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『サボりの美学は雪杉さんに学べ』  作者: 白隅 みえい
第4章:サボりは共有財産
18/22

Lesson18「屋上昼寝デート(前編)」

Lesson18「屋上昼寝デート(前編)」


屋上昼寝を約束した翌日の水曜日。僕は朝からソワソワしていた。


「上村さん、今日は何だか落ち着きませんね」


雪杉さんが煮干しだしマグカップを持ちながら、不思議そうに僕を見る。


「そうですかね?」


「はい。足がずっと貧乏ゆすりしてますよ」


確かに、無意識に足が動いていた。昨日約束した屋上昼寝のことを考えると、なぜかドキドキしてしまう。


「今日のだしは何ですか?」話題を変えようとする。


「今日は特別です」雪杉さんが嬉しそうに答える。「屋上昼寝用に、リラックス効果の高いだしを作ってきました」


「屋上昼寝用?」


「はい。昆布と椎茸のブレンドに、少しだけハーブを加えました」


「ハーブ?」


「ヨガの先生に教わったレシピです。『心を静める海の恵み』だそうです」


(また新しいレシピが……)


「それと」雪杉さんが机の下から何かを取り出す。「これも持ってきました」


小さな魔法瓶だった。


「だしフラスコです」


「だしフラスコ?」


「はい。屋上で飲むために、特製だしを保温して持参しました」


雪杉さんの準備の良さに、僕は感心した。


「すごいですね。完璧な準備だ」


「えへへ、昨夜からワクワクして、あまり眠れませんでした」


雪杉さんが照れながら言う。その可愛らしい表情に、僕の心拍数がまた上がった。


お昼の時間になると、雪杉さんが僕のデスクにやってきた。


「上村さん、準備はいいですか?」


「はい」


雪杉さんは、だしフラスコの他に、小さなクッションとタオルも持参していた。


「今日は完璧な屋上昼寝にしましょうね」


「楽しみです」


僕たちは屋上に向かった。


屋上に出ると、心地よい海風が吹いていた。港区のビル群の向こうに、東京湾が見える。


「いい風ですね」


「はい。海風には浄化の力があるんです」雪杉さんが深呼吸する。「ヨガの先生も言ってました」


雪杉さんが持参したクッションを地面に並べる。


「こちらに座ってください」


僕たちは並んでクッションに座った。昨日より、明らかに快適だ。


「では、特製だしをどうぞ」


雪杉さんがだしフラスコから、温かいだしを小さなカップに注いでくれる。


「ありがとうございます」


一口飲むと、確かにいつものだしより深い味がする。


「美味しいですね。海風と合います」


「でしょう? 海の近くで飲む『海の恵みだし』は格別なんです」


雪杉さんが嬉しそうに微笑む。


僕たちはしばらく、だしを飲みながら景色を眺めていた。


「上村さん」


「はい?」


「昨日は、ありがとうございました」


「いえいえ」


「私が落ち込んでいる時、そばにいてくれて……とても嬉しかったです」


雪杉さんの言葉に、僕の胸が温かくなった。


「こちらこそ、一緒に過ごせて嬉しかったです」


「本当ですか?」


「はい。雪杉さんと一緒にいると、時間がゆっくり流れる気がします」


雪杉さんが頬を染める。


「私もです。上村さんといると、心が落ち着きます」


海風が雪杉さんの髪を揺らす。その様子を見ていると、僕はまた心拍数が上がってくるのを感じた。


「では、昼寝しましょうか」


「はい」


僕たちは並んでクッションに横になった。


雲一つない青空が広がっている。海風が頬を撫でて、とても心地よい。


「上村さん」


「はい?」


「こうやって並んで空を見ていると、なんだか特別な気分になりませんか?」


「そうですね」


確かに、雪杉さんと並んで横になっていると、普通の昼寝とは全然違う。


「ヨガの先生が言ってました。『大切な人と同じ空を見ることは、魂の共鳴』だって」


大切な人……その言葉に、僕の心臓がドキドキし始めた。


「魂の共鳴……ですか」


「はい。今、きっと私たちの魂も共鳴してますよ」


雪杉さんが目を閉じる。


僕も目を閉じようとしたが、隣にいる雪杉さんが気になって、なかなか眠れない。


(心拍数がやばい……)


雪杉さんとの距離は、わずか30センチくらい。その近さに、僕はドキドキが止まらない。


「上村さん」


「はい?」


「心臓の音が聞こえますよ」


(え? 聞こえてる?)


「そ、そうですか?」


「はい。とても力強い音です」雪杉さんが微笑む。「きっと、海風で元気になってるんですね」


(海風のせいじゃないんだけど……)


「そうかもしれませんね」


僕は必死に心拍数を落ち着かせようとしたが、雪杉さんが隣にいる限り、無理だった。


「上村さんの心臓の音、安心します」


「安心?」


「はい。とても規則正しくて、力強くて……聞いていると眠くなります」


雪杉さんが僕の方に少し体を向ける。その瞬間、僕たちの距離がさらに縮まった。


(やばい、これ以上近づいたら……)


「すみません、少し離れた方が……」


「え? どうしてですか?」


「いえ、その……」


僕が慌てていると、雪杉さんが不思議そうな顔をする。


「もしかして、私がいると眠れませんか?」


「そういうわけじゃないんですが……」


「安心してください。私、いびきはかきませんから」


(そういう問題じゃない……)


結局、僕は雪杉さんの隣で、ドキドキしながら昼寝時間を過ごすことになった。


雪杉さんの静かな寝息が聞こえてくる。その穏やかな顔を見ていると、僕も少しずつリラックスしてきた。


(こんな時間が続けばいいのに……)


そんなことを考えているうちに、僕も眠りに落ちていった。


#オフィスラブコメ #社会人 #ラブコメ #現代 #星形にんじん


※この話は全てフィクションであり、実在の人物や団体などとは一切、関係ありません。


※AI補助執筆(作者校正済)


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