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「いや、違うぞ。こっちのは完成度は4だ。5のやつはアタック上昇のバフがつくからもったいなくてな」
「そうか。リクが作っているときに少し料理スキルについて調べてみたんだが、完成度を平均化するとおよそ2.5になるらしい。まあ、よくても4までしか作られていないってことだ」
「そうなのか?」
「ああ」
「へぇ」
俺は完成度が5のものが珍しいのは理解したが、興味がなかったので、ハーブティーをのみながら聞き流した。
「はぁ。まあ、いつもそうだから大体予想はついていたが、やっぱり他人のことには興味が薄いな」
「まあな。疲れたときには特に気にしたくないんだ」
「なんだ。何かあったのか?」
「ああ、インする前にちょっとな」
「そうか。・・ん?」
アクタはウィンドウを操作するような素振りを見せた。そして、操作を終えると、ニヤリと笑ってこちらに顔を向けた。
「疲れる原因って、これのことか?」
アクタはそういいながら、ウィンドウを俺に見せてきた。
そこには、さっき撮影した俺のドレス姿の女装写真が写っていた。
「あ! アクタ! なんてもの持ってやがる! 早く消せ!」
俺はアクタにそう言いながらつかみかかろうとしたが、アクタは笑いながらひらりとかわしてしまう。
「ステータスの差が戦力の決定的な差ではないことを教えてやる!」
「それはどうかな」
俺はそういうと、
「“我に速度の加護を与えよ”[付加Speed]」
自分に速度のエンチャントをかけた。
状態異常にさせることができるものがあればよかったのだが、あいにくまだ作れていないので、仕方ない。
「絶対に捕まえて、あの写真を消させてやる!」
「ちょっと待て! エンチャントは卑怯だろ!」
「知るか!」
称号とエンチャントの併用で通常の210%位のSpeedとなった俺は、アクタにすぐに追い付くと、足払いをかけた。
「うわっ!」
それにより転んだアクタの上をとり、無詠唱でファイヤーボールをアクタの前に作り出した。
「おい、さっさとあの写真を消しやがれ」
「り、理巧斗? 冗談だよな? 家に当たったら、燃えるらしいぞ?」
「リアルの名前は出したらいけないんじゃなかったのか? それと、ここが燃えようと知ったことじゃない。仮に燃えてなくなったら、俺が建て直すから安心しろ」
俺はそう言いながら、アクタの鼻先にファイヤーボールを移動させた。
「あれ? リク? なにやってるの?」
後ろからフェルネの声がした。口調から考えると、フェルネに戻っているようだ。
「アクタをちょっとこらしめようとしているんだよ。フェルネは危ないからそこにあるポテトチップスでも食べてろよ」
「わかった~。リクがアクタのマウントポジションをとってるから、何事かと思ったよ」
フェルネはそう言って、離れていった。
「お、おい、端から見ると、かなり危ない状況なんじゃないのか?」
アクタは俺が恥ずかしいと思い解放することを望んでいるのだろうが、当然俺は気にしない。
「アクタが写真を消すまで絶対に解放しないからな?」
俺はアクタに笑顔でそう言った。
こんにちはyoshikeiです。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
早速、伏線を回収させてもらいました。
リクがアクタの上にのっているのを、なにも考えずに見ると、かなり危ないような気がしますよねwww
今後ともよろしくお願い致します。
次回の更新は明日の午前9時です。