第24章:見慣れない場所
皆さん、お久しぶりです。
しばらく更新できず、本当に申し訳ありません。
最近は色々と忙しくしていました。
教師という仕事は、思っていた以上に大変ですねwww
それでも、少しずつですが執筆は続けています。
これからも自分のペースで頑張っていきますので、引き続き読んでいただけたら嬉しいです。
いつもありがとうございます。
sylviemains
――ヴェルリン視点――
近くで見る集落は、思っていたより静かだった。
姿を現した後なら、もっと緊張感が漂うと思っていた。
警戒。
不信。
少なくとも、居心地の悪さくらいは。
……まあ、それも当然か。
そういう扱いには、もう慣れている。
子どもたちは何事もなかったかのように作業へ戻っていく。
アリスは再び記録と調査に没頭し、アラリックは私の存在など大して変わらないと言わんばかりに境界の補強を続けていた。
……奇妙だった。
私は空き地の端にある木の下へ腰を下ろし、集落を観察しながら思考を整理する。
いったい、何を報告すればいい?
人間の追放魔導士とその弟子が、山賊からエルフの子どもたちを救ったことか。
彼らが、デモンフォレストの内部で安定した拠点を築いていることか。
この周辺のミアズマが、アエルシリオンに記録されているどんな事例とも異なる振る舞いをしていることか。
どれも、信じがたい話だ。
だが――
私は実際に見てしまった。
思考は、近づいてくる足音によって遮られた。
顔を上げると、数人のエルフの子どもたちが立っていた。
警戒しつつも、好奇心を隠しきれていない。
その中から、ソレンが一歩前に出る。
「ヴェルさん」
慎重な呼びかけだった。
「何だ?」
「薪を集めてるんです」
ソレンは言った。
「運ぶの、手伝ってくれますか?」
その頼みは、予想外だった。
恐怖でもない。
疑いでもない。
ただ、助けを求める普通の声。
「……いいだろう」
少し間を置いてそう答えると、子どもたちはわずかに表情を明るくした。
そのまま私を連れ、境界付近へ向かっていく。
作業自体は単純だった。
薪運び。
物資整理。
尖らせた杭で外周柵を補強する。
正式な報告書に書く価値もないような、小さな仕事。
それなのに――
誰も、私を避けなかった。
子どもたちは普通に話しかけてくる。
ぎこちなくはあっても、怯えてはいない。
人間たちの態度も妙だった。
アリスは、天気の話でもするかのようにミアズマの流れについて質問してくる。
アラリックは、私がきちんと作業を終えたかどうかだけを見ていた。
誰も、嫌悪の目を向けない。
足元の影が揺れても、身を引く者はいない。
それが、敵意よりも落ち着かなかった。
その日の午後、私は再び子どもたちの訓練を観察した。
アラリックは基本姿勢を教え、
アリスは近くでマナ操作を見守っている。
内容は単純で、反復的だ。
だが、明確な意図がある。
無茶な魔力放出はさせない。
過剰な詠唱もない。
失敗しても罰を与えない。
私は、わずかに眉をひそめた。
エルフの魔法教育は、制御による規律を重視する。
子どもたちは、マナそのものを理解する前に、不安定さを抑え込むことを教え込まれる。
反動への恐怖は必要不可欠だとされていた。
だが、ここでは違う。
まず「感じること」を教えている。
形作る前に、マナを知る。
意思を押し付ける前に、流れを理解する。
それは、何十年も正しいとされてきた教義と矛盾していた。
それでも――機能している。
完璧ではない。
洗練されてもいない。
だが、自然だった。
ソレンが無理なく指先へマナを流しているのを見て、再びあの感覚が胸に戻る。
――不完全。
その言葉が、思考に残り続けていた。
アエルシリオンの教えは間違っていない。
だが、もしかすると――
不完全なのかもしれない。
夕暮れが森を覆い始める頃、私の視線は再びポータルへ向いた。
今なお、あれは不気味だった。
周囲のミアズマの流れが、正常ではない。
流れが内側へ曲がり、また外へ戻る。
まるで、地中で何かが呼吸しているように。
感覚は微弱だ。
だが――間違っている。
非常に、まずい。
そして、この集落に長く留まるほど、その違和感は強くなっていく。
私は目を細めた。
――お前は、一体何なんだ?
答えは返ってこない。
ただ、不安定な力の脈動だけが、夜気の底でかすかに揺れていた。
やがて、森は夜に沈む。
子どもたちはシェルターへ戻り、
アリスはランタンの灯りの下で記録を書き続ける。
アラリックは最後の巡回を終えて休息に入った。
そして私は、木々の下で目を閉じずにいた。
観察し。
考え続ける。
人生の大半で、人々は私を見るたび、まず危険を見た。
闇魔法使い。
影を操る者。
役には立つかもしれない。
だが、歓迎はされない。
それなのに――
世界でも最も危険な土地の一つに隠された、この粗末な集落では。
誰も、それを気にしていない。
私は木の幹に背を預け、静かに目を閉じた。
「……本当に、変な場所だな」
久しぶりに、私は迷っていた。
危険についてではない。
――自分の居場所について。
第24章 終




