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暁の〝星剣使い〟(あかつきの〝コスモダスター〟)  作者: よつふじあきたか
EPISODE 1『焔が結ぶ〝絆〟(ほのおがむすぶ〝シンパシー〟)』
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第38話 その仮面の下

「お……前がぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 二年前の出来事が浅陽の脳裏に蘇る。

 斬りかかった浅陽の刃があっさりと弾き返され、それは後方の床に突き刺さった。


『この愚か者ッ!!』


 そこで突如頭に直接響いた大音声(だいおんじょう)もしっかりと覚えている。そこで致命的な隙が出来ていたことも。


 その僅かな隙を逃さなかった黒仮面が、その手の〈黒く燃え上がる剣〉を浅陽に向かって振り下ろす。


「こんなところで根絶やしにされてなるものかよ」


 だがそれは浅陽に振り下ろされることはなかった。何故なら彼女は紫電を纏う刀、浅陽が今しがた目にした〈鳴神〉でその一撃を凌いでいたからだ。


(そうだ。たしかにあたしは見た───)


 自分の身体が自分の物でないような、別の誰かが動かしたかのような感覚を微かに覚えていた。


「ふん。そこでおとなしくしていろ」


 今現在浅陽の身体を動かしている少女の―ものと同じだ。

 少女は〈鳴神〉で黒仮面に斬りかかる。鍔迫り合いになるが、黒仮面は少女を力づくで引き剥がした。


「ふんっ」


 少女は危なげなく着地する。その傍には床に突き刺さった〈焔結〉があった。少女は右手で〈焔結〉を引き抜き、左手に持っていた〈鳴神〉とを合わせて二刀流で構えた。

 そして再び黒仮面へと強襲する。それは一分の隙もなく、浅陽よりも洗練された達人の動きだった。


 それには黒仮面もついていく事が出来ず防戦一方で、決着がつくまでそう時間はかからなかった。


 少女が黒仮面の〈黒く燃える剣〉を〈焔結〉で弾き飛ばし、防ぐ隙を与えず続け様に〈鳴神〉でその黒い仮面を叩っ斬った。


 仮面はゴトリと床に落ちる。そしてそこから覗いた顔は───、


(ゆう……ひ?!)




(思い出した! 確か二年前にも見た……、黒仮面(アイツ)の素顔!)


 二年前はすぐさま手で顔を隠しそのまま姿を消した黒仮面だが、今度はそんな様子はなく呆然と立ち尽くしている。


「ここまでだな」


(え?)


 浅陽は誰かに背中を押された気がした。すると不意に身体の支配権が戻ってきて、浅陽は思わず前によろけて倒れそうになった。


「っとと」


(あとはお前の仕事だ)


「あたしの、仕事……」


決着(・・)をつけるんだ)


 ズキンと浅陽の胸が痛む。そしてゆっくりと体勢を整えて、黒仮面───悠陽の姿をじっと見つめた。


「ゆう……ひ?」


 黒仮面の肩がピクッと震えた。


「本当に悠陽なの?」


「…………………………そうよ」


 それは紛れもなく、浅陽の記憶にある水薙悠陽の声だった。


「そっか。……よかった。どんな形でも生きててくれて」


 浅陽の頬を一筋の涙が流れ落ちた。


「……………………………………くくっ」


「え?」


 聞こえてきた〝音〟に浅陽は耳を疑った。


「あーははははははははははははははッ!!」


 悠陽は突然大声で心底おかしそうに笑いだした。それは浅陽の聞いたことのない笑い方だった。


「相変わらず甘ちゃんね」


「ゆう……ひ?」


「私を見て泣いちゃうなんて、ホント」


 おかしくて笑いが止まらないといった風だ。浅陽は訳が分からず狼狽えた。


「はぁ~、笑った笑った」


 一頻り笑い終わると悠陽は浅陽を鋭く睨み付けた。


「オマエのそういう弱っちいところが大っ嫌い!」


 悠陽はそう吐き捨てるように言った。


「泣き虫で弱虫で、なのにオマエは私から奪っていった! 当主の座も! 〈焔結〉も!」


「そ、それはあたしが選んだんじゃない。周りが勝手に決めたんだよ。あたしは絶対悠陽が選ばれるんだと思ってたんだし」


 浅陽は涙を拭いて言い返した。


「昔からオマエが嫌いだった。大嫌いだった。だから私はオマエを殺してこの〝力〟を手に入れた」


「あたしを? どういうこと? あたしはこうして生きてるのに」


「陳腐なセリフだけど、冥土の土産に教えてあげる。私はこことは別の、並行世界から来た水薙悠陽。この〝力〟を手に入れて並行世界を渡り歩いてオマエを殺し続けてきた」


「並行……世界? そんなものが実在するの?」


『するのだろうな。奇しくも彼女自身がその証明になる』


「悠陽が証明?」


『まだ分からないのか? 二年前、水薙悠陽はお前の目の前で死んだ。それは間違いない。では彼女は誰だ? 何者かが作り出した複製か? いや違うな。それはお前が一番よく分かっているだろう?』


「うん……」


 浅陽は悠陽を前にして、彼女が確かに水薙悠陽であることが分かった。例えそれが次元を越えた双子であろうとも。


『だが別人に代わりはない。あの黒い念結晶の影響を受け、お前の姉を殺したな』



───「あれが【念結晶(クリスタル)】である以上は、何者かの〝想い〟、いや〝欲望〟を発現、暴走させたモノだと思われます」



 浅陽は数日前の奏観の話を思い出した。


「……うん」


 黒い、欲望の【念結晶(クリスタル)】を受け入れた悠陽。それはもう〝彼女〟の言う通りまったくの別人と言う他にないくらい、浅陽の知る水薙悠陽とはかけ離れているように思えた。




つづく


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