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「まず、なんでウチの名前を知っとるんや」
イコタはかなり怖い顔でそう言ってきた。
「まさかルコさんを脅したんやなかろうなぁ」
笑顔で言われたが、その笑顔がものすごく怖かった。
「そんなんじゃない。というか、ルコさんにイコタが何をしているのか知りたいって言われて、探しに来ただけだ」
「なんや。そう言うことか」
どうやら戦うことにはならないようだ。
「じゃあ、次、アンタはルコさんとどんな関係や」
「雑貨屋の店主と客、依頼主とその依頼を受けた冒険者、しがない調薬師とその薬の使用者って感じだろうな」
「ほー。どうやら嘘は言ってないようやな。なら、最後の質問や」
最後の質問と聞いて、俺はゴクリと喉をならした。
その場に緊張が走る。
「ルコさんの調子はどうなんや?薬の使用者っていってたが、どこか悪いんか?」
イコタの口から出てきたのはそんな質問だった。
一気に緊張がとけ、ホッと息をはいた。
「ルコさんの事か。そんなに心配なら、会いに行って自分で確認すればいいだろ?」
「ほんなこと出来るわけがなかろう。人の姿であったこともないというのに」
「ルコさんならすぐに気づいてくれそうだがな」
俺はそう言って笑った。
「わ、笑うな。ええい!それでどうなんや!さっさと教えんか!」
「わかったよ。ルコさんは普通に生活している。まあ、腰が悪いみたいで、なんとか生活できてるって言った方がいいかもしれないけどな。一応調薬が出来るから、腰痛に効く薬を渡しておいたが、効いているかどうかはわからない」
「そ、そうか・・・」
イコタはホッとしたようだった。
「なあ、狐の姿に戻って会いに行くことはできないのか?」
「いや、できんわけではないんや」
「というと?」
「街のなかにウチらが入れん。入る方法がないわけじゃないんやが・・・」
「その方法は?」
「ウチらのようなモンスターはテイムされてへんと、街んなかには入れんのや」
「だったら連れていくぞ?」
「いや、出来ることならつれていってもらいたいんやがな、それができん」
「特別な理由でも?」
「もうすでにウチはテイムされて捨てられたんや」
イコタは暗くなりながらもそう言った。
「だったら俺がテイムすればいいだけの話だろ?」
「それは無理や。なぜなら、一度テイムされたモンスターは他の者にテイムされることはできんからや」
「そうだったのか」
「だからウチが街のなかにいくことはできんのや」
俺たちは沈黙に包まれた。
俺は他に出来る方法を考えた。
1つは思い付いているが、出来るかどうかが怪しかった。
その策とはルコさん自身が街の外に出てもらうというものだった。
ただ、ルコさんは腰が悪く歩くことが大変だろう。その状態であの雑貨屋から東の門まで歩くのはかなりきついはずだ。車イスが作れれば別だが、現状ではこの案はできないだろう。
万策つきたか・・・
俺はそう思った。
こんにちはyoshikeiです。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。
次回の更新は5月12日午前9時です。