騎士養成学園
騎士とは、船団フェルンディオを守護する部隊である。
発足当時は貴族から優秀な人材を集めて構成された部隊だったが、貴族の中でも戦闘機の操縦に特化した家や特殊能力ディーの扱いに長けた一門がいたりなど、能力に偏りがあったため、フェルンディオを管理する管理人が発起人となり設立した、養成所だ。
現在では貴族以外にも厳しい試験を突破すれば一般人も通う事ができるが、貴族社会で構成される学園に馴染めない者も多く、ほぼほぼ貴族のための学園と言っても過言ではないだろう。
「でも本当に珍しいわ。編入なんて普通は認められないのよ?」
始業式前日。
ハルは明日からクラスメートとなる長瀬紗良に案内され、学園内を回っていた。
学園は全寮制なのだが、私物らしい私物がないハルは引っ越し作業もなく直ぐに暇になる。
そんなハルに声を掛けてきたのが紗良だった。
長くない襟足に活発な印象を受けるが、大きな眼鏡を掛けていることでどこかちぐはぐな印象を受ける彼女と一緒に歩く。
「ちょっと研究が忙しくてね。本当はちゃんと一学期からの入学の予定だったのだけれど、二学期までずれ込んでしまったの」
紗良にはハルの家が騎士お抱えの技術屋であると騙り、ハルも技術者として幼いころから手伝いをしていて、今回は新機体の調整に手間取って一学期から通えなかったことにしている。
(……ジャグの情報提供とかは本当だけど)
編入先は初等、いわゆる一年生。
クラスはS、A、B、Cとあり、成績順ランク付けである。
寮には大浴場や遊戯室、自習室にスポーツジム、さらには豪華なパーティー会場と貴族の子息子女が通うだけあって設備は充実している。
寮から校舎までは歩いて五分ほどで、石畳の整備された道を歩く。
緑も多く、目を引くのは街路樹として果樹が多数植えられていることだ。
「学園は避難所としても指定されているから、万一の時はすこしでも助けになるようにって、果樹が植えられているの」
「ふーん……」
林檎に蜜柑、背の低いベリー系が多い。
校舎の入り口、大きな門をくぐると見えてくるのは整然とならんだ校舎や体育館。
なにより目を引くのは一○○メートル四方はあろうかという黒い建屋。
「目立つでしょ。あれはディーを用いた戦闘訓練所なの。内部はディーの出力を上下できる特殊なフィールドになっているのよ」
紗良に案内され、二人はディー訓練所へと踏み入れる。
今日まで長期休みのため中はがらんとしており、はるか頭上の電灯が仄かに内部を照らしているだけ。
「今日はディーの強化フィールドみたいね。この状態なら普段使えるディーの能力が強化されるの」
「どういう仕組みなのかしら、不思議ね」
そもそもハルは知識としてディーという特殊能力を知ってはいるが、転生してから今日まで使ったことが無いことに気付く。
人類が宇宙に進出して数世紀。突如として発現したディーは脳波を用いた肉体の強化やコントロールであると解析されている。
例えば筋力の一時的な増加や、怪我をしたときの自然治癒力の向上、集中力の維持などにも使われている。
脳波を使用するため体の末端、手足に近付けば近づくほどコントロールが難しくなり、脚力の増加などはかなり精密にディーを扱える証左でもある。
「試してみる?授業以外なら誰でも自由に使って良いのよ」
「……そうね」
紗良が手元でなにやら透明なパネルを操作している。空中に浮いているそれは学生なら誰もが使えるデバイスのようだ。
数秒後、建屋内部の空中に数直線が出現した。
「ディーを用いてどれくらい高く飛べるかが一学期の期末テストだったの。私たちのクラスだと一番高くて四メートル。Sクラスの人とかは一五メートルは跳べるんだって」
「紗良は?」
「あ、あはは……。私は三メートルかな」
生身で一五メートルもジャンプできるとは、相当ディーを精度よく使いこなせるのだろう。初等とはいえそこまで出来るのがSクラスの実力らしい。
「じゃあちょっとやってみようかしら。……笑わないでよ?」
さてさて自分の実力はどれほどなのか。
ディーの使い方は転生前の知識から引っ張り出してくる。脳波コントロールとは簡単に言ってしまえば「意識」すればいいのだ。
それくらいならぶっつけ本番で出来るかと靴を滑らし、足が床をしっかりとホールド。
頭上、宙に浮く数直線を見上げて高く飛べと意識する。
「——はっ!」
* * *
気づくとハルの視界には黒い壁と、直ぐ上に電灯が見えた。
理解に一瞬を要し、焦る。
目の前にある数直線が指し示す高さは九○メートル。
束の間の浮遊感のあと、体は落下を始めた。
「きゃあああああ……!」
自由落下に抗うように伸ばした手は空を掴み、迫りくる床が見えた。
『——心配ご無用です。貴女の戦闘力はほぼ最大にまで引き上げておきました』
(まさか戦闘力って、こういうことなの!?)
神様の言葉を思い出す。
植え付けられた知識から戦闘力とはジャグの操縦とかそういうものだとばかり思っていたが、どうみても違う。
この時代においてディーを用いたあらゆる能力は騎士になるための礎であり、さらに騎士になれなくても突出した能力があれば貴族から声が掛かり、婚約や養子に迎え入れられる。
ディーがここフェルンディオにおいて個人を順位づけているといっても過言ではない。
そんな事とは露とも知らぬハルは、盛大に落下した。
「だ、大丈夫!?」
「——な、なんとかね……」
床と激突する直前。
訓練所のセーフティが働き、大きな音は立てたがハルは五体満足であった。
ジャグで死線を潜り抜けた経験があるとはいえ、今日ほど恐怖を感じたことはない。
訓練所でよかったと同時に、早急に自分の実力を確かめなければならないとハルに警鐘が鳴る。
ディーを用いた訓練はここ騎士養成学園のもっとも重要視するカリキュラムであり、こんな無茶苦茶な能力で授業を受けたら間違いなく注目を浴びる。
(一○パーセント……いえ五パーセントも実力を出しちゃいけないわね)
紗良の手を借りながら起き上がりながら能力のセーブを考えていたら、紗良がいつまでもハルの手を離さない。
どうかした、と紗良の顔を覗き込めば眼鏡の奥、瞳が爛々《らんらん》と輝いているではないか。
しまった、と思うがもう遅い。
「ハルさんすごいです!見てください!九○メートルなんて飛んだのは歴代二位ですよ!」
紗良が指さす先、壁に新しく浮かび上がったのは垂直ジャンプの歴代記録だ。
見ればハルの名前が二位に輝き、今日の日付が記録されている。一位は九三メートルで記録としては一○年以上前だ。
やってしまった。後悔先に立たず。
「……あれさ、消せる?」
「消すなんてとんでもないです!それに初等で三○メートル以上飛べた人は来年までディーの試験は免除されるんですよ!」
紗良が垂直飛びがどれだけ難しいか、自分がどれだけ苦労しているかを滔々《とうとう》と語りだすうちに、騒ぎを聞きつけたのか他の学生が訓練所に現れた。
明日から二学期だということで寮に帰ってきている学生は多く、校舎を利用している生徒もいたようだ。
「と、ともかくここから離れるわよ。編入前から目立ちたくないの」
人だかりができ始めた入り口とは反対、紗良の手を引いて非常口から逃げるようにハルは訓練所を後にした。
* * *
訓練所にはランカー制度というものがある。
歴代記録とは別で、在校生のみの実力をランキング付けしたものだ。種目はテストで出るような垂直飛びから実戦形式の対人戦までと幅広く、しかしランキングの上位はほぼ常連で埋め尽くされる。
何故か。
ディーの能力を如何に引き出せるかはどれだけ脳波を精密にコントロールできるかであり、コントロールが優秀な者であればそもそもディーを用いた競技など同列として語れるのだ。
ディーの技量が同じもの同士が競い合う時だけ、その他の才能だったり技量が優劣をつけるのであって、結果としてディーの能力だけを測る訓練所はランカーの固定が起こりやすい。
が、時たまイレギュラーも発生する。
今回まさに、ハルが打ち立てた記録は歴代二位であり、在校生でトップに躍り出た。
学園のシステムからはランカー順位変動の通知が全校生徒に通知され、ランカー同士の研鑽を呼びかける。
本来なら同程度の技量を持つライバルが相手に負けじと訓練所に通い詰めてランクを維持しようとするのだが、今回はランク外から突然のランク一位奪取に、誰もが驚きと疑念を抱く。
「……へぇ、まさか破られるとはね」
そして全校生徒に漏れなく通知されたメッセージに、一人の男子生徒が反応した。
生徒会室と彫られたプレートが掲げられる一室。
声を上げた男は会長席に座る女子生徒を向いて、嗤う。
「……なにが可笑しいのですか」
「そりゃ可笑しいさ。会長が打ち立てた記録が一つ、塗り替えられたんだから」
男子生徒はくつくつと、端から見れば不愉快な笑みを浮かべる。
「しかも次の記録保持者は初等だ。こりゃ酷い目にあいそうだね」
「まるで他人事ですね。その酷い目とやらに貴方も噛んでいるくせに」
「まっさかー。こんな大人しくて従順な僕が、誰かを陥れるなんてしないよ?」
どの口が、と会長席に座る女子生徒が溜息一つ、立ち上がる。
その行動に目を弓に細めて男子生徒は見守る。
「どこに行くのかい?」
「ホルダーは私です。奪われたのなら奪い返すまで」
「君の記録は三か月前の七八メートルだけどそれを塗り替える、いやそもそも塗り替えれるのかい?」
「当然です。それが私の存在意義」
女子生徒は壁に掛けていた『生徒会長』と書かれた腕章型デバイスを身に着け、代わりに眼鏡を外す。
眼鏡を外した彼女の瞳からは淡い翠の燐光が漏れ出る。
類まれなるディーの才能を持つ彼女は、脳波の常時出力が強すぎるあまり、瞳から涙を伝って脳波が漏れ出るのだ。
その抑制として眼鏡型の脳波減衰器を付けているのだが、ランカーを奪い返しに行くとなれば不要である。
「——今までは先代に敬意を払ってあくまでランカー一位だけに収めておきましたが、それを踏みにじる者がいるとなれば話は別です」
「内心嬉しいくせに——おおと、怖い怖い」
キッ、と男子生徒を睨むと彼は笑顔を崩さずにソファに倒れ込んだ。いつまでも遊んでいる彼を相手にするのも馬鹿らしい。
女子生徒は一瞥すると、無言で部屋を後にした。
残るのは男子生徒のみ。
ソファにそのまま寝転がる彼は、中に浮くメッセージを流し読みしながら、笑みを濃くしていく。
「確かに彼女が本気を出せば、今は越えられるかもしれないね」
そう、本気を出せば。
けれど彼女もわかっているだろう。
本気を出すという事は、それ以上は出せないという事。
もし今回叩きだされた記録、新ランカーが本気じゃない力でこの成績だったら?もし彼女が記録を更新したところで、新ランカーがさらに更新してきたら?
頂点に立つ者は常に追い蹴落とされる運命にある。
「——ま、それは彼女が九○メートルという記録をみてどう判断するか、かな」
* * *
「ここは図書館よ。うちの学園は自習室は寮にあるから、図書館は基本的に本を借りるところでしかないわ」
「へぇ……貸し出しは自由なの?本なんて随分貴重じゃない?」
紙は貴重品である、というのは人類が宇宙に出て学んだ教訓だ。
紙の製造は原料であるパルプ、その原料である木材は地球の豊かな森やアマゾンの搾取によって支えられていた。
しかし宇宙に進出した人類は、鉱石や水といった物は小惑星などからある程度調達出来たが、木材だけは量産が難しかった。
単純に樹木が育つ年数もそうだが、植物繊維を化学的に合成しようとしても、コストが見合わない。
さらに紙が無くても、そのころの人類は特段困ることは無かった。
なので紙の本というのは好事家か貴族が自らの尊厳を保つために持っている程度であり、言わば死んだ文化なのだ。
「学園長——あ、学園長はフェルンディオの管理人一族の人でもあるんだけど、彼が無類の本好きで有名なの。ここにあるのは彼のコレクションのごく一部だそうよ」
変人だけどね、とハルは小さく教えてくれた。
次に案内されたのはこれから通う事になる初等Cクラス。
それまでにS、A、Bクラスの前を通ってきたからなんとなく想像は難くなかったが、これは酷い。
「ええと、一応聞いておくけど、この教室は常時戦場なのかしら?」
荒らされた机にペンキがぶちまけられた電子黒板。床はところどころ小さいとは言えない穴が開き、無事なのは窓ガラスくらいだろう。
「ごめんなさい。でも今の私たちのクラスを説明するには必要な事だと思って」
紗良は教室のドアの手前、廊下にあるスイッチをいくつか操作する。
すると汚れていた黒板や焦げた穴が見る見るうちに修復され、跡形もなく綺麗な教室へと変貌していく。
この技術には見覚えがあった。
転生前の三宮ハルの記憶でも、形状記憶とナノマシンを組み合わせた戦艦修復技術で似たようなモノを、サゴニウスでも研究していた。
本当はそれをジャグに組み込めれば良かったのが、生憎とそこまで出来る技術と時間がなかったのを覚えている。
「学園のクラス分けについては、聞いている?」
「実力順、とだけは」
「実際はね、そんな甘い物じゃないの」
Sクラスを頂点とした貴族階層が明確に存在し、Cクラスはその最底辺。常に搾取される側であり、まるで奴隷として扱われるのだという。
「一学期にクラス対抗の戦闘訓練があったんだけど、私たちのクラスは惨敗。いえ、正直言って大人と子供の喧嘩だったわ。一方的に嬲られて、笑い物にされて。その後から、教室が荒らされるようになったの」
それはCクラスの者がストレス発散でやる時もあれば、Bクラスの者がやるときもあるのだという。
いやはや、一方的な虐めならいざ知らず、自分たちの教室を自分たちで汚すというのは何ともやるせない。
「ここの教師たちは、何も言わないのかしら?」
「表立っては動けないわ。貴族も多いし、なにより先生たちより生徒の方がディーの能力が高い時があるの」
「でも、それなら授業にならないんじゃないかしら?」
生徒の方が教師より権限も力も上だとしたら、学級崩壊なぞ目に見えているようにも思う。
「それは大丈夫。代々学園長はフェルンディオの管理人が執り行うから、もし先生に危害が加えられるような事があれば、文字通りその生徒はフェルンディオから摘まみだされるわ。現に、数年に一回はあったりするのよ」
「……それは怖いわね」
摘まみだされるというのはあくまでフェルンディオの母船からなのか、それとも全船団からなのかで生死に関わるのだが、聞かない方がいいだろう。
そして。
「つまり、教師に手を出さなければ生徒は何をしても良いと。だからこうなるわけね」
すっかり綺麗な教室に戻ったCクラスに足を踏み入れ、ハルは窓辺に立つ。
教室からは中等の校舎が見えるだけ。
高等になるとフェルンディオの街並みが一望できるらしいが、果たしてそれまで無事に学園にいられるかどうか。
ふと、ハルは本来の任務を思い出す。
「そういえば紗良。ちょっと聞きたいのだけど、Cクラスに貴族の方はいるのかしら?」
「え、えぇ。男爵家が二人、子爵家が三人いるわ」
(あら、伯爵家がいない?)
「それだけ?伯爵家とかはいないの?」
「伯爵家ほどになれば実力が無くても、最低でもBクラスよ。そもそもCクラスなんて貴族じゃないけど騎士に憧れる生徒が集められるようなクラスだもの」
んん?とハルは首を傾げる。
ボワード伯爵からは息子であるレイルリの護衛を頼みたいと言われてはいるが。
ハルの頭に、まさかの文字が過る。
「ちなみに聞きたいんだけど、この学園にハイリー伯爵家の方がいるかどうかわかる?私の実家のパトロンでもあるんだけど」
「嘘……ハルさん、レイルリのあれなの……?」
どの『あれ』なのか知らないが、違う。
「あくまで私の実家のパトロンよ。それも息子じゃなくて現当主のほう。ボワード伯爵の息子さんもたくさんいるからね、そのレイルリって人に実際に会ったこともないし」
明らかに安堵した顔を浮かべられると困る。
「まさかとは思うけど、そのレイルリって人は典型的な貴族様かしら?」
「そうね……。Bクラスにいるけど、積極的にCクラスに関わってくれる人よ」
「……なるほどね」
まさに事故物件である。
護衛対象がまさかの敵対人物だったとは。
というかBクラスからのいじめの対象に今後はハルも加わる事になる。だというのに、いじめる側を護れというのは無理があるだろう。
(いえ、おそらくこれが狙いかしら)
虐めらる側に内通者を忍ばしておけば反抗の危険は察知できる。なによりBクラスも立場が変わればAクラスからいじめられる側なのだ。
ハルがCクラスにいるからこそ、Aクラスからのマークが外れて自由に行動できる事もある。
「いやいや、どんなドラ息子よ……」
「……?何か言った?」
何でもない、とハルは次の場所へ案内してくれと催促する。
教室を出た二人が最後に向かうのはゴミ捨て場だ。
校舎を出て裏手に回り、すこし歩いたところにそれはある。
「ゴミはどこで捨ててもここに自動で収集されるんだけど、Cクラスだけはちょっと違うの」
「違う?」
「本来は集められたゴミは自動で分別されて最適なリサイクルに回されるんだけど、Cクラスから出てたゴミだけは、自分たちで分別しないといけないの」
例えば、と紗良は中等Bクラスと札が掲げられたカーゴを指さす。
先ほどからちょろちょろとゴミが天井から流れて生きているが、カーゴ内にロボットアームが伸び、捨てられたゴミを自動で選別、同じように中等Bクラスの札が掲げられたリサイクルボックスへと回していく。
学園内でゴミを捨てた場合、いつどこで誰が捨てたかを記録しているため、こうしてクラスごとにゴミを分ける事ができるのだという。
救いなのは寮で出たゴミだけはそのあたりのチェックが甘いが、それでも大量に捨てたりだとかリサイクル出来ないような物を捨てた場合はチェックが入るという。
「一応騎士候補生として、ゴミの排出量もチェックされてたりするから。Aクラス以上の人は気にしないようだけど、BクラスやCクラスは成績にも響くのよ」
ゴミのカーゴは初等、中等、高等のそれぞれのクラス、そして教職員室や実験棟とあり、生徒会室と掲げられたものもある。
特に教職員室と生徒会室のカーゴは扱う情報が情報なだけに、盗まれないよう分厚い透明なケースで保護されている。
近付けばある程度中身は見れそうだが、そのあたりは監視カメラでもついているのだろう。
「ハルさんにもなるべくゴミは出さないように協力してほしいの。お願いできるかしら」
「——そうね、自分たちで分別までしないといけないのなら、あんまりゴミを出さないように気を付けるわ」
初等Cクラスのカーゴにあるゴミの量は、長期休みだったとはいえ他のクラスに比べて半分以下と目に見えて少ない。
これも紗良たちの努力の賜物だろうが、同時に学園の実態とカースと最下位の現実をまざまざと見せつけられ、複雑な気持ちになるハルだった。