断罪者が多すぎる。
私はアルフォンス王子からの呼び出しでとある部屋の前へとやってきた。
私が扉を開けると、そこには男爵令嬢のローナと彼女を慕う男たちが佇んでいた。
「ワンダ公爵令嬢。貴様、ローナをいじめているそうだな」
アルフォンス王子がきつい表情で私を見つめる。
「姉上、貴方は最低な人間です」
弟のイアンが私に嫌悪の目を向ける。
「はっきり言うと、僕君が嫌いだったんだよね……」
幼馴染のウォルトがじとーっとした表情をしている。
「教師として、あなたを正しい道に導けなかったのが心残りです」
教師のエドワーズが悲しげな表情を浮かべる。
「……」
騎士見習いのオラードは黙ってこちらを見ている。
「我々の目はごまかせませんよ」
秀才のカルロが眼鏡をくいっと持ち上げながら言う。
「おうおう、俺たちを敵に回すなんていい度胸じゃねーか!」
不良のキラーが威圧的に叫ぶ。
「え~とぉ、君の事~、くずだって~、皆言ってるよ~?」
おっとり者のクラインは眠そうに呟く。
「貴方を見てると症状が悪化しそうです……ゴホ、ゴホ」
病弱なケイオスは咳き込む。
「ローナお姉ちゃんはお前なんかに渡さないぞ!」
まだ幼いコルトは可愛い声で威嚇してくる。
「俺の熱い炎で! お前の悪行を! 止めて見せる!」
熱血漢のサハラは大声で熱く語る。
「……死ね」
冷血なシアンはたった一言だけ呟く。
「僕の鞭の餌食になりたいようだね?」
ドSなスルーアは鞭の準備を始める。
「良いね、その『この人たち何なんだ?』みたいな目つき……!」
ドMなセクトは恍惚な表情を浮かべる。
「わいのビタビタビンタは痛いで! 覚悟しいや!」
ナニワのソルはビンタの素振りを始める。
「オラいながもんだげど、ローナさんは守るべ!」
田舎者のタイラーはローナの近くに行く。
「いや、ここは私が守ろう」
便乗屋のチークが、タイラーの真似をする。
「いやいや、ここは俺が行くよ」
便乗屋の便乗屋のツネキチは、さらにチークの真似をする。
「どうぞどうぞどうぞ」
押し付け屋のテッドは、芸人並みのスピードでツネキチに仕事を押し付けた。
地味キャラなトルーバーは見当たらない。この会合に呼ばれなかったのだろうか。
「ここは僕たちの愛の世界だよ……」
攻めのナルニアは受けのニルトにキスを迫る。
「駄目だよ、ナルニア! みんなが見ている……」
受けのニルトは、言葉では抵抗しつつナルニアにキスをする。
(ククク……ローナの奴、俺が財布を盗んだとは気づくまい……)
盗人のヌスベーは何も言わずクククと笑っている。
「俺の歌を聞けー!」
ボーカリストのネルトンは歌おうとする。
「アン・ドゥ・トロワ! アン・ドゥ・トロワ!」
ダンサーのノックはネルトンの歌に合わせて踊り始める。
「ふむ……ダンジョンのボスを倒すと、こんなにボーナスポイントが入るのか。まさにチートだな」
転生勇者のハーマンは、ステータス割り振りに夢中のようだ。
「蒸気機関を作ろう。そうすればこの領地は劇的にエネルギー効率が良くなる」
転生領主のヒーダは、新たな技術を広める事に夢中のようだ。
「いらっしゃい。何か食べるかい? おすすめはカレーライスだよ」
異世界シェフのフタバは、何かを調理している。
「これをこうして作れば……。……できた! 蒸気機関の完成だ!」
錬金術士のヘルドは、新たな発明をしている。なんかヒーダと被っている。
「ククク……ダークネス・ダークネス……フフフ……」
魔王のホイホイは訳の分からない言葉をつぶやいている。
「うっほ!うっほ!うっほ!」
ゴリラのマンドは、ドラミングをしている。
「……なんかここ、あんままともな奴がいない気がする……」
リザードマンのミカルは、私が薄々思っていた感情を代弁してくれた。リザードマンの癖に。
「ゲゲゲ。これをこうすれば……太陽光発電の完成でげす!」
ゴブリンのムースは、ゴブリンの癖になんか発明していた。というかヒーダ、ヘルド、あんたら負けてるぞ。
「ワン!」
コボルトのメルメルは犬だった。それ以上でもそれ以下でもない。
「ホイホイ! サッカーしようぜ! お前ボールな!」
スライムのモッピーは、ホイホイをサッカーに誘う。
「Το όνομά μου είναι Γιανγκ.」
外国人のヤンは何を言っているのかわからない。
「ぴぴるぴるっぴぴぴるるるるぴぴるぴ」
宇宙人のユーフォは何言ってんのか分からない。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
邪神のヨーギを見つめていると、次第に正気度が減ってきた。
「押さないでください、押さないでくださーい!」
警備員のランドは、部屋の中の人間を必死に整理している。
「おいこら、てめぇ押しただろ!? ここは俺の範囲だぞ、狭いんだから気を付けろよ!」
クレーマーのリンドバーグは隣の人間にいちゃもんをつける。
「皆死ねば……狭くなくなる……」
殺し屋のルーダーは、やばい事を言っている。
「おい、やめろ!でないと撃つぞぉ!」
警官のレイヴは、ルーダーの言葉を聞き銃を構える。
「助けて……逆ハーレム作りすぎて収拾付かなくなった……」
そしてイケメンたちに囲まれて縮こまっているローナが本音を口にした。
私は部屋に入らず、そっと扉を閉めた。