(1)彼と妹と弟と諸星学園.
―――――――とある東京都内の高級マンションに彼は住んでいる。
「れおん兄ちゃんっ、早く起きてよ‼」
「・・・・ん・・・?」
れおん。
彼の名前は倉崎 れおん(くらざき れおん)。生まれた際に、父親が「砺蜿」・・・と漢字で懐けたが、母親が小学生になった時の事を考えて平仮名に直したそうだ。
れおんは今日、高校に入学する。
日常を望んで。
中学では成績優秀で学年でトップ、スタイル抜群で運動神経も良いと言う完璧な男子中学生とされていたが、本人はそれが嫌らしいのだ。
よく恋愛小説などにあるアレだ。
『バレンタインデーにチョコを5個以上貰う』
それ位にれおんはモテているのだ。
れおんにとって中学校生活は非日常だった。
『バレンタインデーにチョコを5個以上貰う』なんて事はありえないからだ。
だが現実、去年の2月のバレンタインデーには女子からチョコを5個以上貰ってしまい、同じ学年の女子からではなく、1年や2年の女子からも数個貰ったそうだ。
れおんは女子からのチョコレートを素直に受け取り、ホワイトデーにも「手作りチョコ」を返したみたいたが、女子には一切興味なし。
『自分がモテいる』と言うのは友人から教えてもらった事で知ったそうだが。
鈍感なのだ、倉崎れおんは。
普通の男なら『モテる』と言うのは嬉しい事だ。
だが、れおんにとっては何故か嫌だった様だ。
そんなれおんには妹と弟がいる。
「朝・・・か・・・」
「れおん兄ちゃん、おはようっ‼」
妹、倉崎ねおん。
小学6年生ながら倉崎れおんにベタベタ、そして何より変態である。
こんな倉崎ねおんだが、水泳に関してはバタフライ50mの全国大会にて銀メダルをとった実力だ。
「りおんはどうした?」
「りおん兄ちゃんだったらリビングに居るよ♪」
ねおんはそう言うと、何かを思い出したようにリビングへと向かって行った。
れおんはその後、制服に着替えリビングへと向かった。
「れおん、遅いで。」
「寝てた・・・」
りおん。
れおんの弟、倉崎りおん。
弟と言っても生年月日が2ヵ月違うだけであり、倉崎りおんも今日、れおんと同じ高校に入学する事になった。
「まさかりおんが高校に行けるとは思ってなかった。」
「そやな・・・。俺が高校行けるなんて夢みたいやわ。」
何故りおんは関西弁なのか。
理由があり、りおんだけ関西の中学に通っていた為だ。
「りおん、やめろ。」
「何がや?」
「その格好だ。」
りおんは外見からしてチャらい男だ。
黒いショートの髪に赤と青のメッシュ、制服を自分風にアレンジしてしまっている。
口説きが上手く、告白Ok待ちの女子が20人いるそうだ。
「それにしても、諸星学園の制服ってカッコイイよね・・・」
れおん・りおんが通う事になった高校は、諸星学園高等部と言う高校だ。
エスカレーター式の私立学校である。
何故彼等がこの学校に入学する事になったのか。
親に強制的に決められ、受験させられたそうなのだ。
れおんは他に行きたい学校があったのだが強制的に諸星学園の受験を受けさせられてしまった。
りおんは高校は行かず、バイトをするつもりだったらしい。
二人は受験に受かってしまったのだ。
それは凄い。
私立のしかもエスカレーター式の学校に受かってしまったのは凄い。
諸星学園高等部は小規模の高校であり、毎年の受験生は1000人を超えるが合格するのはその内の20人前後らしくかなりの確率だ。
諸星学園は、制服が可愛い・カッコイイとしても有名であり、細かいチェックのズボンに白いカッターシャツと、ネクタイで冬になるとこれにブレザーをはおる事になっている。
女子はリボンに白いカッターシャツ、そしてプリッツスカート。
冬服のブレザーは腰丈で可愛らしい。
女子も男子も、リボンやネクタイ、ズボン・プリッツスカートの色は選べる事になっており、女子は赤・ピンク・水色。男子は青・緑・黒。これも人気の一つかも知れない。
「人気なんやてな、諸星学園。」
「日常・・・」
れおんは予想もしていなかった。
これから始まる、非日常に。