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「オレ、この戦いが終わったら結婚するんだ」からの死亡フラグフィーバー協奏曲

作者: たこす

「オレ、この戦いが終わったら結婚するんだ」と隣のヤツが言った時、オレは手にしたライフルを落としそうになってしまった。


 慌ててライフルを持ち直し、グリップをしっかりと握る。

 そして改めて隣のヤツに尋ねた。


「け、結婚?」

「ああ。この戦い、もうすぐ終わるだろ? だから帰ったら結婚しようって約束してる恋人がいてさ」


 なんてこった。

 確かに今、オレたちは敵対するガバーナ帝国への最終決戦へと挑もうとしている最中だ。

 圧倒的軍事力で瞬く間に世界を征服してしまったガバーナ帝国。

 それに対抗するために世界が同盟を結び、今、ガバーナ帝国を追い詰めている。


 もうじきこの戦いも終わると誰もが思っているだろう。


 だがしかし。

 だがしかしだ。


 こういう時こそ言ってはいけないセリフがいくつかある。


 その最たる例が「オレ、この戦いが終わったら結婚するんだ」というものだ。

 これを言ったやつは大抵、すぐに死ぬ。

 それも運悪く流れ弾に当たるパターン。


 オレは巻き添えをくわないよう隣のヤツと少し距離をとった。


「そ、そうか、よかったな」

「見る? オレの彼女」


 隣のヤツはオレのそんなさりげない行動にも気づかず、ロケットペンダントを取り出した。

「オレ、この戦いが終わったら結婚するんだ」からのロケットペンダント。

 どんだけ死亡フラグ立てたいんだよ。


「い、いえ、けっこうです」


 オレは丁重にお断りした。

 幸せそうな写真を見たら後味が悪すぎる。


 隣のヤツは「そう? 可愛いのに」と少しも不満な顔を見せずロケットペンダントの中の彼女にキスをしていた。




 はあ、とため息をついてると今度は逆隣のヤツが話しかけてきた。


「おい、お前」

「はい?」

「もしかしてベルタス出身か?」

「そ、そうですけど……」


 見ると頬に傷のあるちょっとおっかないヤツだった。


「やはりな。しゃべりに少し訛りがあるからすぐにわかったぞ」

「そ、そうですか」

「オレはスグル出身だ」


 スグルと聞いてちょっと身構えた。

 スグルは治安が悪い街として有名な場所だ。

 スリや強盗が横行し、住民の半分が犯罪者という噂もある。


「あそこは最悪だぜ。なんせかっぱらいをしなければ生きていけない街だからな」

「そうなんですね」

「オレも生きてくために悪いことは一通りしてきたものさ」

「はあ」


 それはある意味気の毒な気はするけど、なぜそれを今オレに言うのだろう。


「でもな。今回、この戦いに志願してオレは考えを改めたんだ」

「なにをです?」

「人は支え合って生きて行くべきだってな」

「は、はあ……」

「だから決めたんだ。この戦いが終わったら、オレはスグルの街で人生やり直そうって」

「そうですか。それは素晴らしい考えですね」

「手始めに、小さい頃からオレの世話ばっかり焼いてくれてた近所のおせっかいババァにペンダントを作ったんだ。下手くそな木彫りのペンダントだけどよ」


 はい、出たあああああーーーーー!

 ふたつめの死亡フラグーーーーー!

 悪さばっかりしてたヤツが改心して手製のプレゼント用意してたら、それはもう「あなた死にますよ」確定でしょ!

 嫌だよ、死の間際に「これをあのババァに渡してくれ」って託されるの!


「ふふ、喜んでくれるかな。あのババァ」

「よ、喜んでくれると思いますよ?」

「だといいな」


 ああ、やめて!

 穏やかな顔してこれ以上死亡フラグ立てないで!


 オレは引きつった笑みを浮かべながらその男とも若干距離を取った。




 すると今度は、後ろからポンと肩を叩かれた。

 振り向くと、筋肉ムキムキの屈強そうな男がオレの肩に手を置いていた。


「おい、お前」

「は、はい? なんでしょう?」

「見た事ねえヤツだが、新入りか? ガタガタ震えてるぜ?」

「いえ、新入りと言うわけではないですけど……」


 オレのような雇われ兵は、不足している部隊にランダムに配置されることが多い。

 特に今回は最終決戦で、兵力は充実させたいのだろう。

 おかげで成人して間もないような若い雇われ兵もチラホラいた。


「ま、帝国との最終決戦だからな。緊張するのも無理はない」

「は、はあ……」


 今は別の意味で緊張しているのだけれど。


「しかし安心しろ。帝国の奴らなんざ、オレ一人で片付けてやるからよ」


 頼もしい!

 頼もしいけど、不穏なセリフ!


 男はおもむろに上着を脱いで力こぶを作って見せてきた。


「見ろ、この筋肉を。毎日必死に鍛練したんだ。カッチカチだろ」

「は、はあ、そうですね」

「どんな相手が出てこようが、鍛え上げたオレの敵じゃねえ。このマッスルパンチ一発で沈めてやるぜ」


 はい、出たあああぁぁぁーーーー!!

 負けるキャラが直前に言うセリフーーーー!!

「そんなバカな」ってやられるやつーーーー!!


 っていうか、ライフル渡されてるんだからライフル使いなさいよ。


「だからお前も大船に乗った気でいろや。リラックス、リラックスだ」


 おかげで緊張感が高まりました。

 お願いだからオレの近くで死なないで。





 そうこうするうちに、部隊長がやってきた。

 髭をたくわえた、いかにも隊長という感じの中年の男だ。


「諸君! いよいよ最終決戦だ! ここまで長かったが、ついにこの戦いも終わる! 最後の最後に死ぬんじゃないぞ?」


 すでに死亡フラグ立ちまくってるのが複数いますけどね。


「ここで本部からの指令だ。我々はあとから来る本隊に先駆けて敵陣に突入。中から攪乱せよとのことだ」


 最前線に送られたからわかってはいたけど、一番危険な任務だ。

 死亡フラグうんぬんよりも死ぬ確率が高い。


「なお、帝国の中心部からは謎の高エネルギー反応が検出されている。みな、気を引き締めるように」


 謎の高エネルギー反応って……。

 部隊ごと全滅のフラグ立ってない?


「最後に伝えたい。みんな、よくここまで生き残ってくれた。感謝する」

「隊長……」


 ううう、とすすり泣く声があちこちから聞こえてくる。

 慕われてたんだな、この部隊長。


「はっきり言って今回は危険な任務だ。多大な犠牲が出るかもしれない。しかし! 敵に残された戦力は少ない! 謎の高エネルギー反応というのも気になるが、どうせたいしたものではないだろう! 本隊が来る前に我々だけで勝利をおさめようではないか!」

「おおー!」



 部 隊 を 全 滅 さ せ る 気 か こ の 野 郎。



 普通に考えて最終決戦で謎の高エネルギー反応ってラスボス級のヤベーやつじゃないか。

 悪魔の召喚か、強力な兵器の投入か。

 いずれにせよ「先行した部隊が全滅しました!」って連絡入るパターンでしょ、これ。


 嫌だよ、わけもわからず死ぬなんて。

 なんとかフラグを回避しないと。


「隊長! 高エネルギー反応がなんなのか気になります! もう少し様子を見ることはできませんでしょうか!?」


 オレの進言に、隊員たちが「何言ってんだこいつ」って感じで振り向く。

 せっかく戦意が高まってたのに水差しやがってっていう顔だ。

 でも仕方ない。

 なんと思われようがオレは死にたくない。

 っていうか、オレの進言はみんなを助けようとしてることにもなってることを知って欲しい。


 隊長はオレの顔を見て頷いた。


「ふむ、確かに一理ある。高エネルギー反応がなんなのかはっきりするまではうかつに手を出さんほうがいいかもな」

「隊長……」


 やった!

 オレの言葉が部隊全滅を回避した!

 頑張ったオレ!


「であれば高エネルギー反応がなんなのか調べる必要がある。貴様が先行して調べてこい」

「………は?」

「1時間待つ。その間に戻らなければ突撃を開始する」

「…………」


 や、や、や、やっちまったーーーーーーー!!!!

 オレ自身の死亡フラグ立てちまったーーーーーー!!!!


「い、いや、オレ一人でですか?」

「ならばお前とお前とお前、一緒に行け」


 隊長が指名したのは、死亡フラグを立てまくっていた三人だった。

 おいおいおいおいーーーー!!!!

 死亡フラグチームじゃん!!!!

これもう確定じゃん!!!!


 指名された三人も

「やった! 子どもが生まれたら、パパは最後に重要な任務を任されたんだぞって自慢してやれる!」

「ふっ、ババァに土産話ができたな」

「よっしゃ! オレのマッスルパンチを披露する機会が増えたぜ」

 って乗り気になってるし。


 ほんとゴメン。


「それでは行って参ります、隊長!」


 駆け出す三人の後ろをついて走るオレ。



 ああああ、もう後戻りはできないのか。



 せめて死なないように祈ろう。









 しかし、結局何も起きなかった。


 行ってみたらガバーナ帝国は白旗をあげて降伏の意志を示していた。


 高エネルギー反応というのも、宮廷魔術師がひとりで逃げだそうとして転移魔法を使ってたらしい。失敗したようだけど。


 オレたちのことも降伏勧告に来た使者と勘違いしたらしく、丁寧に迎えられた。




 こうして、後からやってきた本隊に処理を引き継ぎオレたちの戦いは終わったのだった。




 って、誰も死なないんかーい!








死亡フラグと認識した時点で死亡フラグじゃなくなりましたっていう話(笑)


お読みいただきありがとうございました。

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