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『サボりの美学は雪杉さんに学べ』  作者: 白隅 みえい
第8章:それでも働く理由
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Lesson38「ご褒美ランチと嫉妬」

Lesson38「ご褒美ランチと嫉妬」


金曜日の午前中、タカギコーポレーションのプレゼン成功を受けて、本山課長から嬉しい発表があった。


「皆さん、今回のプレゼン成功を記念して、会社からランチ代が支給されます」


「本当ですか?」蓮見さんが目を輝かせる。


「はい。お疲れ様でした。今日のランチはゆっくり楽しんでください」


僕たちは顔を見合わせて喜んだ。会社からのランチ代支給なんて、滅多にないことだ。


「どこに行きましょうか?」佐々木が提案する。


「あの新しくできたイタリアンレストランはどうですか?」蓮見さんが候補を出す。


「いいですね。碓氷さんと雪杉さんはどうですか?」


「私は筋肉に良いメニューがあるところなら」碓氷さんが条件を出す。


「私は...」雪杉さんが少し考える。「だしが美味しいところがあればいいんですが」


「イタリアンでだし?」佐々木が首をかしげる。


「コンソメスープがあれば大丈夫です」雪杉さんがにっこり笑う。


12時になると、僕たちは港区の新しいイタリアンレストラン「ベッラヴィスタ」に向かった。平日のランチタイムということもあって、店内は多くのビジネスマンで賑わっている。


「いらっしゃいませ。5名様ですね」


ウェイターが僕たちを窓際の席に案内してくれた。港区の街並みが見える、なかなか良いロケーションだ。


「わあ、景色がいいですね」雪杉さんが外を眺めている。


「確かに。こういう席でランチなんて、普段はなかなかないですよね」


僕がメニューを開くと、なかなか本格的なイタリア料理が並んでいる。


「どれも美味しそうですね」蓮見さんがメニューを見ながら言う。


「私はサラダボウルにします」碓氷さんが迷わず決める。「タンパク質豊富で、筋肉に最適です」


「僕はカルボナーラかな」佐々木が選ぶ。


「私はペスカトーレにします」蓮見さんも決まった。


「雪杉さんはどうしますか?」


「えーと...」雪杉さんがメニューを真剣に見ている。「ミネストローネとフォカッチャでお願いします」


(やっぱりスープ系を選ぶんだな)


「上村さんは?」


「僕はボロネーゼにします」


注文を済ませると、僕たちは今回のプレゼン成功について話し始めた。


「本当にお疲れ様でした」蓮見さんが乾杯の音頭を取る。


「乾杯!」


僕たちはグラスを合わせた。


「しかし、あの徹夜作業は大変でしたね」佐々木が振り返る。


「でも雪杉さんのだしスープがあったから乗り切れました」僕が感謝を込めて言う。


「本当にそうです」碓氷さんも同意する。「あのスープ、栄養学的にも完璧でした」


雪杉さんが照れくさそうに笑う。


「皆さんのお役に立てて良かったです」


その時、蓮見さんが意味深な笑みを浮かべた。


「ところで、最近気になることがあるんですけど」


「何ですか?」


「上村さんと雪杉さん、すごく息が合ってますよね」


僕は慌ててコップの水を飲んだ。


「そ、そんなことないですよ」


「いえいえ、傍から見ていると明らかです」蓮見さんがニヤニヤしている。「特に、雪杉さんがサボってる時の上村さんのツッコミ、愛情込もってますよね」


「愛情って...」僕の顔が熱くなる。


「確かに」碓氷さんも乗ってくる。「恋愛ホルモンが分泌されてる時の表情をしてます」


「恋愛ホルモンって何ですか」


「ドーパミンとオキシトシンです。特に上村さん、雪杉さんを見てる時の瞳孔が拡がってます」


(瞳孔って、そんなところまで観察してるのか)


雪杉さんがきょとんとした顔をしている。


「愛情込もったツッコミって、どういうことですか?」


「あー、えーと...」僕は必死に言い訳を考える。


その時、佐々木が助け船を出してくれた。


「蓮見さん、あまりからかわない方がいいんじゃないですか」


「あら、佐々木くんは優しいのね」蓮見さんが佐々木を見つめる。


佐々木の頬が少し赤くなった。


「別に、そういう意味じゃ...」


「でも、そういう優しいところ、素敵だと思うわ」


今度は佐々木が慌て始めた。


「蓮見さん、それは...」


碓氷さんが興味深そうに二人を観察している。


「おや、佐々木さんの心拍数も上がってますね」


「心拍数まで分かるんですか?」雪杉さんが感心している。


「首の脈動で判断できます。恋愛時の心拍数は平常時の1.2倍になりますから」


(碓氷さんの観察力、恐るべしだ)


料理が運ばれてきて、一時的に話題が変わった。


「わあ、どれも美味しそうですね」


雪杉さんのミネストローネは野菜がたっぷり入って、確かに美味しそうだ。


「雪杉さん、そのスープはどうですか?」僕が尋ねる。


「すごく美味しいです」雪杉さんが嬉しそうに答える。「トマトベースですが、野菜のだしがよく出てます」


「さすが、だしのプロですね」


「プロっていうほどじゃないですが...」雪杉さんがクスクス笑う。


その様子を見ていた蓮見さんが、またニヤニヤし始めた。


「ほら、また始まった」


「何がですか?」


「上村さんと雪杉さんの、ほのぼのトーク」


僕は慌てて話題を変えようとした。


「蓮見さんのペスカトーレはどうですか?」


「美味しいわよ。でも、それより気になることがあるの」


「気になること?」


「最近、佐々木くんが優しくなったなって」


今度は佐々木に矛先が向いた。


「優しくなったって、僕は元々...」


「前はもっとクールだったのに、最近は気遣いが細やかになったわ」


蓮見さんが佐々木を見つめながら言う。


「例えば、昨日の徹夜作業の時も、私が疲れてるの気づいて肩揉みしてくれたし」


「あれは、その...」佐々木がモゴモゴする。


「嬉しかったわ」


蓮見さんのその一言で、佐々木の顔が真っ赤になった。


碓氷さんが手を叩く。


「素晴らしい!これは完全に相思相愛のパターンですね」


「相思相愛って...」佐々木が慌てる。


「筋肉は嘘をつきません。お二人とも、恋愛時の筋肉の動きをしてます」


(碓氷さん、どこまで分析してるんだ)


雪杉さんが純粋な好奇心で尋ねる。


「恋愛時の筋肉の動きって、どういうものですか?」


「表情筋の緊張、姿勢の変化、手の動きの増加などです」碓氷さんが解説する。「特に、相手を見る時の首の角度に特徴があります」


「へえ、面白いですね」


雪杉さんが興味深そうにうなずく。


その時、蓮見さんが爆弾発言をした。


「じゃあ、上村さんと雪杉さんも分析してもらいましょうか」


「え?」僕と雪杉さんが同時に声を上げる。


「ダメです」僕が慌てて止める。


「どうして?」蓮見さんがにっこり笑う。「気になりませんか?」


「気になりません」


でも実際は、とても気になっていた。雪杉さんが僕のことをどう思っているのか、碓氷さんの分析で分かるかもしれない。


「雪杉さんはどう思います?」蓮見さんが雪杉さんに振る。


「えーと...」雪杉さんが困ったような顔をする。「よく分からないですが、面白そうですね」


(面白そうって、どういう意味だ)


碓氷さんが乗り気になってきた。


「では、簡単な観察をしてみましょうか」


「やめてください」僕が必死に止める。


でも碓氷さんは既に観察モードに入っていた。


「まず、上村さんの姿勢ですが...」


「聞きたくないです」


「雪杉さんの方を向く角度が、通常より15度傾いてます」


「15度って、そんな細かく測らないでください」


「そして雪杉さんの方は...」


「やめて」


「上村さんの話をする時の表情筋の動きが、明らかに好意的な反応を示してます」


僕と雪杉さんは顔を見合わせた。


「表情筋の動きって...」雪杉さんが首をかしげる。


「つまり、上村さんの話をする時、雪杉さんは無意識に微笑んでるんです」


雪杉さんの頬が少し赤くなった。


「微笑んでる...私、そんなことしてますか?」


「はい。特に上村さんが雪杉さんを心配してる話をする時、顕著に現れます」


(碓氷さん、そこまで見てるのか)


蓮見さんが手を叩いて喜ぶ。


「やっぱり!私の予想通りだわ」


「予想って何ですか?」


「上村さんと雪杉さん、絶対に両思いよ」


その発言に、僕と雪杉さんは同時に慌てた。


「両思いって...」


「そんな、まだ...」


でも僕たちの慌てぶりが、かえって蓮見さんと碓氷さんの確信を深めてしまった。


「この慌てぶりが何よりの証拠ね」蓮見さんがニヤニヤする。


「筋肉の反応も完璧です」碓氷さんも同意する。


佐々木が苦笑いしながら言う。


「みんな、あまりからかい過ぎない方がいいんじゃないですか」


「あら、佐々木くんは本当に優しいのね」蓮見さんが佐々木を見つめる。


「そんな風に見つめられると...」佐々木がまた慌て始める。


結局、ランチタイムは僕たちのからかいと、佐々木と蓮見さんの微妙な空気で終始した。


「ごちそうさまでした」


レストランを出る時、雪杉さんが僕に話しかけてきた。


「上村さん」


「はい?」


「さっきの話、気にしてますか?」


「どの話ですか?」


「蓮見さんと碓氷さんの分析の話です」


僕は少し考えてから答えた。


「正直、気になります」


「私も気になります」雪杉さんが小さな声で言う。


「どの部分が?」


「上村さんが私のことを心配してくれてるって部分です」


雪杉さんが立ち止まって、僕を見つめる。


「本当ですか?」


「本当です」僕は正直に答えた。「雪杉さんのことが気になって仕方ないんです」


「気になるって...」


「心配になるし、楽しそうにしてると僕も嬉しくなるし」


雪杉さんの頬がさらに赤くなった。


「私も、上村さんのことが気になってます」


「本当ですか?」


「はい。上村さんがツッコんでくれると安心するし、一緒にいると楽しいです」


僕たちは歩道の真ん中で立ち止まって、見つめ合っていた。


その時、後ろから声がした。


「あら、何してるの?」


振り返ると、蓮見さんと碓氷さんが追いついてきていた。


「まさか、告白?」蓮見さんが目を輝かせる。


「告白じゃないです」僕が慌てて否定する。


「でも、すごくいい雰囲気だったわよ」


碓氷さんも同意する。


「お二人の距離、30センチでした。これは親密な関係を示す距離です」


(30センチって、そんなに近かったのか)


佐々木も追いついてきて、状況を把握すると苦笑いした。


「みんな、そろそろ会社に戻りませんか?」


午後の業務が始まると、僕は昼休みの出来事を思い返していた。


雪杉さんの「気になってます」という言葉が、頭の中をぐるぐると回る。


(これって、脈ありってことなのか?)


でも、雪杉さんの「気になる」は、僕の「気になる」と同じ意味なのだろうか。


その時、雪杉さんが僕のデスクに近づいてきた。


「上村さん、お疲れ様です」


「お疲れ様です」


「さっきのランチ、楽しかったですね」


「そうですね。でも、からかわれましたね」


「でも、嫌じゃなかったです」雪杉さんが小さな声で言う。


「僕も嫌じゃなかったです」


雪杉さんが微笑む。


「また、みんなでランチしましょうね」


「はい」


雪杉さんが自分の席に戻っていく後ろ姿を見ながら、僕は碓氷さんの分析を思い出していた。


確かに、雪杉さんは僕の話をする時に微笑んでいる。


そして僕も、雪杉さんの方を見る時間が長くなっている気がする。


(これって、本当に両思いなのか?)


夕方、定時になると、蓮見さんが僕に話しかけてきた。


「上村さん、今日はどうでした?」


「どうって、何がですか?」


「雪杉さんとの進展よ」


僕は苦笑いした。


「蓮見さん、からかい過ぎですよ」


「からかってるんじゃなくて、応援してるの」


「応援?」


「だって、お似合いだもの」


蓮見さんがウィンクする。


「蓮見さんこそ、佐々木とどうなんですか?」


「え?」蓮見さんが慌てる。


「今日のランチ、明らかに意識してましたよね」


「そ、そんなことないわよ」


でも蓮見さんの頬が赤くなっている。


僕たちは互いに牽制し合いながら、それぞれの恋心と向き合っていた。


サボりの美学は雪杉さんに学べ。


――雪杉「からかわれても嫌じゃない気持ち、それが答えかもしれない」


#オフィスラブコメ #社会人 #ラブコメ #現代 #星形にんじん


※この話は全てフィクションであり、実在の人物や団体などとは一切、関係ありません。


※AI補助執筆(作者校正済)


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