表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『サボりの美学は雪杉さんに学べ』  作者: 白隅 みえい
第6章:運命のズレ幅
28/31

Lesson28「占い再訪・凶のち大吉」

Lesson28「占い再訪・凶のち大吉」


星形にんじん大量生産事故から一週間後の火曜日。雪杉さんが朝からなんとなく元気がなかった。


「おはようございます」


いつものように煮干しだしマグカップを持って現れたが、声に覇気がない。


「おはようございます。どうかしましたか?」


「いえ……少し考え事していて……」


雪杉さんが浮かない顔をしている。


「何か悩み事ですか?」


「実は……」雪杉さんが恥ずかしそうに言う。「昨日、ネットで占いをやってみたんです」


「占い?」


「はい。恋愛運を調べてみたくて……」


恋愛運という言葉に、僕の心拍数が上がった。


「それで?」


「最悪でした……」雪杉さんがため息をつく。「恋愛運0%って出たんです」


「0%?」


「はい。『今月の恋愛成就可能性:0%。諦めて仕事に専念しましょう』って……」


確かに、それは凹む結果だ。


「でも、ネットの占いなんて当てにならないですよ」


「そうでしょうか……」雪杉さんが不安そうに呟く。「もしかしたら、本当に私には恋愛は向いてないのかも……」


「そんなことありません」僕が強く否定する。


「でも……」


「雪杉さん、もしそんなに気になるなら、ちゃんとした占い師さんに見てもらいませんか?」


「ちゃんとした占い師?」


「はい。以前行った星予堂とか」


雪杉さんの顔が少し明るくなった。


「そうですね……星予堂の先生なら、ちゃんと見てくれるかも……」


「今度の土曜日、一緒に行きませんか?」


「本当ですか?」


「はい。僕も、雪杉さんの本当の恋愛運が知りたいです」


雪杉さんが嬉しそうに微笑む。


「ありがとうございます。お願いします」


土曜日の午後、僕たちは久しぶりに星予堂を訪れた。


「いらっしゃいませ〜」


例の紫色のドレスを着た占い師さんが、相変わらずの大げさな口調で迎えてくれる。


「あら、前にいらした方々ですね〜」


「はい、覚えていてくださったんですね」


「もちろんですよ〜。あの時は素敵な展開でしたからね〜」


占い師さんがニヤニヤしている。


「今日はどのようなご相談でしょうか?」


「恋愛運を見ていただきたくて……」雪杉さんが切り出す。


「恋愛運? お二人の相性ではなく?」


「いえ、私個人の恋愛運です」


「なるほど〜。何か気になることでも?」


雪杉さんがネット占いの結果を説明すると、占い師さんが大げさに驚いた。


「0%ですって? とんでもない!」


「え?」


「そんなデタラメな占い、信じちゃだめですよ〜」


占い師さんが憤慨している。


「では、ちゃんと占ってみましょう」


占い師さんがタロットカードを取り出す。


「恋愛運を占うには、まず現在の状況を確認しないと」


カードをシャッフルしながら、占い師さんが質問してくる。


「雪杉さん、現在気になる方はいらっしゃいますか?」


雪杉さんが僕をチラッと見る。


「はい……います……」


「その方との関係は?」


「とても大切な……友人です……」


僕の心臓がドキドキする。


「なるほど〜。では、カードを引いてください」


雪杉さんがカードを一枚引く。


「出ました〜」


占い師さんがカードを見て、また大げさに驚く。


「これは……すごいカードが出ましたね〜」


「どんなカードですか?」


「『恋人』のカードです。しかも正位置」


「恋人?」


「はい。恋愛運としては最高のカードの一つです」


雪杉さんの顔がパッと明るくなった。


「本当ですか?」


「本当です〜。ネット占いの0%なんて、とんでもない間違いですね〜」


占い師さんが続ける。


「でも……」


「でも?」


「現在の状況はちょっと複雑みたいですね〜」


占い師さんが別のカードを引く。


「『正義』のカード……逆位置ですね〜」


「逆位置?」


「はい。これは『タイミングのズレ』を意味します」


タイミングのズレ……確かに、僕たちの関係にはズレがある気がする。


「どういうことでしょうか?」


「お二人の気持ちは通じ合っているのに、タイミングが合わない状況です」


占い師さんが僕の方を見る。


「上村さんも、カードを引いてみてください」


「僕も?」


「はい。お二人の運勢は密接に関わってますから」


僕もカードを一枚引いた。


「おお〜」占い師さんが感嘆する。


「『愚者』のカード……正位置ですね〜」


「愚者?」


「これは悪いカードではありませんよ〜。新しい始まり、純粋な気持ちを表します」


「新しい始まり……」


「はい。上村さんには、勇気を出して一歩踏み出すことが必要ですね〜」


占い師さんの言葉が胸に響く。


「つまり……」


「つまり」占い師さんが声を大きくする。「雪杉さんの恋愛運は最高潮! ただし、タイミングを逃すと運気が下がってしまいます」


「タイミングを逃すと?」


「はい。『正義』逆位置の意味は、決断の遅れによる機会損失です」


占い師さんが真剣な顔になる。


「今月中に行動を起こさないと、せっかくの運気が離れていってしまいます」


「今月中……」


「はい。特に」占い師さんが最後のカードを引く。


「『星』のカード! これは希望と願いの成就を表します」


「希望?」


「そうです〜。お二人の願いは必ず叶います。ただし……」


「ただし?」


「勇気を出して、正直な気持ちを伝えることが条件です」


占い師さんが僕たちを見回す。


「特に上村さん。あなたが行動を起こすことで、全てが良い方向に向かいます」


僕の顔が熱くなった。


「分かりました……」


占い結果を聞いて、星予堂を出た僕たちは、近くのカフェで一息ついていた。


「すごい結果でしたね」雪杉さんが嬉しそうに言う。


「そうですね。恋愛運最高潮だって」


「ネット占いの0%は何だったんでしょうね」


「きっと、間違いだったんですよ」


雪杉さんがホッとした表情を見せる。


「でも」雪杉さんが少し心配そうに言う。「タイミングのズレって、どういう意味でしょうか?」


「さあ……よく分かりませんが……」


でも、僕には心当たりがあった。僕がなかなか告白できずにいることが、タイミングのズレなのかもしれない。


「あと」雪杉さんが続ける。「上村さんが勇気を出すって言ってましたね」


「はい……」


「何の勇気でしょうね?」


雪杉さんが不思議そうに首をかしげる。その無邪気な表情を見ていると、僕はますます告白したい気持ちが高まってきた。


「雪杉さん」


「はい?」


「実は……」


言いかけた時、僕のスマホが鳴った。


「あ、すみません……」


碓氷係長からの電話だった。


「もしもし?」


「上村君、今どこ? 緊急事態だ」


「緊急事態?」


「筋膜リリースガンが壊れた。明日のプレゼンで使う予定だったのに……」


「プレゼン?」


「健康経営の社内発表で、実演する予定だったんだ。代わりのガンを探してるんだが……」


係長が慌てている。


「分かりました。僕が何とかします」


「本当? 助かる!」


電話を切ると、雪杉さんが心配そうに見ていた。


「どうかしましたか?」


「係長の筋膜リリースガンが壊れて……」


事情を説明すると、雪杉さんが手を叩いた。


「それなら、私が貸してあげます」


「え?」


「私も筋膜リリースガン、持ってるんです」


「そうでしたっけ?」


「はい。この前、同じ型を買ったんです」


雪杉さんが嬉しそうに言う。


「係長に喜んでもらえますね」


「本当ですか? 助かります」


こうして、僕たちは急遽雪杉さんのアパートに向かうことになった。


「すみません、せっかくのカフェタイムだったのに……」


「いえいえ、困った時はお互い様です」


雪杉さんのアパートで筋膜リリースガンを受け取りながら、僕は占い師の言葉を思い出していた。


「今月中に行動を起こさないと、運気が下がる」


あと2週間しかない。


「上村さん、どうかしましたか?」


「いえ、何でもないです」


「そうですか? なんだか考え事をしてるみたいでしたが……」


雪杉さんが心配そうに見る。


「実は……」


僕が再び言いかけた時、また電話が鳴った。


今度は蓮見さんからだった。


「上村君、お疲れ様。明日の会議資料、確認してもらえる?」


「はい……」


結局、その日は告白のタイミングを逃してしまった。


翌日の月曜日、係長のプレゼンは大成功だった。


「雪杉さんのおかげです」係長が感謝している。


「いえいえ」


「でも、上村君も助かったよ。ありがとう」


「こちらこそ」


お昼休み、雪杉さんが僕のところにやってきた。


「上村さん、昨日の占い、すごく当たってると思いませんか?」


「そうですね」


「私の恋愛運、本当に上がってる気がします」


「それは良かったです」


「でも」雪杉さんが少し困ったような顔をする。


「でも?」


「タイミングのズレって、まだ解決してない気がするんです」


雪杉さんの言葉に、僕はドキッとした。


「どうしてそう思うんですか?」


「なんとなく……ですが」


雪杉さんが僕を見つめる。


「上村さん、何か言いたいことがあるような気がするんです」


僕の心臓がドキドキし始めた。


「雪杉さん……」


「はい?」


「実は……」


その時、また誰かが近づいてきた。


(今度は何だ……)


でも、今度こそ、今月中には必ず伝えよう。


占いの言葉を信じて、勇気を出そう。


そう決心した僕だった。


サボりの美学は雪杉さんに学べ。

――凶も大吉も、心の持ちよう。


#オフィスラブコメ #社会人 #ラブコメ #現代 #星形にんじん


※この話は全てフィクションであり、実在の人物や団体などとは一切、関係ありません。


※AI補助執筆(作者校正済)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ