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『サボりの美学は雪杉さんに学べ』  作者: 白隅 みえい
第6章:運命のズレ幅
30/31

Lesson30「だし切れパニック」

Lesson30「港区夜景と告白未遂」


だし切れパニックから一週間後の金曜日。僕は占い師の言葉を思い出しながら、カレンダーを見つめていた。


「今月中に行動を起こさないと、運気が下がる」


もう残り5日しかない。


「上村さん、どうかしましたか?」


雪杉さんがいつものように煮干しだしマグカップを持って現れた。給湯器修理後、彼女の日常は完全に戻っている。


「いえ、ちょっと考え事を……」


「そうですか? なんだか深刻そうなお顔でしたが……」


雪杉さんが心配そうに僕を見る。


「あの、雪杉さん」


「はい?」


「今日、お時間ありますか?」


「今日ですか? はい、大丈夫です」


「よろしければ、一緒に夕食でも……」


「夕食?」雪杉さんの顔がパッと明るくなった。「嬉しいです。ぜひお願いします」


「では、定時後に……」


「はい。楽しみにしてます」


今日こそは、絶対に告白しよう。そう決心した。


定時になると、雪杉さんが僕のデスクにやってきた。


「上村さん、準備できました」


「ありがとうございます。行きましょう」


僕たちは港区の夜景が見える展望レストランに向かった。


「わあ、素敵なお店ですね」


テーブルから見える夜景に、雪杉さんが感動している。


「東京タワーも見えますね」


「はい。きれいでしょう?」


「とても」雪杉さんが嬉しそうに微笑む。


料理を注文して、僕たちは夜景を眺めながら話していた。


「上村さん、今日はどうしたんですか?」


「どうしたって?」


「こんな素敵なお店に誘ってくれて……何か特別な日でしたっけ?」


雪杉さんが首をかしげる。


「特別な日……というか……」


僕が言いかけた時、料理が運ばれてきた。


「お料理が来ましたね」


「そうですね」


僕たちは食事を始めた。でも、僕は告白のことばかり考えていて、料理の味がよく分からない。


「上村さん、大丈夫ですか? あまり召し上がってないようですが……」


「あ、はい。美味しいです」


「でも、なんだか緊張してるみたいですね」


雪杉さんの観察力は鋭い。


「そうですね……少し……」


「どうしてですか?」


雪杉さんが心配そうに僕を見つめる。


「実は……」


今度こそ、告白しよう。


「実は、雪杉さんに話したいことがあって……」


「話したいこと?」


「はい。とても大切な話です」


雪杉さんの表情が真剣になった。


「はい、聞きます」


僕は深呼吸をして、言葉を選んだ。


「雪杉さん、僕は……」


その時、隣のテーブルから大きな笑い声が聞こえてきた。


「あはははは!」


僕たちの会話が中断されてしまう。


「すみません、少し騒がしいですね……」


「いえ、大丈夫です」


でも、雰囲気が台無しになってしまった。


「あの、続きを……」雪杉さんが促してくれる。


「そうですね……」


僕は再び深呼吸をした。


「雪杉さん、僕にとって雪杉さんは……」


また隣のテーブルから、今度は大きな拍手が聞こえてきた。


パチパチパチ!


どうやら、誕生日のお祝いをしているらしい。


「おめでとうございます〜」


「ありがとう〜」


完全に集中できない状況になってしまった。


「上村さん、別の場所に移りませんか?」


雪杉さんが提案してくれた。


「そうですね」


僕たちは会計を済ませて、レストランを出た。


「どこか静かな場所を……」


「港区には展望スポットがありますよね?」


「ああ、世界貿易センタービルの展望台ですね」


「そこに行ってみませんか?」


「いいですね」


僕たちは展望台に向かった。


夜の展望台は、思ったより人が少なくて静かだった。


「きれいですね……」


東京の夜景が一望できる。雪杉さんが感動している。


「はい。ここなら静かに話せますね」


「そうですね」


僕たちは手すりに寄りかかって、夜景を眺めていた。


「上村さん、さっきの続きをお聞きしたいです」


「ああ、はい……」


今度こそ、告白しよう。


「雪杉さん、僕にとって雪杉さんは……」


「はい……」


雪杉さんが真剣に僕を見つめている。


「とても大切な人です」


「大切な人……」


「はい。最初は、ちょっと変わった同僚だと思ってました」


雪杉さんがクスッと笑う。


「でも、一緒に過ごしているうちに……」


「うちに?」


「雪杉さんの優しさや、一生懸命さや、前向きさに……」


僕の心臓がドキドキしてくる。


「惹かれるようになったんです」


「惹かれる……」


雪杉さんの頬が少し赤くなった。


「雪杉さん、僕は……」


その時、展望台のスピーカーから突然アナウンスが流れた。


「お客様にお知らせいたします。本日の営業は22時で終了いたします。お帰りの際は、お気をつけてお帰りください」


時計を見ると、21時50分だった。


「もう終了時間ですね……」


「そうですね……」


またしても、告白が中断されてしまった。


「上村さん、続きは……」


「ああ、はい……でも、ここは閉まってしまうので……」


僕たちは展望台を出た。


駅に向かう道で、雪杉さんが言った。


「上村さん、今日はありがとうございました」


「いえ、僕の方こそ」


「とても楽しかったです」


「よかったです」


「それと……」雪杉さんが立ち止まる。


「はい?」


「さっきの話、とても嬉しかったです」


「嬉しかった?」


「はい。上村さんにとって大切な人だって言ってもらえて……」


雪杉さんが照れながら続ける。


「私も、上村さんのことを大切に思ってます」


その言葉に、僕の胸が熱くなった。


「雪杉さん……」


「はい?」


「実は、まだ話の続きがあるんです」


「続き?」


「はい。今度、もう少し静かな場所で……」


雪杉さんが微笑む。


「楽しみにしてます」


電車で、僕たちは隣に座っていた。


「上村さん」


「はい?」


「今日みたいな時間、もっと過ごしたいです」


「僕もです」


「また今度、一緒にお食事しませんか?」


「ぜひお願いします」


雪杉さんが嬉しそうに微笑む。


「でも、次は邪魔が入らない場所にしましょうね」


「そうですね」


僕も笑った。でも、内心では焦っていた。


占いの期限まで、あと4日しかない。


翌日の土曜日、僕は一人で港区を歩いていた。


今度こそ、確実に告白できる場所を探すためだ。


「静かで、邪魔が入らなくて、雰囲気の良い場所……」


色々な場所を見て回ったが、なかなか完璧な場所が見つからない。


カフェは他のお客さんがいるし、公園は人通りが多い。


「どこかいい場所はないかな……」


そんな時、僕のスマホに雪杉さんからメッセージが届いた。


『上村さん、お疲れ様です。昨日はありがとうございました』


『こちらこそ、ありがとうございました』


『今度はいつにしましょうか?』


『そうですね……』


僕は返事に迷った。まだ完璧な場所が見つかっていない。


『来週の平日はいかがですか?』


『いいですね。楽しみにしてます♡』


ハートマークが来た。これは、雪杉さんも僕のことを……


『僕も楽しみです♡』


僕もハートマークで返した。


月曜日、オフィスで雪杉さんに会った。


「おはようございます」


「おはようございます」


お互い、少し照れている。


「週末はいかがでしたか?」雪杉さんが聞く。


「散歩したりしてました。雪杉さんは?」


「ヨガと、だし作りと……」雪杉さんが微笑む。「金曜日のことを思い出してました」


「僕もです」


「続きのお話、楽しみにしてますよ」


雪杉さんの言葉に、僕は改めて決意を固めた。


今週中には、必ず告白しよう。


占いの期限は、もう3日しかない。


そんな時、碓氷係長がやってきた。


「おはようございます。お二人とも、いい雰囲気ですね」


「係長、おはようございます」


「何かいいことでもありました?」


係長がニヤニヤしている。


「いえ、特には……」


「そうですか? でも、お二人の筋肉の状態を見ると……」


(また筋肉で判断するのか……)


「恋愛ホルモンが出てますね」


「恋愛ホルモン?」


「はい。ドーパミンとかセロトニンとか」


係長が専門家っぽく説明する。


「特に雪杉さんは、顔の筋肉がリラックスしてます。これは幸福感の表れです」


雪杉さんが頬を染める。


「上村君も、背筋がピンと伸びてます。これは意欲の表れですね」


(係長の観察力、恐るべし……)


「何か進展がありそうですね」


係長がウインクして去っていく。


「係長……」


「でも」雪杉さんが小声で言う。


「当たってるかもしれませんね」


「え?」


「幸福感……確かに感じてます」


雪杉さんがはにかむ。


その笑顔を見て、僕は改めて思った。


絶対に、今週中に告白しよう。


雪杉さんを幸せにしたい。


そして、僕も幸せになりたい。


サボりの美学は雪杉さんに学べ。

――夜景が見つめる、揺れる心。


#オフィスラブコメ #社会人 #ラブコメ #現代 #星形にんじん


※この話は全てフィクションであり、実在の人物や団体などとは一切、関係ありません。


※AI補助執筆(作者校正済)


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