリンアラモードを買いに自転車にまたがり、家を出たところまで思い出しました。御年24歳。彼氏いない歴24年。彼氏はいつも画面の中...が、私の持ちネタでした!

不思議と家族のことや日常の思い出などは思い出さず、その乙女ゲーに絡んだことしか思いだせませんでした。プリンアラモードも乙女ゲーコンプリートのご褒美ということで、思い出したんだと思います。

これらの記憶はあくまで知識として、私の中に収まりました。


この記憶で、私は重大な事実を知ったのです!

ここが新作乙女ゲー「不機嫌な仮面の下で」の世界で、私は攻略対象者のサンスペクター侯爵家長男アルフォンス様の婚約者にして悪役令嬢アリソン=ランシェルンであるということを!


この乙女ゲーは、無表情だったり、無口だったり、いつもぶすくれていたりと、とっつきにくい人ばかりが攻略対象者でした。でも、だからこそ心を開いてくれた時の胸キュン度が高いゆえにコアなファンから発売前から注目を浴びていたのです。かくいう私もそのひとり。

アルフォンス様は、いつも厳しい表情で寡黙な方でした。王立学園に通う17歳には見えない渋面に私はキュンキュンしていました!


アルフォンス様のお父様と私のお父様は王立学園時代からの親友です。その縁から私たちが婚約したのは、うんと小さな頃でした。

その頃から表情筋が固まっているかのような無表情でしたが、それは現サンスペクター侯爵であるお父様譲りのものです。

先日サンスペクター邸にお伺いしたときは、2人で庭のすみっこに咲いていた黄色の小さな花を眺めて過ごしました。寡黙でほとんど会話はありませんでしたが、「あなたの髪の色と同じで綺麗だ」と言ってくださいました。私が庭で転びかけてからは、いつも手を繋いで案内してくださいます。

口数は少なくても、ゆったり穏やかな空気が心地よく、私はアルフォンス様が大好きなのです。


でも、このままだといずれヒロイン氏によって奪われるかもしれない、ということなのでしょうか....


いいえ、このアリソン=ランシェルン、必ずやアルフォンス様のお心をがっちりとつかみ、そして離さないことをここに誓いますわ!


ベッドに横たわり、静かに右拳をかかげて誓うアリソン 6歳、春の出来事だった。



悪役令嬢転生ものが大好きなので、書きたくなって書いたら撃沈しました。

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