薪を割る少年
少年は薪を割る。
木造の小さな家の側で、毎日のように彼は薪を割る。
旅人は彼の割った薪に腰を掛け、少年に尋ねた。
「君は何故薪を割るんだい?」
少年は答えた。
「母さんが喜んでくれるから。母さんは家事で忙しいんだ」
少年は薪を割る。
「君はとてもいい子だ」
旅人は水筒の水を体内に流し、続ける。
「君がいい子に育ってくれて、さぞ母さんは嬉しいことだろう」
「母さんが喜んでくれているかはわからない。でも僕は母さんが喜んでくれるなら何でも出来るんだ」
少年の眼は美しかった。
旅人は言った。
「でも、君のようないい子は薪を割り続けていてはいけないな」
少年は旅人が何を言っているかわからなかった。
「僕は薪を割り続けます。いつまでも。いつまでも。母さんに恩返しをするために」
少年の言葉は揺らぎは感じられない。
しかし、旅人は満足そうな笑みを浮かべた。
「人は皆旅人。常に動き続けていなければならないのだ」
旅人は立ち上がり、少年に背を向けた。
「君もきっと旅に出る。それまではお母さんを大切に」
旅人は再び何処かを目指し、歩き始めた。
少年は薪を割る。今はまだ……。
感想・評価お願いします!




