Lesson30「だし切れパニック」
Lesson30「港区夜景と告白未遂」
だし切れパニックから一週間後の金曜日。僕は占い師の言葉を思い出しながら、カレンダーを見つめていた。
「今月中に行動を起こさないと、運気が下がる」
もう残り5日しかない。
「上村さん、どうかしましたか?」
雪杉さんがいつものように煮干しだしマグカップを持って現れた。給湯器修理後、彼女の日常は完全に戻っている。
「いえ、ちょっと考え事を……」
「そうですか? なんだか深刻そうなお顔でしたが……」
雪杉さんが心配そうに僕を見る。
「あの、雪杉さん」
「はい?」
「今日、お時間ありますか?」
「今日ですか? はい、大丈夫です」
「よろしければ、一緒に夕食でも……」
「夕食?」雪杉さんの顔がパッと明るくなった。「嬉しいです。ぜひお願いします」
「では、定時後に……」
「はい。楽しみにしてます」
今日こそは、絶対に告白しよう。そう決心した。
定時になると、雪杉さんが僕のデスクにやってきた。
「上村さん、準備できました」
「ありがとうございます。行きましょう」
僕たちは港区の夜景が見える展望レストランに向かった。
「わあ、素敵なお店ですね」
テーブルから見える夜景に、雪杉さんが感動している。
「東京タワーも見えますね」
「はい。きれいでしょう?」
「とても」雪杉さんが嬉しそうに微笑む。
料理を注文して、僕たちは夜景を眺めながら話していた。
「上村さん、今日はどうしたんですか?」
「どうしたって?」
「こんな素敵なお店に誘ってくれて……何か特別な日でしたっけ?」
雪杉さんが首をかしげる。
「特別な日……というか……」
僕が言いかけた時、料理が運ばれてきた。
「お料理が来ましたね」
「そうですね」
僕たちは食事を始めた。でも、僕は告白のことばかり考えていて、料理の味がよく分からない。
「上村さん、大丈夫ですか? あまり召し上がってないようですが……」
「あ、はい。美味しいです」
「でも、なんだか緊張してるみたいですね」
雪杉さんの観察力は鋭い。
「そうですね……少し……」
「どうしてですか?」
雪杉さんが心配そうに僕を見つめる。
「実は……」
今度こそ、告白しよう。
「実は、雪杉さんに話したいことがあって……」
「話したいこと?」
「はい。とても大切な話です」
雪杉さんの表情が真剣になった。
「はい、聞きます」
僕は深呼吸をして、言葉を選んだ。
「雪杉さん、僕は……」
その時、隣のテーブルから大きな笑い声が聞こえてきた。
「あはははは!」
僕たちの会話が中断されてしまう。
「すみません、少し騒がしいですね……」
「いえ、大丈夫です」
でも、雰囲気が台無しになってしまった。
「あの、続きを……」雪杉さんが促してくれる。
「そうですね……」
僕は再び深呼吸をした。
「雪杉さん、僕にとって雪杉さんは……」
また隣のテーブルから、今度は大きな拍手が聞こえてきた。
パチパチパチ!
どうやら、誕生日のお祝いをしているらしい。
「おめでとうございます〜」
「ありがとう〜」
完全に集中できない状況になってしまった。
「上村さん、別の場所に移りませんか?」
雪杉さんが提案してくれた。
「そうですね」
僕たちは会計を済ませて、レストランを出た。
「どこか静かな場所を……」
「港区には展望スポットがありますよね?」
「ああ、世界貿易センタービルの展望台ですね」
「そこに行ってみませんか?」
「いいですね」
僕たちは展望台に向かった。
夜の展望台は、思ったより人が少なくて静かだった。
「きれいですね……」
東京の夜景が一望できる。雪杉さんが感動している。
「はい。ここなら静かに話せますね」
「そうですね」
僕たちは手すりに寄りかかって、夜景を眺めていた。
「上村さん、さっきの続きをお聞きしたいです」
「ああ、はい……」
今度こそ、告白しよう。
「雪杉さん、僕にとって雪杉さんは……」
「はい……」
雪杉さんが真剣に僕を見つめている。
「とても大切な人です」
「大切な人……」
「はい。最初は、ちょっと変わった同僚だと思ってました」
雪杉さんがクスッと笑う。
「でも、一緒に過ごしているうちに……」
「うちに?」
「雪杉さんの優しさや、一生懸命さや、前向きさに……」
僕の心臓がドキドキしてくる。
「惹かれるようになったんです」
「惹かれる……」
雪杉さんの頬が少し赤くなった。
「雪杉さん、僕は……」
その時、展望台のスピーカーから突然アナウンスが流れた。
「お客様にお知らせいたします。本日の営業は22時で終了いたします。お帰りの際は、お気をつけてお帰りください」
時計を見ると、21時50分だった。
「もう終了時間ですね……」
「そうですね……」
またしても、告白が中断されてしまった。
「上村さん、続きは……」
「ああ、はい……でも、ここは閉まってしまうので……」
僕たちは展望台を出た。
駅に向かう道で、雪杉さんが言った。
「上村さん、今日はありがとうございました」
「いえ、僕の方こそ」
「とても楽しかったです」
「よかったです」
「それと……」雪杉さんが立ち止まる。
「はい?」
「さっきの話、とても嬉しかったです」
「嬉しかった?」
「はい。上村さんにとって大切な人だって言ってもらえて……」
雪杉さんが照れながら続ける。
「私も、上村さんのことを大切に思ってます」
その言葉に、僕の胸が熱くなった。
「雪杉さん……」
「はい?」
「実は、まだ話の続きがあるんです」
「続き?」
「はい。今度、もう少し静かな場所で……」
雪杉さんが微笑む。
「楽しみにしてます」
電車で、僕たちは隣に座っていた。
「上村さん」
「はい?」
「今日みたいな時間、もっと過ごしたいです」
「僕もです」
「また今度、一緒にお食事しませんか?」
「ぜひお願いします」
雪杉さんが嬉しそうに微笑む。
「でも、次は邪魔が入らない場所にしましょうね」
「そうですね」
僕も笑った。でも、内心では焦っていた。
占いの期限まで、あと4日しかない。
翌日の土曜日、僕は一人で港区を歩いていた。
今度こそ、確実に告白できる場所を探すためだ。
「静かで、邪魔が入らなくて、雰囲気の良い場所……」
色々な場所を見て回ったが、なかなか完璧な場所が見つからない。
カフェは他のお客さんがいるし、公園は人通りが多い。
「どこかいい場所はないかな……」
そんな時、僕のスマホに雪杉さんからメッセージが届いた。
『上村さん、お疲れ様です。昨日はありがとうございました』
『こちらこそ、ありがとうございました』
『今度はいつにしましょうか?』
『そうですね……』
僕は返事に迷った。まだ完璧な場所が見つかっていない。
『来週の平日はいかがですか?』
『いいですね。楽しみにしてます♡』
ハートマークが来た。これは、雪杉さんも僕のことを……
『僕も楽しみです♡』
僕もハートマークで返した。
月曜日、オフィスで雪杉さんに会った。
「おはようございます」
「おはようございます」
お互い、少し照れている。
「週末はいかがでしたか?」雪杉さんが聞く。
「散歩したりしてました。雪杉さんは?」
「ヨガと、だし作りと……」雪杉さんが微笑む。「金曜日のことを思い出してました」
「僕もです」
「続きのお話、楽しみにしてますよ」
雪杉さんの言葉に、僕は改めて決意を固めた。
今週中には、必ず告白しよう。
占いの期限は、もう3日しかない。
そんな時、碓氷係長がやってきた。
「おはようございます。お二人とも、いい雰囲気ですね」
「係長、おはようございます」
「何かいいことでもありました?」
係長がニヤニヤしている。
「いえ、特には……」
「そうですか? でも、お二人の筋肉の状態を見ると……」
(また筋肉で判断するのか……)
「恋愛ホルモンが出てますね」
「恋愛ホルモン?」
「はい。ドーパミンとかセロトニンとか」
係長が専門家っぽく説明する。
「特に雪杉さんは、顔の筋肉がリラックスしてます。これは幸福感の表れです」
雪杉さんが頬を染める。
「上村君も、背筋がピンと伸びてます。これは意欲の表れですね」
(係長の観察力、恐るべし……)
「何か進展がありそうですね」
係長がウインクして去っていく。
「係長……」
「でも」雪杉さんが小声で言う。
「当たってるかもしれませんね」
「え?」
「幸福感……確かに感じてます」
雪杉さんがはにかむ。
その笑顔を見て、僕は改めて思った。
絶対に、今週中に告白しよう。
雪杉さんを幸せにしたい。
そして、僕も幸せになりたい。
サボりの美学は雪杉さんに学べ。
――夜景が見つめる、揺れる心。
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※この話は全てフィクションであり、実在の人物や団体などとは一切、関係ありません。
※AI補助執筆(作者校正済)




