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『サボりの美学は雪杉さんに学べ』  作者: 白隅 みえい
第5章:揺れる心と筋肉痛
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Lesson23「社外研修地獄」

Lesson23「社外研修地獄」


Slackスタンプ戦争から一週間後の金曜日。本山課長から突然の呼び出しがあった。


「上村君、雪杉さん、ちょっと来てください」


僕と雪杉さんは課長のデスクに向かった。


「はい、何でしょうか?」


「来週の月曜日から水曜日まで、社外研修に参加してもらいます」


「社外研修?」


「はい。『チームワーク強化合宿セミナー』です」


課長が資料を見せてくれる。


「場所は箱根の研修施設。二泊三日の合宿型です」


「合宿……」僕と雪杉さんが顔を見合わせる。


「営業一課からは佐々木君も参加します」


佐々木も一緒か。


「どのような内容ですか?」


雪杉さんが聞く。


「チームビルディングゲーム、プレゼンテーション演習、グループディスカッションなど」


「結構ハードそうですね……」


「そうですね。でも、いい経験になると思います」


課長が付け加える。


「それと、この研修は会社の評価にも関わるので、しっかり取り組んでくださいね」


(評価に関わる……それはプレッシャーだな)


月曜日の朝、僕たちは新宿駅で待ち合わせた。


「おはようございます」


「おはようございます」


雪杉さんがいつものようにマグカップ……ではなく、今日は水筒を持っている。


「それは?」


「特製だしです」


雪杉さんが水筒を振る。


「研修中も飲めるように、保温水筒に入れてきました」


「すごい準備ですね」


そこに佐々木もやってきた。


「おはよう。今日からよろしく」


「こちらこそ」


僕たちは小田急線で箱根に向かった。


「研修って、どんなことやるんでしょうね」


佐々木が資料を見ながら言う。


「チームワーク強化らしいです」


「緊張しますね」


雪杉さんが水筒のだしを飲む。


研修施設に到着すると、他の会社からの参加者も含めて、総勢30名ほどが集まっていた。


「皆さん、おはようございます」


講師の先生が現れた。40代くらいの男性で、体育会系のノリだ。


「私、研修講師の田村です。今日から三日間、みっちり鍛えますよ!」


(みっちり鍛える……嫌な予感が……)


「まず、アイスブレイクから始めましょう。隣の人と自己紹介を!」


こうして、研修が始まった。


最初のプログラムは「信頼関係構築ゲーム」。


「二人一組になって、片方が目を閉じて、もう片方が誘導してください」


僕と雪杉さんがペアになった。


「では、雪杉さんが目を閉じて、僕が誘導しますね」


「はい、お願いします」


雪杉さんが目を閉じる。


僕は彼女の手を取って、ゆっくりと歩き始めた。


「段差があります。気をつけて」


「はい……」


雪杉さんが僕の手をぎゅっと握る。


その温かさに、僕の心拍数が上がった。


「上村さんがいてくれると、安心です」


「ありがとうございます」


10分ほど歩いた後、今度は役割を交代。


「では、僕が目を閉じますね」


「はい、任せてください」


僕が目を閉じると、雪杉さんが僕の腕を取った。


「こちらです。ゆっくり歩いてください」


雪杉さんの声と手の誘導で、僕は安心して歩くことができた。


「どうですか?」


「大丈夫です。雪杉さんを信頼してます」


「嬉しいです」


このゲームで、僕たちの信頼関係がさらに深まった気がした。


午後はプレゼンテーション演習。


「5分間で自分の会社を紹介してください」


僕と雪杉さんと佐々木は、同じ会社なので一緒に発表することになった。


「どう分担しましょうか?」


佐々木が聞く。


「僕が会社概要、佐々木が営業実績、雪杉さんが……」


「私は何を話せばいいでしょう?」


「企業文化とか、働く環境について話してもらえませんか?」


「分かりました」


準備時間で、雪杉さんが相談してきた。


「上村さん、企業文化って何を話せば……」


「そうですね……雪杉さんらしく、だしとヨガの話でもしますか?」


「え? 大丈夫でしょうか?」


「雪杉さんの個性が出ていいと思います」


発表の時間になった。


僕と佐々木が無難に会社概要と実績を話した後、雪杉さんの番になった。


「えーっと……」雪杉さんが緊張している。


「弊社の企業文化について話します」


「はい」


「弊社では、だし……じゃなくて、出汁……でもなくて……」


雪杉さんが混乱している。


「従業員の健康管理に力を入れています」


なんとか立て直した。


「例えば、ヨガ……じゃなくて、ヨ……よりよい職場環境作りのため……」


やっぱり混乱している。


僕がフォローしようとしたその時、雪杉さんが開き直ったように言った。


「実は、私は毎朝だしを飲んで、ヨガをやってます!」


会場がざわつく。


「だしとヨガで心身ともに健康になり、それが仕事のパフォーマンス向上につながっています!」


「なるほど……」


講師が興味深そうに聞く。


「だしには自然の恵みが詰まっていて、ヨガには宇宙のエネルギーが……」


(雪杉さん、いつものペースに……)


でも、意外にも会場の反応は良かった。


「面白いアプローチですね」


「ユニークな企業文化だ」


結果的に、僕たちのプレゼンは高評価を得た。


夕方、一日の研修が終わって、夕食の時間になった。


「お疲れ様でした」


「雪杉さん、プレゼン良かったですよ」


佐々木が言う。


「本当ですか? 途中でパニックになってしまって……」


「でも、最後は雪杉さんらしさが出て良かったです」


僕が言う。


「ありがとうございます」


夕食後、自由時間になった。


「温泉に入りませんか?」


佐々木が提案する。


「いいですね」


「雪杉さんはどうします?」


「私も後で入ります」


僕と佐々木は男性用の露天風呂に向かった。


「はー、気持ちいいな」


夜の露天風呂は最高だった。


箱根の山々を見ながら、温泉に浸かる。


「上村、聞きたいことがあるんだ」


佐々木が突然言った。


「何ですか?」


「雪杉さんのこと、どう思ってる?」


直球の質問に、僕は戸惑った。


「どうって……同僚ですよ」


「本当に?」


佐々木が僕を見つめる。


「最近、二人の雰囲気が変わったよね」


「そうですかね……」


「Slackのハートスタンプ事件とか、筋膜リリースガンとか……」


佐々木は全部見ていたのか。


「僕にははっきり分かる。上村、雪杉さんのこと好きでしょ?」


佐々木の言葉に、僕はドキッとした。


「それは……」


「正直に言ってよ」


僕は少し考えてから、素直に答えた。


「はい……好きです」


「やっぱりね」


佐々木が苦笑いする。


「佐々木は……雪杉さんのこと……」


「僕も最初は気になってた。でも、今は諦めたよ」


「そうですか……」


「雪杉さんの上村を見る目が、明らかに特別だったから」


「特別?」


「恋する女性の目だよ。僕に対してとは全然違う」


佐々木の言葉に、僕の心臓がドキドキした。


「本当ですか?」


「ああ。それに」


佐々木が続ける。 


「僕には蓮見さんがいるしね」


「蓮見さんと、うまくいってるんですか?」


「まあまあかな。GPSタグ事件の後、むしろ仲良くなった」


「よかったですね」


「でも、上村」


佐々木が真剣な顔になる。


「はい?」


「雪杉さんにちゃんと気持ちを伝えた方がいいよ」


「気持ちを伝える……」


「このままだと、曖昧な関係が続くだけだ」


佐々木の言葉が胸に響く。


「でも、もし断られたら……」


「断られたとしても、はっきりした方がいいだろ?」


確かに、そうかもしれない。


「考えてみます」


その時、女性用の露天風呂の方から、雪杉さんの声が聞こえてきた。


「上村さーん、佐々木さーん」


「はーい」


「お疲れ様でしたー」


「お疲れ様でしたー」


壁越しに会話するのも、なんだか不思議な感じだった。


「雪杉さん、温泉どうですか?」


僕が聞く。


「とても気持ちいいです。だしを飲んだ後の温泉は最高ですね」


(だしと温泉の組み合わせ……雪杉さんらしい)


「明日もがんばりましょうね」


「はい、がんばりましょう」


温泉から上がって、僕たちは部屋に戻った。


部屋は二人一組で、僕と佐々木が同室だった。


「上村」佐々木がベッドに横になりながら言う。


「はい?」


「今日の信頼関係ゲーム、見てたけど」


「はい」


「雪杉さん、すごく嬉しそうだったよ」


「そうでしたか?」


「ああ。君の手を握ってる時の表情、すごく幸せそうだった」


佐々木の言葉を聞いて、僕も今日のことを思い出した。


確かに、雪杉さんが僕の手を握っている時、とても安心したような、嬉しそうな表情をしていた。


「それに、プレゼンの時も」


「プレゼンの時も?」


「君がフォローしようとした時、雪杉さんが君を見る目……完全に恋してる女性の目だったよ」


僕の胸がドキドキする。


「本当に……雪杉さんも僕のことを……」


「間違いないよ。だから、ちゃんと告白しなよ」


「告白……」


その言葉が頭の中でぐるぐる回る。


「でも、いつ、どうやって……」


「それは君が決めることだ。でも」


佐々木が付け加える。


「あまり長く待ってると、チャンスを逃すかもしれないよ」


その夜、僕はなかなか眠れなかった。


佐々木の言葉が頭から離れない。


(雪杉さんに告白……)


考えるだけで、心臓がドキドキする。


でも、佐々木の言う通りかもしれない。


このまま曖昧な関係を続けるより、はっきりさせた方がいい。


(でも、もし断られたら……)


そんなことを考えているうちに、朝になった。


翌朝、朝食の時に雪杉さんに会った。


「おはようございます。よく眠れましたか?」


「おはようございます。はい、ぐっすり眠れました」


でも、実際は一睡もできていない。


「上村さん、少し疲れてるように見えますが……」


「あ、大丈夫です」


雪杉さんが心配そうに僕を見る。


その優しい表情を見ていると、佐々木の言葉を思い出した。


(この人を、僕は本当に愛してるんだ)


そして、その気持ちを伝えたいと思った。


研修が終わったら、勇気を出して告白しよう。


そう決心した僕だった。


サボりの美学は雪杉さんに学べ。

――温泉の湯のように、心も熱くなる。


#オフィスラブコメ #社会人 #ラブコメ #現代 #星形にんじん


※この話は全てフィクションであり、実在の人物や団体などとは一切、関係ありません。


※AI補助執筆(作者校正済)


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