第15章:決断
熟考を終えた後、俺は皆を呼び集めた。
子どもたちはいつものように先に集まり、互いに寄り添って座った。誰かの袖を握りしめる子もいれば、これから何が告げられるのか分からず、落ち着かなく身じろぎする子もいる。
アリスは俺の隣に立ち、静かに、そして注意深く見守りながら、俺が話すための場を自然と作ってくれていた。
「聞きたいことがある」
俺は威圧しないよう、少し腰を落として言った。
「正直に答えてほしい」
子どもたちの視線が、一斉にこちらを向く。
「君たちをエルフ領へ送り届けることはできる」
俺は続けた。
「簡単じゃないし、安全とも言えない……だが、それを望むなら、俺は全力でやる」
しばし、誰も口を開かなかった。
森を渡る風が木々を揺らし、かすかなミアズマの匂いを運んでくる。
子どもたちは互いに視線を交わし、その提案を噛みしめるように考えていた。
やがて、ソレンが一歩前に出た。
「ありがとうございます」
彼はぎこちなく頭を下げた。教えられた動作なのだろう。
「でも……あちらには、もう誰もいません」
他の子どもたちも、次々とうなずく。
「両親はもう……」
一人の少女が小さく言った。
「親戚も、みんな……」
「村がどこにあったのかも分からない」
別の子が続ける。
「全部、焼けちゃったから」
重たい沈黙が場を包んだ。
「それに……」
ソレンは一瞬ためらい、それからアリスの方を見た。
「……ここに、いたいです」
アリスは驚いたように瞬きをする。
「助けてくれました」
ソレンは続けた。
「二人とも。ここは……」
彼はキャンプを見回す。シェルター、焚き火、そして遠くに淡く光るあの場所。
「……ここは、どこよりも安全に感じます」
胸の奥が、きゅっと締め付けられるのを感じた。
「分かった」
少し間を置いて、俺は言った。
「正直に話してくれて、ありがとう」
俺は背筋を伸ばし、ゆっくりと息を吸う。
「――決めた」
全員が静まり返る。
「俺たちは、ここに住む」
俺ははっきりと宣言した。
「デモンフォレストでだ」
小さなどよめきが起こり、驚いた声がささやきとなって広がる。
「賢い選択とは言えないかもしれない」
俺は続けた。
「だが、ここでは自由だ。従うべき王国も、価値を決める国境もない。
どんな危険が待っていようと、俺たちは自分たちのやり方で立ち向かう」
子どもたちは互いを見つめ合い――
そして、ゆっくりとうなずいた。
アリスが、柔らかく微笑む。
「それなら」
彼女は軽いが芯のある声で言った。
「腰を据える前に、この辺りをきちんと調べたいですね。土地の状態、マナの流れ……ミアズマの挙動も、どこかおかしいですし」
「同感だ」
俺はうなずいた。
「ここを家にするなら、まず理解しないとな」
緊張が解け、静かな話し声が戻ってくる。
小さな期待、控えめな笑い声、畑やシェルター、森を安全に抜ける道についてのひそひそ話。
反対する者はいなかった。
異を唱える者もいなかった。
――不思議と、自然だった。
まるで、この決断は口に出すずっと前から決まっていたかのように。
「ありがとう」
俺は皆に届くよう、少し声を張った。
「どんな困難が待っていようと、俺たちは一緒に乗り越える」
人々がそれぞれ散っていくのを、俺はしばらく立ったまま見送った。
ここは危険だ。
だが――
今は、俺たちの場所だ。
第15章 終




