幼女とやくざ
本日、快晴。とは言えない天気に、霧原組の組長・霧原蓮次はため息を吐いた。気持ち悪い天気だ。
やくざの中でも霧原組は、穏健派だった。どちらかろいうと、一般市民を相手にするより、一般市民に手を出す若い連中を取り締まる側、秩序のような存在だった。
コンビニに寄っていた蓮次は組に帰ろうと、ちょうどいい温度のコンビニ内から足を踏み出す。相も変わらず気持ち悪い天気だった。
手をポケットに突っ込んでだらだらと歩いていると、路地にある階段の下に、ダンボールを見つけた。ダンボールには、くすんだ色の紙が貼っており、こう書かれている。
"拾ってください"
蓮次はまたため息を吐いた。嫌なもん見ちまったなあ。
方向転換して、ダンボールに近付く。犬だろうか、猫だろうか。大量にいたら無理だが、一匹や二匹なら連れて帰ってやるか。
ダンボールの前に着く。中に入っているものを見て、目を見張った。
小学生くらいの少女が一人。もちろんダンボールに入っていていいものではない。頭を抱える。どんな親だよ。
「おい」
蓮次が呼び掛けると、少女は無言で蓮次を見上げた。幼さの見当たらない、魂が抜けたような目だった。こりゃまともな教育は受けてねえな。
「お前、拾ってもらえる当てとかあんのかよ」
蓮次の言葉をゆっくり理解すると、少女はふるふると首を振った。会話は成立しないが、返事はある。
蓮次は本日何度目か分からないため息を吐くと、少女の両脇の下に手を差し入れ、無理やり立たせた。少女が蓮次を見つめる。
「あ?何だよ、俺が拾うんじゃ不満か?」
少女は今度はすぐに、首を振った。よし、と蓮次は頷くと、少女の手を掴んで歩き出した。少女が小走りになったのを見て、歩くスピードを落とす。
コンビニで煙草買ったら、もれなく少女がついてきた。
***
組の前まで来たところで、しまった、と蓮次は思った。
今は中に、雅人がいるはずだ。問題だ。大問題だ。何が?雅人の趣味が。
噂をすればなんとやら、中から雅人が出てきた。
「あれ、組長、おかえ…おぉぉ!?」
雅人は少女を見るなり、声を上げた。
「ちょっと組長!何スかその幼女は誘拐ッスか俺へのプレゼントッスか!?」
「うるせえ黙れロリコン」
そう、蓮次が危惧していたことは、雅人がロリコンであることだ。ロリータコンプレックス。蓮次は反射的に、少女を自分の後ろに隠した。
「あのな雅人。こいつはお前へのプレゼントじゃねえし、誘拐でもない。拾ったんだ」
「隠し子ッスか!?」
「聞けよ」
雅人を軽くいなしながら、組の中に入る。拾ってきたのは軽率だったか、と思うが、ちょこちょこ着いてくる少女を見て、首を振った。
突き当たりの部屋に入ってとりあえずソファに少女を座らせる。改めて見ると、服も何日も着替えていないのか、汚かった。よく見ると可愛らしい顔には、似合わない格好だった。
「お前、名前は?」
はしゃいでいる雅人を押さえ付けながら聞くと、少女は今日初めて、声を出した。
「…ひなもり、あいか」
「どんな字だ?」
「子どもに分かるわけないじゃないッスか、組長」
雅人に言われたのが癪だったが、それもそうか、と納得する。仕方がないので、ホワイトボードにペンを走らせた。
「ひな、もり…は、まぁこれだろ?」
ホワイトボードに"雛森"と書くと、少女はこくんと頷いた。次に、"あいか"を考える。
「あい、は、これか?」
"愛"、と書くと、少女はまたこくんと頷いた。さて、と、"か"で悩む。か、って結構あるよな。
「花?」
少女は首を振る。違う。
「これじゃないッスか?」
そう言った雅人が、"華"と書く。そんな難しい字がお前に書けたのか、と蓮次が感心すると、視界の端で少女が頷くのが見えた。
「雛森愛華、か。四字熟語みてえだな」
蓮次はそう呟くと、愛華に目を向けた。愛華も蓮次を見つめ返す。蓮次は口を開いた。
「とりあえず、良い引き取り手が見つかるまではうちで面倒見てやるよ。柄の悪ィ大人ばっかだけど大丈夫だよな」
「だいじょうぶ」
返事が返ってきたことに、密かに感動する。子どもを相手にするのは得意ではない蓮次だったが、愛華なら大丈夫そうだ、と。
「愛華ちゃんて言うんスかぁ~なかなかの美形!あぁぁもうこのまま成長しないでほs」
「黙れ雅人」
要注意だな、と、雅人をブラックリストに入れる。こんな奴がうちのナンバー3とは、信じがたい。というか、信じたくない。
数分すると、ぞろぞろと組員たちが戻ってきた。愛華について思い思いに発言したが、特に誰も追い出そうとはしなかった。
組長の隠し子ですか、と言った奴らをとりあえず締めて、落ち着いてから、そう言えば、と思って愛華に聞く。
「お前、いくつだ?」
学校とか通ってたら行かせないと面倒じゃねえのか、という考えから、聞く。愛華は少し考えるように間を開けると、口を開いた。
「も、すぐ、6歳。まだ、学校行ってない」
「あぁ、行ってねぇのか」
ならまぁいいか、と思うと同時に、蓮次は首を傾げた。まだ、学校行ってない。もうすぐ6歳。今は何月だ?三月だ。入学シーズンはいつだ?四月の初めだ。
「…おい」
「「はい?」」
部下の何人かが、首をこちらへ向ける。蓮次は息を吸って、早口で言った。
「今すぐ小学校入学に必要なもん全部集めてこいランドセルも教科書もだどんなルートでもいい手に入れろ‼」
「「は、はい‼」」
年の割りにやくざ生活が長い蓮次は、ランドセルは普通に売っているという一般常識が抜けているのには気付いていない。他の組員も、切羽詰まった蓮次の様子に一も二もなく頷いて外に出ていった。
残ったのは、蓮次と愛華と、愛華から離れたくない雅人だけだ。
出ていった組員と入れ替わるように入ってきたのは、霧原組のナンバー2である秀二だった。
「…えらい焦った様子であいつら出ていきましたけど、何が…って、何ですか、その娘」
霧原組では珍しく冷静沈着な秀二は、既に面倒事の匂いを嗅ぎ付けたのか、顔をしかめた。
「"拾ってください"ってダンボールにガキが入ってたら、拾うだろ、普通」
「組長の常識を普通だと考えないでくださいね。もしかしてあいつらは、小学校の入学準備でもしてるんですか?」
「よく分かったな」
蓮次がそう言うと、秀二はため息を吐いた。そして雅人に目をやると、「面倒だから手は出すなよ」と念を押す。
「出さねえって、まだ!」
もちろん、蓮次は雅人を殴った。
***
蓮次は、愛華を連れて街に出ていた。煙草を吸っていたが、愛華に「あるきたばこ、だめ」と言われ、そうか、と言って地面に煙草を押し付ける。
なぜ街に出ていたかというと、愛華の服を買うためだった。
小学校入学の道具は一通りは部下に集めさせたが、服は買っていなかったのだ。風呂には入らせたものの、こんな薄汚れた服だけでは、学校で目立ってしまう。ちなみに風呂は、雅人が入れたがっていたが、危険なので蓮次と秀二が交代で入れている。
子ども服が売っているところに入ると、店員から明らかに訝しげな目を向けられた。いちいち「誘拐ではありませんよ」と説明するのも面倒なので、無視する。
「愛華」
呼び掛けたら、まっすぐ見つめ返してくる。
「お前、どんな服がいいんだよ」
「…?」
愛華は、こて、と首を傾げながら、蓮次を見た。
ここ数日で、蓮次は確信したことがある。
どんな親かは知らないが、愛華の親は愛華にほとんど何も教えなかったようだ。言葉も覚束ないし、あれが欲しい、これが欲しいという子どもながらの欲も無い。子育ての経験がない蓮次は、非常に困った。
入学式用の制服のような服は、適当にサイズだけ見て買った。あとは普通の服だったが、どれが似合うかも分からないし、愛華の好みも分からない。
「これとか着てみるか?…あー、でかいか」
試行錯誤しながら、着せ替え人形よろしくあれこれ愛華に着させていった。こんなことなら、雅人を連れてくるべきだったか、と、蓮次は思い、いや、と首を振る。店を出禁になりかねない。
子どもの服について眉間に皺を寄せながら考える柄の悪い大人を、周りの人が苦笑いしながら通り過ぎることを、蓮次は気付いていない。
「愛華、何か好きな色とかねえのかよ」
「…みずいろ、好き」
水色か!と蓮次は声を上げそうになるのを堪えた。そうだ、好きな色から聞けば良かったのだ。
片っ端から水色の服を探す。そう言えば、愛華の少し色素の薄い茶色の髪には水色はよく似合うような気がする。
サイズを確認してとりあえず、着回せるように五着購入する。一着試着してそのまま帰ったので、随分来たときとは違う印象だ。
「なかなか似合うじゃねえか」
「ん」
少し照れたように、愛華が笑った。おお、笑った、と、蓮次は感動する。それが初めて見た笑顔だった。大人びて見えていたが、笑ってみれば全然、普通の子どもだった。
煙草に手を伸ばしかけて、やめる。あるきたばこ、だめ。
***
「可愛い服着た愛華ちゃんふぉおおおまじ天使うちの子可愛い!」
「うるせえ黙れお前の子じゃねえだろうが死ね」
「辛辣!」
組の中に入ると速攻で飛びかかってきた雅人を後ろへ受け流すと、突き当たりの部屋に入る。秀二がいた。
「…あれ。組長のことだからもっとキツい服買ってくるかと思ったんですけど、案外まともですね」
「ちょっとそれどういうことだよ」
蓮次の言葉を無視した秀二は、蓮次の手から紙袋を取り、中を確認する。
「…全部水色ですか?」
「愛華は水色が好きらしい」
「だからって」
何か言いかけた秀二だったが、はぁ、とため息を吐くと、洗ってきますね、と言って紙袋をを持っていった。
復活した雅人が、後ろから声をかける。
「愛華ちゃんの感じなら、パステルカラー似合いそうッスよねぇ」
「何だよ、パステルカラーって」
「純色を水で薄めたような色ッスよ。今度買ってきますね」
さすがに子どものこととなると張り切るな、と蓮次は思ったが、服を買いに行ってくれるのなら何も文句は言うまい、と口を閉じる。
あのね、と眼下から声がした。愛華の声だ。
「何だよ」
「これ、ありがと」
そう言って愛華は、自分が今着ている服の襟を引っ張った。少しずつ自分に懐いていく愛華の様子を見るのは、まぁ楽しいものだった。
「おう、幸いうちは金には困ってねえからな」
「何でそういうこと言うんスか組長」
「何がだよ」
洗濯機が回る音がして、秀二が戻ってきた。
「そういうときは、『欲しいもんがあったら何でも言えよ』とかって言うもんですよ」
「欲しいもんあったら何でも言えよ」
「手遅れです」
蓮次たちのやり取りを見て、密かに愛華が声をたてて笑ったのには、男三人は気付いていない。
***
「準備できたか、愛華」
「ん」
蓮次が聞いた時には、愛華は既に入学式用の正装に着替えていた。準備万端である。
「そうか、偉いな。俺はまだだ、待ってくれ」
一応保護者として同席する蓮次は、愛華とは違ってまだ寝巻きのジャージ姿だった。そんな蓮次を、秀二がゴミを見るような目で見る。
「…俺が代わりに行きましょうか、入学式」
「いや俺が行く。待て。すぐ準備するから待て」
既に愛華の父親として学校に行くのが意地になっている蓮次は秀二の言葉を跳ね返す。跳ね返しながら、着替える。愛華がいるというのにさっさと脱いでいるので、秀二は愛華を連れて応接室に戻った。
数秒で着替えた蓮次が応接室に行くと、愛華が立ち上がった。心なしか爛々とした顔で、赤いランドセルを背負って立つ。
「よし、行くか」
「いく」
待ってください、と秀二が蓮次の首根っこを掴む。組長の扱いが酷いとかは、気にしていたら負けである。
「何だよ、秀二」
「入学式ですよ。せめてネクタイ締めてください」
「ネクタイ締めるの嫌いなんだよな」
「愛華が変な目で見られますよ」
「どうやって締めんだっけ」
結局秀二にやってもらい、蓮次と愛華は組を出た。
出てから、愛華の手を握って歩いていると、蓮次は愛華の手がいつもより震えているのが分かった。珍しいこともあるんだな、と感慨深く思う。
「何だ、緊張かぁ?愛華」
「ああいうとこ、はじめて」
おや、と、蓮次は首を傾げる。あいうとこ、とは、同年代の子どもたちが集まるところ、ということだろうか。
「お前、幼稚園とかも行ってねえの」
「うん」
反射的に、舌打ちが出そうになる。親のなんたるかを知っているわけではないが、愛華の親はどうも好感が持てない。こんなことを言ってはなんだが、捨てられ、拾われて正解だったように思える。
「ね、」
「んあ?」
考え事をしていて、愛華に呼ばれていたことに気付いた蓮次は少し間抜けな声を出した。
「あのね、れんじ」
「え、呼び捨て?」
一瞬、マジか、と思った蓮次だったが、まぁ、それ以外に呼び方もないか、と考え直す。愛華に組長と呼ばれるのも、ちょっと、あれだ。
珍しく自分から話しかけてきた愛華を見つめ返すと、控えめにこう聞いてきた。
「きんちょうしない方法、おしえて」
少し眉根を寄せてそう聞いてきた愛華に、応えなければ、という使命感が沸く。これは教えてやらないと、と。
「緊張しない方法なあ」
そう言って、蓮次は考える。いったい自分はどういうときに緊張するのだろうか。
例えば、一般人に手を出そうとした若い奴を締めるとき。は、緊張しない。負ける気はしないし、実際負けたことはない。
例えば、自分より上の奴らに呼び出しを喰らったとき。も、苛立ちこそすれ、緊張はしない。自分に否が無いのは分かっているからだ。
…あれ、と、そこで首をひねる。結局自分はいつ緊張するんだ。
「れんじ」
「お?」
「ついた」
「おお?」
愛華の声に反応して前を見ると、確かに小学校があった。祝・入学、という看板があり、子どもがたくさんいる。
しまった、結局答えられなかった、と思い、とりあえず思い付いた言葉を並べる。
「いいか、愛華。緊張したら、どうでもいいこと考えろ。俺とか秀二とか雅人が喋ってたこととか、とりあえず自分が安心するもんだ」
思い付きだったので効果があるかどうかは分からないが、愛華はこくんと頷いて、蓮次の手をぎゅっと握った。とりあえず、安心する。
体育館の中に入ると、蓮次は、自分にもこんな時期はあったっけな、と感慨に耽る。そして、気付く。どうしよう、思い出せない。
「しっかりな、愛華。返事は大きく、だぞ」
「へんじはおおきく」
愛華は復唱するように蓮次の言葉を繰り返すと、少し固い足取りで児童たちが座るところまで歩いていった。蓮次も、適当なところに座る。周りを見渡し、案外男は少ないな、と思う。こういうのは普通、母親が来るものなのか。
例のごとく訝しげな目で見られたが、気にしたら負け、だ。
入学式が始まって、吹奏楽の演奏が始まる。高学年の演奏だろうか、良い出来だった。
禿げた校長の話ではうとうとしていたが、児童の名前が一人ずつ呼ばれるときになると、自然と目が冴えた。しっかりしろよ、愛華。
マイク越しに、雛森愛華ちゃん、と聞こえ、いつもより少し張った声で、はい、という声が聞こえた。よしよし、と安心する。ちゃんとできたな。
入学式が終わってから各教室に向かう途中で、愛華のクラスの担任であろう女教師に声をかけられた。
「あの…」
「あ?」
明らかに自分のことを怪しんでいる担任教師に乱暴に返事をしてしまうが、落ち着け、と自分に言い聞かせる。愛華の担任だぞ。
「失礼ですが、どの子の親御さんですか?」
直接聞いてくるとは、本当に失礼な奴だな、と思いながらも、少し考える。
愛華は"雛森愛華"で入学しているのだから、やっぱり。
「雛森だよ。雛森蓮次。愛華の父親だ」
担任は一瞬愛華を見て、そうですか、と引き下がった。納得をした顔には見えなかったが、まぁ、ひとまずは良しとしよう。
教室で担任の説明を聞き、今日は解散となる。愛華は自分の席を立って蓮次のところに行くと、帰ろ、と言った。
愛華が出した手を取って、教室から、学校から出る。愛華の手の震えは収まっていた。
「どうだよ、上手くいきそうか?」
「わかんない」
「友達100人できそうか?」
「そんなにいない」
的確につっこまれ、蓮次は苦笑する。
まぁ、内向的なのが多少心配ではあるが、愛華の性格は贔屓目に見なくても悪くはないだろうから、差し当たって問題は無いだろう。
愛華は自分が少しわくわくしているのを感じた。つい数日前までの、何も考えられなかった毎日が嘘みたいだ、と。
十分ほど歩いて組に着くと、蓮次は愛華に、ちょっと待っとけよ、と言って、応接室の扉を開けた。そして、中に問いかける。
「おい、準備できてんだろうな」
応接室の中は愛華には見えなかったので、何の準備だろう、と思う。誰か来るのかな。
蓮次は一度応接室の扉を閉めると、愛華に向き直った。
「準備できてるってよ。さ、入るか」
愛華は頭に疑問符を浮かべた。お構いなしに、蓮次が扉を開ける。
『愛華ちゃん、入学おめでとう‼』
蓮次が扉を開けた途端愛華の目に飛び込んできたのは、ぱん!とクラッカーを鳴らし、強面ながら笑顔の霧原組のみんなだった。綺麗な字ではないが、"入学おめでとう"という紙も壁に貼ってある。
愛華が目を丸くしていると、蓮次が愛華に話し掛けた。
「そういやお前の歓迎会やってなかったからな。うちでは新人全員にやってんだよ。それについでに、入学祝いだ。喜べ、ご馳走もあるぞ」
そう言って蓮次は、愛華の頭をわしゃわしゃと撫でる。愛華がぽかんとしていると、台所から秀二が出てくる。
「喜べ…って、そのご馳走作ったの俺なんですけど。威張らないでくれますか」
呆れ顔でそう言う、腰エプロンを着けた秀二に、まぁ固いこと言うなって、と蓮次が肩を叩く。
まだ何が何だか、という状態の愛華の前に、目線が合うように雅人がしゃがむ。
「愛華ちゃんいろいろおめでとーな!学校行って変な男に変な目で見られたら俺に言ってよ!」
そんな雅人の相変わらずの言動に、周りが笑う。
秀二が作った美味しそうな料理の匂いに、愛華のお腹の虫が鳴く。蓮次が笑った。
「何だ、腹減ったか?じゃ、秀二に感謝して食うか!」
真ん中にある大きな机に、蓮次は愛華を連れていく。愛華はむずむずとして、久しぶりに大きな声を出した。
「あっ」
愛華が声を発したので、みんなが愛華の方を見る。少し緊張してしまった、愛華は、やはり元の小さな声で言った。
「…ぁ、ありがと、ぅ」
俯いてしまった愛華を見て、組のみんなが顔を見合わせて笑う。代表して、蓮次が言った。
「歓迎するぜ、愛華。ま、こいつらも悪いのは人相だけだから、よろしくな」
霧原組の歓迎会の幕が上がった。




