第三話 死霊術師、人助けをする
「うぇ、魚臭い……」
「魚臭いというよりは潮風に当たった後、湿り気で物が腐った臭いでしょう……あの海賊共はかなり不衛生だったようですな」
ギシギシと階段を軋ませながら船底へ向かう俺達、掃除なんかされちゃあいないようでその臭いはあの海賊共のよりも酷かった。
全く何でこんな環境で生きられるんだよ、俺だったら3日と経たず病気になる自信があるぞ。
因みにカンテラを持って薄暗い船内を先導してくれているのは骸骨さん、青紫鎧のスケルトンさんはもしもの時に備え甲板で待機して貰っている。
……そろそろあいつにも骸骨さんみたいに固有名詞を……って待て、あの人ちゃんと名前があるんじゃないか?というか只今カンテラ持って先導して貰ってる骸骨さんにも名前あるよね絶対。
別に聞かなくてもいいんだろうが俺が初めて召喚した人だし聞いておきたい。
「所で骸骨さんの名前って何なの?」
「一応生前は38番と呼ばれていましたが……正確には私は奴隷でしたので名前はありません、お好きなようにお呼びください」
「え~と…………じゃあ今までの通り骸骨さんでいい?」
「無論です主人様」
奴隷、と聞いて一瞬聞いちゃいけないこと聞いたかな……と思ったが別に気にしていない感じであったので俺はその事に付いては聞かなかった。
ここは異世界だから奴隷といっても俺の居た世界とは少し意味合いが違う可能性もあるし一概に否定は出来ない……後であの本で調べてみるか。
そしてとりあえず彼の呼称を考えたのだが、俺の頭ではいい名前が思いつかずやはり骸骨さん、という事になった……38番とかよべないっしょ普通。
そんな事を考えている姿を見てどこか骸骨さんが嬉しそうな感じだったのは……気のせいでは無いと思いたい。
「うぉえぇ……船底はもっと酷いな」
「足場も悪いのでお気を付けてご主人様」
じめっとした空気の中、俺は所々に吊るされたカンテラでぼうっと映し出されている船底を見回した。
いやはやそれにしても汚い汚い、地面には何やら黒い物がこびりつき酒瓶が無造作に転がっていて天井には得体のしれないぬらぬらと光る物体が吊り下げられポタポタと得体のしれない液体が滴っており、壁や柱は所々腐っている。
樽や木箱なんかは無造作に詰まれているせいで中途半端に道を塞いで歩きにくく、壊れて中身がぶちまけられているのもありそれを更に酷くしていた。
中身だった物は酷く腐敗しているようで真っ黒でグズグズの物体と化し悪臭が放たれている、正直何が入ってたかなんかの調べる気も起きない。
「……[ヒクヒク]」
「うぉう!?」
ってネズミの死骸が転がってるじゃねぇか!?……あ、生きてるや、ひっくり返って足ヒクヒクさせてるだけか……ってよくねーよ!
ネズミがノックダウンするってここの衛生面最悪ってレベルじゃねーぞ!
かわいそうだったので拾い上げて適当に体を拭いてやり本が入っているのと対照のポケットに放り込んだ……ネズミと言えどもこの環境は流石に同情するよ全く。
ほんとよくこんな汚い状態で生活できるもんだ、人が住む環境じゃねぇよこれ。
既に鼻がバカになってもおかしくない筈なのに様々な臭いが混じり合っているせいがそれを許さず吐き気を催す程酷い悪臭が絶えず俺の鼻を通り抜けて行く……後でスケルトンさん達にここも掃除して貰うか、そう思いながら俺は船底の奥へと進んでいく。
「……ここみたいだな」
ゴチャゴチャしていなければそれなりの広さの筈の場所を抜け、細い通路に入り木製の壁に出入り口が鉄格子になっている場所まで来た。
俺は壁に掛けてあるカンテラを外すと鉄格子に近づき中を見る。
闇の中からぼうっ……と映し出されたのはいくつかの人影、奥で固まっている為に姿ははっきりと分からないがそれが皆怯えたように俺を見ている事だけは分かった。
鉄格子は左右二つずつの計四つ、調べてみると何処も捕虜と思われる人達が居るようである、さっさとこっから出してやるか。
「少し待ってな、此処から出してやるから」
俺は中に居る奴等に言葉が通じるか分からないが出来るだけ優しい声でそう言うと鉄格子の隣の壁に掛かっていた鍵束を取りカギを外して扉を開ける。
「[ギギィ……]よし、空いたぞ!」
中に居る奴等はその様子を警戒するように見ていたが、その内の一人が意を決したのかそろり、そろりと近づいてくる。
そしてカンテラに映し出された姿は……獣耳の付いた俺の胸位の身長の少年だった。
俺を見て怯えているのか耳はへたりと垂れ、目を潤ませてビクビクしていたが意を決したように口を開く
「本当に……たす、かったんですか?」
「その通り……助かったんだよ」
つっかえつっかえにそう言って文字通り小動物のような目で俺を見上げてくる、きっと怖かったのだろう、俺は屈んで少年と目線を合わせるとくしゃり、と頭に手を置く。
触れられた瞬間ピクリと体を強張らせるがわしゃわしゃと撫でてやると全身から力が抜けていくのが分かった。
格子の奥に目をやると既に中に居る奴等の目に警戒の色は無く、何人かは立ち上がりこちらへと歩いて来ていた。
「よ~しお前等、幾分場が和んだ所でさっさとこの臭い船底からおさらばしようか」
俺はそう言って立ち上がると他の鉄格子を開けに行った。
※※※
「本当にありがとうござます!」
「いやいや頭を上げて下さい、当然の事をしたまでですから」
そう言って最後に甲板に出てきた壮年の人間の男性ととがった耳が特徴のエルフみたいな青年が頭を下げる。
その後、獣耳の少年を皮切りにゾロゾロと牢に居た人達が出てきた……まあ一部人とは言い難い姿をしていたのも居たが。
因みに皆さんが最初出て来なかったのは俺を警戒してたんじゃなくて後ろに控えてるスケルトンさん達だったそうで……うん、その事をすっかり考えて無かったよ。
そりゃ暗がりでカンテラ持ってるローブ姿の男の後ろに武装したスケルトンが幽鬼の如く佇んで待機してたら怖くて出て来れんわ、あの男の子の勇気に感服だ。
いややっぱ死霊術師って日陰者の職業なのかな!?
そこらへん本当にに知りたいよ俺!それで身の振り方変えなくちゃいけないんだからこれ結構重要な問題なのよね。
「いや~、あんた若いのに強いんだねぇ、立派だわ!」
そう考えている俺に声をかけてきたのが人外の筆頭、蜥蜴頭のリザードマン(♀)だ。
俺より一回り程大きいがっしりとした体躯、体と同じ色の深緑色の鱗鎧を纏い腰には二本の戦斧、目の色は黄色で縦長の瞳孔は爬虫類の目そのもの。
そして全長は何メートルなんだろうか?尻尾を入れたら3メートルいくかって所か。
それにしてもこんな成りじゃあ声を聞いたとしてもメスだと言われなかったらオスだと思うぞこの容姿……
因みにこの方以外にも肌が変な色をしていたり目の数が多かったり角や牙が付いていたり背中から羽が生えていたり虫みたいだったりとバリエーション豊かな方々が捕虜になっていた。
ここがファンタジーの世界だと認識していなかったらゾロゾロと出てくる皆さんの姿を見てSAN値がガリガリ削られて卒倒するか壁をガリガリ引っ掻きながら『ああ、窓に!窓に!』とか言いだしていたに違いない。
閑話休題。
彼等は俺の指示の下スケルトン達と一緒に只今船を動かして最寄りの港町へと向かって貰っている。
先程まで牢屋に入れられていた彼等には悪いが現在のスケルトン達では船を動かす事が困難なので手伝って貰うしかないのだ。
え?水夫のスケルトンでも呼べばいいじゃないかって?
それが出来たなら苦労なんてしませんよ、只今俺は謎の倦怠感に襲われて魔法を使う事が出来ないんでございます。
杖を握って何を言っても反応してくれない、俗に言うMP切れとか言う奴だろう……最初にやっちまった小舟の上での大量召喚が悔やまれるよホント。
「……おっと忘れ物」
何気なく甲板を見回すと俺は無造作に置かれていた小さな本を見つけた、足早に近づいて拾い上げるとそれを懐に仕舞う。
危ない危ない、危うく大切なものを忘れる所だった……戦略的に手放すのは有りなのなこの本。
それならどうにかだまくらかして……やめとこ、やる意味無い上に間にか懐に戻ってそうだしな。
改めて甲板を見回すと船の操縦法を知っている数人が他の奴等やスケルトン達に指示を与えててきぱきと行動していた。
彼等に俺も何かやろうか?と聞いたのだが『これ以上恩人を働かせるなどとんでもない!どうぞ船室でゆっくりとしていて下さい』と言われた。
まあそれにあやかろうと船室へ入ったはいいのだがそこは不安等で精神を削られ、精神的に疲れ切っていた子供達が寝かされていた。
そしてその横には空になった俺の食料が入っていた袋が……船底の状況から見てろくな食事も与えられなかっただろうしまあ仕方のない事だろう。
因みに助け出したのは子供が十数人、大人が三十数人……合計で五十人居るか居ないかといった所だろう。
まあしかし……疲れ切って眠っている子供達を見ていると一人だけいい年してこの中で眠りこけるってのはいい気分じゃないな、と思ってしまう訳であり。
そう思っても特にやる事が無い俺は甲板に出て助けた捕虜たちの感謝の言葉を受け取りながら何故かこのリザードマン(♀)に絡まれているのである。
……あんたそのガタイなんだから働けよとはその太い腕で引き裂かれそうなので絶対に言わない。
「あたしの名前はルピ・フィフィス、女でハンターやってんの、凄いでしょ?」
「……そーっすね」
あんたどっから着たの?とかそんな術どこで覚えたのよ?とか話好きなおばちゃん宜しく質問攻めにあうもんだから既にヘトヘトだった俺の精神の疲労感がMAXだ。
しかし反応しないってのも悪いと思い適当に答えて受け流している。
「反応薄いねぇ……何でみんな驚かないんだ?」
そりゃあハンターとか知らんから良く分からないがルピさんのその体躯なら大方やってけるという事だけはよーく分かるからじゃないですかねぇ。
この人が何で捕まったのか全く分からない、普通に考えてこの人ならあの海賊共なんか軽ーく捻れるだろ絶対……不意を突かれでもしたんだろうか?
「まああの男を倒したあんたじゃあたしなんかどうって事無いって事か!アッハッハ!」
「いえあの海賊、相当のやり手でした、大口を叩くだけはありますね」
「うぉっ!?」
「あ、やっぱ強かったでしょ?まあ私はあいつにいきなり正面から脳天に一撃くらって気絶しちゃったんだけどね」
いきなり後ろからぬっ、と現れる青紫鎧のスケルトン。
成仏されたおっさんといいこいつといい死んだ奴等はいきなり後ろに現れるのが好きなのかねぇ……まあある意味幽霊に近いかららしいっちゃらしいんだが。
そんな事を考えている俺を余所に始まるあの海賊の頭の話……てかあいつルピさん一撃で沈めたんかい、なんていう奴だ……やっぱりあの大男は強かったらしい。
いやルピさんの実力は見てないけどさ、この見た目で弱いって事は絶対に無いと思う。
なんていうかその……捕食者のオーラがひしひしと感じられるのでございますよこの人。
「実力的には私と同格……と言った所でしょうね、負傷や急所という概念が殆ど無いスケルトン相手では分が悪いと降伏したようですが」
「あら?あいつ降伏したの?」
「ええ、主がもう解き放ちましたが」
「ふぅん、“殻砕き”フレシオンを逃がしてやったんだ?」
「殻砕き?高名なハンターなのですか?」
「ええ、手に持つ戦棍で強固な鎧からドラゴンの固い鱗までその剛腕から繰り出される一撃であっさり粉砕する姿から付けられたあいつの二つ名よ、結構ギルドじゃ名の知れた奴だったんだけど最近ギルドを抜けたらしくてね……どうして賊になり下がっちゃったんだか分からないわ」
やれやれと言った感じで首を振るルピさん。
つーか大層な通り名だなオイ、そして新情報、この世界にはやっぱドラゴンが居るそうです。
案外あの海賊の頭……フレシオンに追い詰められた時にとっさに浮かんだしょーも無いネタがガチだったって事になる訳か……この世界怖いよマジで、人探しの旅がモンスターとの命がけの旅になるとかになったら泣くぞ俺。
「ギュミィー!」
「お、ネズ公生きて……ってギュミィ?」
そのままスケルトンとルピさんが武人としての話に華を咲かせ、全く理解出来ずに置いて行かれた俺の孤独を感じてか胸ポケットがもぞもぞと動きネズミが顔を出したんだが……
先生、こいつネズミの鳴き声じゃないです、何て言うか……スマン、この奇怪な鳴き声は表現に困るわ。
その形容し難き以外過ぎる鳴き声にショックを受けた俺はその姿を良く見てみようとそいつをポケットから引っ張り出して掌の上にちょこんと乗っける。
抵抗も無く俺の掌まで連行されたネズミは丁度掌サイズだったようで、ぽてりと置かれると一歩も動かず鼻をひくひくと動かしていた。
……ああ、薄暗かったから分からなかったけどこいつ良く見たらネズミと色々違うわ、体は真ん丸で毛は赤茶色、ふさふさしてるけど耳は尖ってるし顔はネズミに近いが緑に光る目が四つ、毛の代わりに鱗が生えている尻尾はネズミというよりトカゲみたいだ。
「ギュ?」
そんなネズミもどきを観察していると『何?何?どうしたの?』みたいな感じで上半身を持ち上げこちらを見上げてくる。
……なにこれかわいい、これがこの世界のネズミの標準だとしたらこの世界の米蔵にこいつが入った場合、かわいさによって駆除されず荒らされまくったたであろう、それぐらいにかわいい。
大丈夫だよ~、と背中を指で撫でてやると気持ちよさそうに目を細めて俺の掌で丸くなった。
うむ、決めた……こいつを飼おう!
この世界で初めて見た癒しだ、こいつを手放す訳にはいかないぜうへへへへぇ……ご近所さんに『あの家の旦那様ネズミを飼ってるらしくてよ!、まあ汚らしい!』って陰口言われるようになっても断固として捨てないからな!
なんかキャラが崩れてきてるがそれはMP切れで精神が疲れているからだと思いたい。
「なあ、あんたの主人どうしたんだい?鼠なんか抱えてにやにやして……」
「恐らく我々を長時間に渡って使役しているから精神的に疲労が溜まっているのでしょう」
「な~る程、召喚術は魔力喰うもんねぇ」
「えへへ、かわいいよ、君は僕の心の癒しさ……」
「ギュウギュウ?ミュゥウ!」
「「何あの鳴き声怖っ!?」」
「えっ!?」
「ギュ?」
そんなこんなで俺達を乗せたは月明かりに照らされながらゆっくりと港へ向かって行くのだった。
※※※
“港町ルヴィス・ハーバー、海上都市ネミアヴィネッサにほど近いこの港町は陸路での踏破が難しいグラントス高山帯の向こうから海路で来る様々な船の海上都市への中継地点として栄えている。ネミアヴィネッサ程の華やかさは無く、基本的に大きな問題を起こさなければ誰でも町に入れ、簡単な手続きを行うだけで居住、商売が出来るので無法者やゴロツキが多く住み着ついており小競り合いなどが絶えず、また貧富の差が激しくスラム街も多い。その為に治安が良いとはおせじにも言い難いがその緩さのお蔭で正規、非正規な方法共に稼ぎ口が多く活気に満ち溢れているとも言え、ネミアヴィネッサとは違い泥臭い雰囲気が漂う町である。”
「ふ~む、凄いなこの町は」
俺は文字が浮き上がった本から目を放して周りを見回す。
港に並ぶのは俺が乗っていたのよりも一回りも二回りも巨大な船の列、俺が乗ってた船も十分大型だがこの列に並んでいるとどうしても小型船に見えてしまう。
というか港が広いのなんの、左右どちらを見ても大型の船がミニチュアに見える程の距離まで船が停泊している。
その奥にある街並みもまた壮観だ、まるで中世の港町のような風貌のそれは町の入口から少し離れたこの桟橋からでもその賑やかさが伝わってくる。
夜が更けると同時に陸地に到着した俺達は無事にこの港町に到着する事が出来た。
只今俺は船を下りた桟橋の上でこのスケールのデカい景色に感嘆していた、という訳である。
まだ町にも入っていないというのにそこそこ幅のある桟橋の上には様々な奴等が物資を運んだり指示を飛ばしたりしていて中々騒がしかった。
因みに降りているのは俺と骸骨さんのみ、何でも船長は一番最初に降りて役人を待たなくちゃならないんだと……つまり権利書持ってるから俺が船長って事だから降りている訳。
一応他の奴等も降りれるは降りれるがこの桟橋からは出られないので船でおとなしくしているって訳だ。
“貴方はお人よしなので悪人にひっかかって財布を盗まれない事を祈っています”
「一言余計だっての[パタン]」
最後に映し出された毎度の余計な一文を読むと俺は本を閉じて懐に仕舞った。
……まあ今回の一言は中々的を得ているので気を付けないとな。
「え~と、貴方がこの船の所有者ですか?」
「あ、はいそうです」
停泊した桟橋の奥から一抱えもある本を持ってその人ごみの中をえっちらおっちらと歩いて来た中肉中背のおっさんにそう答える。
立派な服に腰にはサーベル、身なりからしてこの港の役人だな。
おっさんは俺の答えを聞くと持っていた本を開くとページをめくっていく。
「持っておりましたら船の権利書を拝見いたします」
「はいどうぞ」
因みにこの権利書、一種の証明書みたいなもんだそうだ。
この船は海賊船とかじゃ無い普通の船ですよ~っていう事だ。
それでそこには造られた国の印鑑が押されていてそれが安全な船の証明になるそうである。
基本的に海賊に襲われたりして船が奪われたりした場合船長が死ねば権利書の国の印が消えてしまう魔法が掛かっており、もし船長が生きていた場合はその権利書の権利を取り下げる事が出来るらしい、良く出来てるもんだ。
それではあのおっさん死んでたのに何で権利書が無事だったのか?
理由は簡単、あのおっさんが俺に落とした時契約の譲渡を行ったからだそうで……
死んでも有効なのかよ権利の譲渡……とか思ったら、骸骨さん曰く『大方呼び出された者は無念からか半モンスター化していますからな……一応“モンスターとしては”生きているとカウントされますからそれで権利書を騙していたのでしょう』との事。
……ご都合主義、ってこういう物なんだろうか?いや嬉しいけど納得出来ねぇ。
「ふむ……ラコンス造船所制作、マッキンドバリー号ですな……停泊は一週間で1000フルティです」
「あいよ、じゃあとりあえず一週間」
「白金貨一枚、1000フルティ確かに頂きました……ここにご署名を」
因みにこの世界の通貨単位はフルティ(本から覚えた)で、1~10が銅貨、100単位が銀貨、1000単位が白金貨、10000単位が金貨だ……まあその上に王金貨(土地や屋敷を買うとかのデカい買い物をする時に使う)、特殊なもので黒金貨、神鋼貨、魔道硬貨、七宝大貨とかがあったがこれはもう通常じゃ使わないっていうか国家元首レベルの人から報奨で与えられる代物らしい、お金として使えんよなそんな代物。
「骸骨さん頼むわ」
「はい」
そして俺は名前を書く事を骸骨さんに任せる。
この世界の文字は読めてもまだ書けはしないのだ、それとこういう奴等が相手にどう思われるのかという確認も含めている。
「おや話せるのですか?これは素晴らしい、中々の素体を使っているようですな」
「いえいえ、これは私の魂を元に錬成された姿でありまして……」
「ほほぅ、錬成された肉体ですか……とするとあのお方は中々の術師という事ですな、成程船に戦闘員が乗っていないのも頷ける」
なにやら二人が話していたのだが周りの喧騒で良く聞こえなかった。
しかしあの男の対応から見ると別段スケルトンを召喚するってのは異端な行為とかじゃ無いみたいだな……良かった良かった。
「手続きが完了いたしましたご主人様」
「ふぅ、もう色々疲れたからどっかでゆっくり休みた……」
「もう港に行っていいの?」
「早くいこー!」
「[グイッ!]うわっととぉ!?……ったく、子供たちは元気だな~」
手続きが終わったのを見ていたのか船から皆さんがゾロゾロと出てくる。
俺は『助かった―』とか『生きて帰れたぞー』とか言いながら喜び歩く彼等と共に(というかちびっ子共に引っ張られて)港町へと入っていくのだった。