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ということで、俺はドレスを着ていた。
「うぅ。もうお嫁にいけない・・・」
ドレスを着た自分を見た瞬間、俺はがっくりとうなだれた。
なんで地味に可愛いんだよ・・・
ウィッグをかぶり、メイクをされた俺は、男のはずなのに自分で見てそう思ってしまうほど可愛かった。
「まあまあ、大丈夫。理巧斗君がそういうなら、私がもらってあげるよ?」
長谷川さんがしゃがんで、そう言ってくれる。
「そうよ。歩美がいらないなら、私がもらっても良いし」
「てか、お前本当に男なのかよ」
近藤兄弟(優衣さんと祐哉)がそう言ってくる。
わーい。モテモテだー
頭のなかで、そんな台詞が出てきた。おかしい。そういうわけではないはずだ。
一応、状況を文章化してみよう、と思い、考えてみる。
女子に囲まれて告白のような言葉を言われている(冗談だとは思うが・・・)
状況だけを文章にして考えると、確かにそうだろう。だが、この一文のなかには重要なことが書かれていない。正しくはきっと、こう書くのだろう。
女子に女装した格好で囲まれて、告白のような言葉を言われている。
あくまでも、俺は女装をしているのだ。その状況で告白されても全く嬉しくない。
なんで、撮影なら良い。なんて軽々しくいってしまったんだ・・・
俺がそんな後悔をしている途中に
「ほら、まだまだ撮りたいものがあるんだから、早くしないと」
長谷川さんに立たされて、撮影スタジオの中へと連れていかれるのだった。
「お、やっと来たか。遅かったな。もう準備はすんでるぞ」
快斗さんはそう言いながらこっちを見た。
「ん? 理巧斗君はどこだ? まさか、まだ来ていないのかい?」
快斗さんがそういうと、俺は長谷川さんに前へと押し出された。
「笑顔で挨拶してみなさい」
前に出た時、長谷川さんに耳元でそう言われた。
俺は諦めて長谷川さんの言う通り、笑顔で挨拶をすることにした。
「こんにちは!」
なんとか笑顔にはできたと思う。
そんな俺の顔をみた快斗さんは、
「ん? 新しい参加者かい?」
そんな反応をした。
あれ? 俺の他に誰かいるのか?
そう思った俺は、周りをみたが、新しく来た人はいない。
まさか、俺のことか?
もう一度、快斗さんを見ると、俺の方に顔を向けていた。
よし、少し面白いことをやってみよう
「はい。はじめまして。私は佐藤 愛莉です。歩美ちゃんに呼ばれたんですけど、その時は用事で、さっき電話をしたらまだ大丈夫ってことだったので、来ちゃいました」
俺がそういうと、後ろにいる人たちは笑いをこらえるように後ろを向いたり、手を口元に持ってきたりしていた。
「そうか。いやぁ、それにしても可愛いね」
「ブッ!」
あ、誰かが吹き出した。
こんにちはyoshikeiです。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
今回やっと理巧斗君が女装をしました! いやぁ、長かった。本当に長かった。
ということで、もう少し女装編(あれ? いつのまにか章とは全く関係なくなっている?)は続きます。
今後ともよろしくお願い致します。
次回の更新は6月18日午前9時です。