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「はぁ、はぁ、はぁ。お前ら早すぎ」
アクタが追い付くと、息を切らしながらそう言った。
「いや、俺たちからしたらお前の方が遅いぞ。まだまだ余裕があったし」
「りく、それは追い討ちしすぎだと思うけど・・・。まあ、確かに遅かったとは思うけどさ」
フェルネの一言で、アクタが地面に倒れ込んだ。
さすがにやり過ぎたか・・・
「あー、アクタ、追い討ちかけたのは、すまん。ほら、すぐそこが門なんだ早く行こうぜ」
俺はアクタの肩に手をおきながら、そう言った。
すると、アクタが立ち上がり少し落ち込んだ声で話始めた。
「おう、そうだな。次の町についたんだ。他の人に先を越されたくはないしな」
「そうだ、そうだ。だから早く行こうぜ」
「ああ」
俺はなかなか歩き出さないアクタの背中を押しながら、門に向かって歩いていった。
ちなみに、俺のステータスだと、これくらいは簡単に出来る。片手で持ち上げたり、抱えたりする方が早いが、そこまでするとアクタがかわいそうだったので押すことになった。
「こんにちは、冒険者のかたですね? クアドルへようこそ。初めてこの街にこられたので、特殊装備を差し上げます。この中からお選びください」
俺たちは、門番にそう言われて全15種類のアクセサリーを見せられた。ブレスレットや指輪、ペンダント、イヤリング、ピアス等があり、見た目も様々だった。
「あの、フェルネの分ってもらえるんですか?」
俺は門番に聞いた。
すると、意外な答えが返ってきた。
「ああ、あなたは従魔ですね。でしたら、テイマーの方がこちらの中から1つ追加でお選びください」
なんと、さらに5種類のアイテムが出てきた。そして、俺が選べるアクセサリーの中に1つ追加されていた。
「なら、このアイテム共有の指輪とボックスの指輪をください」
「わかりました。こちらでよろしいですね」
「はい。ありがとうございました」
俺は自分の分で新しく表示されたアイテム共有の指輪を、フェルネの分でボックスの指輪をもらった。
アクタはレベリング(腕)をもらっていた。見せてもらうと、装飾の少ない銀色の腕輪だった。
「それでは、皆様のこれからの旅に幸多からんことをお祈りしています」
門番はそう言って部屋に戻っていった。
俺たちは街の中に入った。
「ふぅ。ここの街も一番で入れたな」
「そうだな。そこまで急ぐ必要なんてなかったはずなのに、どうしてこうなったのか不思議だがな」
俺はアクタに皮肉を込めていった。
「で、リクはここからカルドに戻るのか?」
「まあそうだな。まだ用事も残ってるし」
「わかった。じゃあ、」
アクタはウィンドウを操作し始めた。こちらからは見えないため、何をしているのだろうと思って待っていると、作業が終わったのか顔を上げた。
「よし。お前も俺の家に自由に出入り出来るようにしておいた。自由に使ってくれ。残念ながら、物は所有者の俺以外置けないが、寝泊まりする場所くらいは大丈夫だろ」
「おお、サンキュー。これで宿代が浮く」
「まあ、早くお前もホームを買えるようになるといいな」
「そうだな」
「じゃあ俺はこの街を見てから戻るわ」
「わかった」
俺が返事をすると、アクタは街の中へと歩き始めた。
アクタと別れると、俺はマップを開き街間転移台に向かった。
「りく、これから前の街に戻るの?」
フェルネがそう話しかけてきた。
「ああ、そうだな」
「転移台を使うんだよね?」
「たぶんそうだと思うぞ」
「じゃあ、わたしは戻ってるね」
「おう・・・ってちょっと待て、なんで戻るんだよ」
俺がそう言うと、フェルネは肩をビクッと震わせた。
こんにちはyoshikeiです。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。
次回の更新は5月29日午前9時です。