Lesson27「星形にんじん2.0」
Lesson27「星形にんじん2.0」
ヨガスタジオ初体験から三日後の火曜日。僕の筋肉痛もようやく治まってきた頃、雪杉さんが興奮気味にオフィスにやってきた。
「上村さん、すごいものを見つけました!」
いつものように煮干しだしマグカップ(限定版)を持ちながら、目を輝かせている。
「すごいもの?」
「はい! これです」
雪杉さんが机の上に、小さな箱を置いた。
「なんですか、これ?」
「AIカッターです」
「AIカッター?」
雪杉さんが箱を開けると、中から手のひらサイズの機械が出てきた。見た目は小さな3Dプリンターのような形をしている。
「野菜を自動で型抜きしてくれるんです」雪杉さんが説明する。「しかも、AI搭載で、設定した形を学習して、どんどん上手になるんです」
「へー、そんなものがあるんですね」
「はい! これで星形にんじんを大量生産できます」
雪杉さんの目がキラキラしている。
「でも、手で作る方が愛情がこもるんじゃ……」
「それもそうですが」雪杉さんが真剣な顔になる。「実は、最近手が痛くて……」
「手が痛い?」
「はい。毎日星形にんじんを作ってたら、腱鞘炎気味になっちゃって……」
確かに、雪杉さんは毎日大量の星形にんじんを作っている。
「それは大変ですね」
「それで、ヨガの先生に相談したら、『テクノロジーも宇宙の恵み』って言われて……」
(また宇宙の話か……でも、確かに手が痛いなら仕方ないな)
「分かりました。どうやって使うんですか?」
「説明書によると……」雪杉さんがマニュアルを広げる。「まず、にんじんをセットして、型の設定をして……」
そんな説明を聞いていると、蓮見さんがやってきた。
「おはよう。何それ、面白そうな機械ね」
「おはようございます。AIカッターです」
「AI? すごい時代になったのね」
「はい。星形にんじんを自動で作ってくれるんです」
蓮見さんが興味深そうに機械を見る。
「便利そうね。でも、ちゃんと動くの?」
「大丈夫だと思います。レビューも良かったので」
「レビュー?」
「はい。ネットショップで★4.5でした」
その時、碓氷係長がやってきた。
「おはようございます。何か新しい器具ですね」
「係長、おはようございます。AIカッターです」
「AI?」係長の目が輝く。「筋トレ関係ですか?」
「いえ、野菜の型抜きマシンです」
「野菜……」係長が少しがっかりする。
「でも、技術的には興味深いですね。どんな仕組みなんでしょう?」
「えーっと……」雪杉さんがマニュアルを読む。「画像認識AI搭載で、最適な切断ルートを自動計算するそうです」
「なるほど。最新技術ですね」
お昼休みになって、雪杉さんが給湯室でAIカッターの初稼働を試すことになった。
「見学してもいいですか?」僕が聞く。
「もちろんです。一緒に見ててください」
給湯室に僕と雪杉さん、それに興味を持った蓮見さんと碓氷係長が集まった。
「まず、にんじんをセットします」
雪杉さんが用意したにんじんを、機械の中に入れる。
「次に、型の設定……星形を選択……」
小さなタッチパネルを操作する。
「よし、スタートです」
雪杉さんがボタンを押すと、機械が「ピッ」と音を立てて動き始めた。
「おお、動いてますね」
機械の中で、小さなカッターが動いているのが見える。
「すごいですね」蓮見さんが感心する。
2分ほどで、機械が止まった。
「できました!」
雪杉さんが蓋を開けると、中から完璧な星形にんじんが出てきた。
「おお、きれいな星形ですね」
「すごい精度だ」係長が驚く。
「やった!」雪杉さんが嬉しそうに星形にんじんを取り出す。
「手で作るのより、むしろきれいかもしれませんね」
「そうですね。AIの力ってすごいですね」
「では、もう一回やってみましょう」
雪杉さんが次のにんじんをセットする。
「今度はもう少し大きめの星にしてみます」
設定を変えて、再びスタート。
今度も成功だった。
「完璧ですね」
「はい。これで毎日の星形にんじん作りが楽になります」
調子に乗った雪杉さんは、次々とにんじんをセットしていく。
「連続で作れるみたいです」
「すごいですね」
でも、3回目のにんじんを処理している時、なんか様子がおかしくなった。
「あれ? なんか音が……」
機械から「ブーン」という今までより大きな音が聞こえてくる。
「大丈夫ですか?」
「たぶん大丈夫だと思います……」
でも、音はだんだん大きくなっていく。
「ブーン、ブーン、ブーン……」
「ちょっと止めた方がいいんじゃ……」
僕が言いかけた時、機械が突然激しく動き始めた。
「ガガガガガ!」
「うわあ!」
機械が暴走している。
「止めてください!」
雪杉さんが慌ててボタンを押すが、機械は止まらない。
「電源は?」
「えーっと……」
雪杉さんがマニュアルを慌ててめくる。
その間にも、機械は激しく動き続けている。
「ガガガ、ブーン、ガガガ!」
そして、突然機械が止まった。
「……」
静寂が戻る。
「終わりましたかね?」
恐る恐る蓋を開けると……
「うわあああ!」
中から、大量の星形にんじんが溢れ出てきた。
「何これ!」
給湯室の床が、星形にんじんで埋め尽くされた。
「いったい何個作ったんですか?」
「分からないです……」
数えてみると、なんと200個近い星形にんじんがあった。
「どうしてこんなに……」
「AIが学習しすぎちゃったみたいです……」雪杉さんが青ざめている。
「学習しすぎって?」
「連続で使ったから、『もっと効率的に作れ』って学習して、勝手に大量生産モードになっちゃったみたいで……」
(AI、恐るべし……)
「どうしましょう、この星形にんじん……」
給湯室の床一面に散らばった星形にんじんを見て、みんなが困惑している。
「とりあえず、片付けましょう」
僕たちは星形にんじんを集め始めた。
「すごい量ですね……」
「どうしよう……冷蔵庫に入りきらないです……」
その時、丸山部長が給湯室にやってきた。
「おい、何だこれ?」
床に散らばった星形にんじんを見て、部長が驚く。
「すみません、部長……」雪杉さんが謝る。
「星形のにんじん? なんでこんなに?」
「AIカッターが暴走して……」
「AI?」部長が首をかしげる。
事情を説明すると、部長が笑い出した。
「はっはっは、面白いじゃないか」
「え?」
「AIに星形にんじんを大量生産させるなんて、時代だな」
部長が意外にも好意的だ。
「でも、どうしましょう、この量……」
「簡単だ」部長が答える。「みんなに配ろう」
「配る?」
「ああ。社員食堂のサラダバーに置けばいいだろ」
「それはいいアイデアですね」
こうして、星形にんじんの大量配布作戦が始まった。
僕たちは星形にんじんを袋に分けて、各部署に配って回った。
「星形にんじん、いかがですか?」
「わあ、可愛い!」
「これ、手作りですか?」
「はい、AIの手作りです」
(AIの手作りって、なんか変だな……)
営業一課、営業二課、経理部、総務部……各部署で星形にんじんは大好評だった。
「雪杉さん、すごいですね」
「いえ、予想外の大量生産で……」
「でも、みんな喜んでくれてますよ」
確かに、星形にんじんをもらった人たちは、みんな笑顔だった。
最後に社員食堂に行くと、料理長が興味を示してくれた。
「これ、すごく可愛いですね」
「ありがとうございます」
「明日のサラダに使わせてもらっていいですか?」
「もちろんです」
こうして、AIカッター暴走事件は、意外にもハッピーエンドを迎えた。
夕方、片付けが終わって、雪杉さんが反省していた。
「すみませんでした……まさかあんなことになるなんて……」
「大丈夫ですよ。結果的にみんなに喜んでもらえましたし」
「でも、AIに頼りすぎちゃいました……」
「そんなことないですよ」
「やっぱり、愛情を込めて手作りしないと……」
雪杉さんが落ち込んでいる。
「雪杉さん」
「はい?」
「たとえAIが作ったとしても、雪杉さんが『みんなに喜んでもらいたい』って思って作ったものです」
「上村さん……」
「それって、十分愛情がこもってると思います」
雪杉さんの表情が明るくなった。
「ありがとうございます」
「それに」僕が続ける。
「星形にんじんを作るのは手段で、大切なのは雪杉さんの気持ちですから」
「そうですね……」
「今度AIカッターを使う時は、設定をもう少し控えめにしましょうね」
「はい」雪杉さんがクスッと笑う。
「でも、今日は学習しました」
「何をですか?」
「テクノロジーも使い方次第だってことです」
「そうですね」
「ヨガの先生に報告したら、『AIも宇宙の一部』って言ってくれそうです」
(また宇宙に回収されるのか……)
翌日の水曜日、社員食堂で星形にんじん入りサラダが提供された。
「わあ、昨日の星形にんじんだ」
「可愛いですね」
「雪杉さんの作品ですよね」
みんなが星形にんじんを喜んで食べている。
雪杉さんも嬉しそうに見ている。
「よかったですね」
「はい。AIが暴走したおかげで、たくさんの人に星形にんじんを届けられました」
「それって、運命かもしれませんね」
「運命……」雪杉さんが考え込む。
「はい。きっと宇宙が、星形にんじんをみんなに食べてもらいたかったんですよ」
「そうかもしれませんね」
雪杉さんが微笑む。
「上村さんって、とても前向きですね」
「雪杉さんに影響されてるんです」
「私に?」
「はい。雪杉さんといると、失敗も良い経験に思えてきます」
「嬉しいです」
その日から、雪杉さんはAIカッターをもう少し慎重に使うようになった。
でも、星形にんじんへの愛は変わらず、今日も美味しいにんじん料理を作り続けている。
そして僕は、雪杉さんの前向きさと、失敗を成功に変える力に、ますます惹かれていった。
サボりの美学は雪杉さんに学べ。
――暴走も、時には最高のギフト。
#オフィスラブコメ #社会人 #ラブコメ #現代 #星形にんじん
※この話は全てフィクションであり、実在の人物や団体などとは一切、関係ありません。
※AI補助執筆(作者校正済)




