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その3:フランカー一家撃退

一人、また一人とつぼの中から出てきた小人は、全員同じ方向へと走っていった。

 しばらくすると、遠くから『いてて……』や『はなせ!』などの声が、シェリーのほうへと近づいてきていた。

 声の主はすぐさまシェリーの前へと連れ出された。男二人組みのごろつきで、一人は痩

せたのっぽ、一人は太ったチビ。同じようなあごひげを生やし、同じように右目に眼帯を

つけていた。

二人を苦しめていたのは、先ほど出てきた小人の集団だった、髪を引っ張ったり手に噛

み付いたり――。

 男たちの手には、店の値札がついたままの指輪やネックレスなど多数を所持していた。

「ま〜んびきはだ〜めですよ〜、商品を〜かえ〜してくださ〜い! でないと〜ひどいめ

に〜あい〜ますよ!」

「うるせえ! こんな小人ぐらいでやられると思ってんのか! おれたちゃフランカー一

家だぞ!」

「少しぐらいくれても罰は当たらないザマス!」

 わけのわからない理屈とでかい態度で、フランカー一家と名乗る二人は反省の色すら見

せなかった。もちろんシェリーの商品を手放そうともしない。

「知らな〜いです〜よ? どうなった〜って〜」

 懐からシェリーが取り出したのは、小さな金属製のスティックだった。

「けっ、そんなスティックでなにができるってんだ!」

「馬鹿にするにもほどがあるザマス!」

 笑い飛ばす二人にシェリーは大した反応を見せず、小人の出てきた壺をスティックで一

度たたいた。とたんに小人たちの攻撃が止まる。

「なんだなんだ、諦めたのなら最初から言えっての!」

「ありがたくいただいていくザマス!」

 手を振りながら立ち去っていく二人。シェリーは薄っすらと笑みを浮かべて、もう一度

壺をスティックでたたいた。

「あひゃ、あひゃひゃひゃ!」

 突然ノッポの男が、体をちぢ込ませながら尻餅をついた。そのまま体をくねらせながら、

地面を転がりもだえ苦しんでいる。

「ど、どうしたザマスか! あひ、ひゃひゃひゃひゃ!」

 太った男も同じような反応を見せ、二人してシェリーの店と化した空き地を転げ回った。

 なにも知らないクネスが近づいていくと、理由はすぐさま判明した。先ほどまで攻撃を

していた小人が今度はくすぐり攻撃を始めていたのだ。

「し〜らな〜いですよ〜、笑い死に〜した〜って」

 転がる二人を見下ろしながら、勝ち誇ったように腕を組むシェリー。

「て、てめぇ! おれたちを殺したら商人免許剥奪されるぞ!」

「ぼ〜く、なにもして〜ない〜も〜ん」

 両手を軽く上向かせ、シェリーはせせら笑った。いつのまにか周りにはお客さんが集中

しており、転がっているフランカー一家を指差して笑ったり、写真を撮ったり――常連の

間では、小人の捕り物は名物になっているのだ。

「くそっ、覚えてやがれ!」

「次は痛い目にあわせてやるザマス!」

 フランカー一家が盗んでいた商品を捨てると、小人はすぐさま二人から離れた。

 用事が済むと、小人は壺へと戻っていった。お客さんの温かい拍手を背にして。

「またの〜ご来店〜、おま〜ちしてま〜す!」

 フランカー一家が走り去っていくと、シェリーは元いた壺のそばへと引き返した。

「さぁ〜、どんどん買って〜くださ〜いね!」

 周りに集まっていたお客さんは、すでに興味の対象をシェリーの商品へと戻していく。

シェリーのそばには小人の壺を観察しながら、何度もうなずくクネスだけになっていた。

「なるほど、万引き犯は小人が捕まえてくれるのか。面白いマジックアイテムだね」

「ぼく〜の両親か〜ら受け〜つがれた、大事な〜宝物〜です〜。これだけ〜はいくら〜お

金をつまれ〜ても譲れないんで〜す」

「先祖代々の壺ってわけか。なんかいいアイデアが浮かんできそうだ。それじゃあシェリ

ー、また次の機会にね!」

「は〜い。まいど〜ありがと〜ござ〜いました!」

 クネスはシェリーに軽く手を振ると、そのまま空き地を後にしていった。

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