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第17章:これからどうするか


(ソレン視点)

もしここにいてくれたなら、母さん……父さん……

きっと驚くと思う。

僕たちは、まだ生きている。

ただ悪いことが起きるのを待つだけの「生きている」じゃない。

一日がちゃんと前に進んでいく、生き方だ。

アラリック様は、僕たちの居場所を作ってくれた。

それは、僕たちの村とは違う。

彫刻されたアーチも、歌う木もない。

でも、しっかりしていて、長く目を閉じても消えてしまいそうにない場所だ。

地面には、不思議な印や石が置かれていて、

アラリック様は「魔物はこれを越えるのを嫌がる」と言っている。

アリスねぇちゃんは、中の空気がきれいだと言った。

僕は信じている。

息を吸っても、胸があまり痛まないから。

水もある。

変な匂いのしない、澄んだ水だ。

アラリック様は、飲ませる前に必ず自分で確かめるけど、

アリスねぇちゃんは「大丈夫ですよ」と言って笑う。

その笑顔を見ると、本当に安全なんだと思える。

昨日、種を植えた。

穀物と、小さな果物。

アリスねぇちゃんは、土に優しく押し込むやり方を教えてくれた。

深すぎず、浅すぎず。

「植物は頑固だけど、優しさは分かるんです」と言っていた。

まだ芽は出ないって言われているけど、

僕は毎朝、必ず見に行く。

それだけで、明日がある気がする。

森は、まだ危険だ。

それは分かっている。

でも、前みたいに、ずっと覆いかぶさってくる感じはしなくなった。

あの光る場所の近くを除けば。

低く唸るような音を立てる、石の噴水。

その周りの黒い霧は、少しだけ引いた。

前より離れた場所なら、目が痛くならずに立っていられる。

でも、アラリック様は、近づくなとはっきり言った。

アリスねぇちゃんも、あれが好きじゃない。

見つめるとき、いつも少し立ち止まって、

遠くの何かを聞いているみたいな顔をする。

風の向きがいいと、

あそこから、ほんのり温かさを感じることもある。

今は、毎日にリズムがある。

アラリック様は、「決まった流れが人を生かす」と言った。

朝は早い。

ときどき、早すぎるくらいだ。

でも、「森は夜明けにこちらを見る。だから、こちらも見るんだ」と言われた。

水を運ぶ。

地面を掃く。

境界の石を確かめる。

歩いていい場所はとても厳しく決められているけど、

理由をちゃんと教えてくれるから、言うことを聞ける。

そのあと、アリスねぇちゃんが朝ごはんを作る。

たいていは粥か、温かいもの。

みんなが座るまで、自分では食べない。

きっと、忘れているんだと思う。

それから、アラリック様が教えてくれる。

棒の持ち方。

森を「見る」んじゃなく、「聞く」こと。

怖がらずに、静かに動く方法。

怒鳴ることはない。

誰かが失敗しても、

「もう一回やってみよう」と言うだけだ。

昼は、あっという間に来る。

午後は、アリスねぇちゃんが魔法を教える。

とても小さなことだけ。

マナが動く感じ。

無理に押し出さないこと。

うまくいかなくて泣きそうになる子もいるけど、

アリスねぇちゃんは、いつも落ち着いている。

「魔法は、落ち着いている人の言うことをよく聞くんです」と言う。

僕は、それを覚えている。

夕食は、静かだ。

そのころには、みんな疲れている。

そのあとは、寝るまで自由。

小さい子たちは話したり、簡単な遊びをしたりする。

ただ火を見つめている子もいる。

僕は、木を見て、

まだ言葉にならないことを考えるのが好きだ。

アラリック様は、

「ここでは、自由だ」と言った。

その意味は、まだ全部は分からない。

でも――

誰かが来て、「お前たちはここにいない方がいい」と言わない、

それが自由なんだと思う。

夜になると、ときどき、

あの光る場所の近くで音がする。

大きな音じゃない。

聞かれたくない足音みたいな、そんな音。

アリスねぇちゃんも聞いている。

同じ方向を見るから、分かる。

アラリック様は、まだ何も言わない。

きっと、分かっているんだと思う。

この場所が、ずっと安全でありますように。

もし母さんと父さんがいたら、

きっとアラリック様を信じると思う。

きっと、アリスねぇちゃんも好きになる。

僕は、勇気を出している。

どうか、見守っていてください。

第17章 終

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