表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/25

第22章:選択


――ヴェルリン視点――

ヴェルリンは、その場に留まり続けた。

数時間が過ぎ、やがて一日、さらにもう一日が経った。

同じ日課が、ほとんど退屈と言えるほどの規則性で繰り返される。

夜明けと共に動き出し、仕事は言い争うことなく分担される。

食事は質素だが十分。

巡回は一定の間隔で行われ、重複はなく、死角もない。

人数の少なさを考えれば、異様なほど効率的だった。

――効率が良すぎる。

ヴェルリンは、そのリズムを記憶に刻み込んだ。

シェルター同士の距離。

巡回交代の時間。

子どもたちが常に把握され、見失われることがないこと。

動きに無駄がない。

混乱が存在しない。

それが、彼を不安にさせた。

どうして子どもたちは、ほとんど知らない人間たちを信頼できるのか。

自分たちの家族は、人間によって殺されたというのに。

その疑問は、重く、答えの出ないまま胸に残った。

どうすべきか判断できず、ヴェルリンは選択肢を慎重に天秤にかける。

最初の選択肢は、あまりにも明確だった。

――人間を殺し、子どもたちを奪い、アエルシリオンへ連れ帰る。

だが、その考えはすぐに退けられた。

護衛の魔導士たちは熟練している。

圧倒的ではないが、規律があり――何より、互いを信頼している。

連携に綻びがない。

一人なら、倒せる。

だが、二人は無理だ。

仮に成功したとしても、彼自身が重傷を負うだろう。

その状態で、デモンフォレストの脅威から子どもたちを守ることはできない。

次の選択肢は、より安全だ。

撤退し、エルフ王廷へ戻る。

調査結果を報告し、評議会の判断に委ねる。

だが――

彼が離れている間に何かが起きたら。

魔物が現れたら。

子どもたちが失われたら。

ヴェルリンは、ゆっくりと息を吐いた。

その罪悪感を、彼は一生背負うことになるだろう。

残る選択肢は、一つ。

――接触する。

最も危険な選択だ。

一歩踏み出した瞬間、観察は終わる。

彼の存在そのものが、かろうじて保たれている均衡を乱す。

恐怖ではない。

不確かさが、彼をためらわせていた。

その時、空き地での動きが目に入った。

子どもたちが、再び集まっている。

人間の女性が、その中心に立っていた。

杖を手にしているが、命令している様子はない。

マナを無理に形作らせてもいない。

――感じさせているのだ。

ヴェルリンの身体が強張る。

それは、エルフが魔法を教える方法ではない。

マナは、甘やかすものではない。

形作り、抑え込み、規律を与えるものだ。

それが教義であり、法だった。

だが――

子どもたちは応えていた。

ゆっくりと。

慎重に。

負担もなく、反動もなく。

ヴェルリンの理解に、静かな亀裂が走る。

もし、この方法が機能するのなら――

自分たちの教えは、完全ではなかったということになる。

その事実は、彼が思っていた以上に重く胸に響いた。

――アラリック視点――

気配を感じた。

マナではない。

ミアズマでもない。

――存在感だ。

俺は振り返り、静かに声をかけた。

「アリス。見られている」

彼女は即座に反応する。

「マナ・ヴェール」

空気が揺らいだ。

一瞬、何も起きない。

だが次の瞬間、頭上の影が不自然に歪んだ。

枝の間から、一つの影が音もなく地面へと降り立つ。

褐色の肌。

銀の瞳。

――エルフだ。

武器を抜く様子はない。

逃げる気配もない。

……

敵意は感じられない。

だが――

こんな辺境に、なぜエルフが?

第22章 終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ