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なんとかなった・・・
「はい。メイクの直しも終わったわ。素材が良いからなのか、これは、すごいわね」
「はぁ」
俺は菜月さんの言っていることがよくわからなかったが、メイクが終わったと言うので目を開けてみた。するとそこには、
「誰だこれ」
女の子がいた。メイクを直す前は鏡だったはずだが、いつのまにか違うものになっていたのだろうか。
「はーい。じゃあ、選んだ服はここにおいてね~」
菜月さんの声が後ろから聞こえてきた。そして、さらにその後ろから、長谷川さんや近藤さんなどの一緒にいた人たちの声も聞こえてくる。
わいわいと喋りながら手に持っていた服を机の上に次々とおいていく。
数えてはいないが、10着くらいはあると思う。
「じゃあ、撮影をはじめましょうか」
菜月さんは全員が服を机の上におき終わると、そう言った。
撮影? さっきのがメインじゃないとしても、どうしてここには女物の服ばかりなんだ?
そう思った俺は、詳細を聞くことにした。
「長谷川さん、なにをしようとしているんだ?」
「ん? 撮影会よ?」
「どんな?」
「あなたの・・・撮影会」
さっきの間はなんだったのだろう。絶対に何かある。
「本当に撮影するだけ?」
「まあ、ちょっと特殊な身なりにはなってもらうけどね」
さて、状況を整理しよう。
まず、机の上に女物の服がたくさん置いてある。
つぎに、長谷川さんは特殊な格好をする撮影会だと言った。
最後に、信じたくはないが、鏡がはずされているとは思えないため、俺の顔はかなり女っぽくなっている。
以上のことから導き出される、特殊な格好をした撮影会とは、
まさか、俺に女装をさせる気か!
そう気がつくと、俺は逃げようとした。だが、あいにく出入り口は女子が多く、すぐに捕まってしまう。
「まあまあ、減るようなものじゃないんだから」
「減るよ! 主に俺の精神が!」
「まあまあ、そんなこと言わずにさぁ」
「いやだ! 離せ!」
俺は逃げ出すためジタバタと暴れるが、女子に数人がかりで押さえられていて、逃げ出せない。
そこに、長谷川さんが歩いてきて
「理巧斗君、男に二言はないって聞いたけど、ほんと?」
そう話しかけてきた。
「まあな」
「へぇ。じゃあ、この店の前で撮影なら良いと言ったのは嘘だったのかしら?」
長谷川さんがそう聞いてきた。
「あー! わかったよ! やるよ! やれば良いんだろ! わかったよ!」
俺はやけになってそう言った。
あれ? よく考えたら、さっきも撮影したんだから、逃げられたじゃないか。
冷静になってからそう気づいた。
そして、ドレスなどを女子に手伝ってもらいながら、着はじめるのだった。
こんにちはyoshikeiです。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。
次回の更新は6月18日午前9時です。