06-はめられる………
幸い授業開始のチャイムが鳴り、みんな自分の席に向かっていった。そのおかげで助かったが、それでもずっと視線を感じながら授業を受けた。
そして、あっという間に昼休みがやってきた……
先生が教室を出るとすぐに財布を取りだし、教室を出ようと立ち上がったが――
「ピン~」
しかし、立ち上がったとたんにメッセージ通知が鳴った。誰からなのか、何のメッセージなのか、開くまでも俺は分かっていた。
メッセージを見ようと携帯を取り出すと、2人の人影が近づいてきた。
「冬花くん、カフェテリアで一緒に食べない?」 冬花春凪は笑顔で俺に尋ねた。
「は、はい。喜んで」俺は苦笑で答えた。
彼女の笑顔と、『逃げないでね』というメッセージから、彼女の誘いに答えはすでに決まっていた。
俺たち三人は、食堂に向かって歩き始めた。落ち着かない気分のまま、後ろからついていった。
「アハハハ、なんでそんなに硬いの冬花くん」
「いや、だって視線が……」
廊下にいる誰もが、通り過ぎる冬花をうっとりとした目で見ていた。
そして……俺が彼らの視界に入ると、その視線は敵意に変わる。
「まー、二人とも教室であんなシーンをしたからね」
「冬花くん頑固なところがあるから」
「うう……まあ、それはさて置き……ごめん、どちら様でしたっけ」冬花と一緒に来た女の子に聞いた。
「……何のためらいもなくストレートにそれを聞くなんて、冬花くんだけだと思う」
「いや、あはは」
「むう、酷いよ冬花くん。私のこと忘れたの? 結構インパクトのある自己紹介をしたはずなのに」
「自己紹介って……そんな前の話を言っても」
「まだ1ヶ月も経ってないから!」
「いやまあ……そもそも、クラスでの自己紹介なんて気にする人がいるのか??」
「みんなだよ!」
「へえ、そうなんだ……なんで?」
「なんでって……」本当にそんなこと聞いている、という表情で彼女は言った。
だって、クラスの自己紹介だぞ。知る必要もない名前がたくさん出てくる。それなら、なんで聞かなくちゃいけないの?
「ごめん、お前のことは覚えてるんだ……けど、名前まではその……」
「モウ、私の名前は清水遙。冬花くんが忘れないように紙に書いておくかな」
「いいねそれ。書き終わったら胸ポケットの上に貼っておけな」
「ただの名札じゃないか!? 私の名前を覚えたくないだけでしょう冬花くん!」
「ふふふ、仲良くやってるね二人とも」
やがて、俺たちは昼飯をする場所に到着したみたい。
しかし、そこは食堂ではなかった。少なくとも俺にとっては。
「ここ、食堂でじゃない……」中に入ってすぐの俺のコメントだった。
「ああ、冬花くんは学園の中等部から来たんじゃないんだ。ここ花咲には、一般の食堂も含め、たくさんのカフェテリアがあるんだ。ここはその中でも小さい方よ」
「うーん……いいね、ここ」
俺らがいるカフェテリアは、その辺のモダンなカフェに似ている。店内の雰囲気は、いつもの賑やかであふれている昼休みとはまったく違う。ここならゆっくりできる。
注文を済ませ、俺たちは隅の席を確保した。
「二人は普段、こういうところで昼飯を食べるのか?」
「そうね。昼休みくらいは落ち着いて食べたいから」
まあ、二人とも人気だからな。冬花だけでも、人が多いと静かな昼休みを過ごすのは難しいだろう。
「うーん……冬花さんはわかるけど、清水さんは……」
「ちょっとそれ、どういうこと!? 会ったばかりなのに、なんで冬花くんはそんなに酷いの!?」
清水のことは本当に覚えている。彼女は冬花の親友で、以前あの件でも俺を助けてくれた。彼女は活発で、こういう冗談に付き合ってくれるほど面倒見がいい。外向的な人の理想的な例だ。
まあ……名前を覚えていなかったのは事実ですけど。
「さて……本題に入ろうか」昼飯を食べ終わると、清水が俺たち二人の方を見た。
「ん? 本題?」
「モウ、とぼけちゃって……さっきのことだよ冬花くん。春凪は今まで数え切れないほど連絡先を聞かれたけど、率先して聞いたのは初めてだよ!」
「ふふっ、だから遙言った通りよ。あれは冬花くんの連絡先を聞くため。それだけよ」
「へー……でも、なんで春凪がいきなり冬花くんをご馳走するの? 冬花くん、春凪に何かしたの?」
「あぁ……それは……」
どうしようこれ……昨日のことは誰にも知られないように彼女を助けたんだ。なら、ここは嘘をつく必要がある。
(でもどうやって……)
チラッと冬花に助けを求めると、彼女はそれを察したようだった。私に任せて、とでも言いたげな微笑みで。
そして、彼女はさりげなくこう言った――
「それがね、ハルカ……実は私、冬花くんにお世話になったの…………彼の家に」
「「えっ!?」」 清水とともに俺も、彼女の言葉に驚いた。




