課外学習 2
体の節々が痛む中、目を覚ますと視界いっぱいに王太子の顔が広がっていた。
「リーナ! 大丈夫か!?」
斜面から落ちそうになってたララを助けようとしていた所を王太子が助けようとしてくれたが道が崩れて落ちてしまい3人共落ちてしまったようだ。
「ララは無事なの!?」
「気を失っているみたいだけど命に別状はないよ」
「よかったぁ……」
慌てて辺りを見回すと木にもたれかかって座っている状態で気を失っている状態のララを見つけて、ひとまず外傷は無さそうで一息ついた。
「アルフォード殿下は怪我はないの?」
「僕は問題ないよ」
「ごめんなさい、王太子殿下をこんな事に巻き込んでしまうなんて」
「気にしないでくれ、婚約者だろう?」
「政略結婚じゃないの」
私がそう言うと王太子は大きなため息を吐いたあと急に近づいてきた。
「リーナは僕との婚約が政略だと思っているの?」
「違うの?」
「リーナには姦計は向いてないんじゃないか?」
「どうしてよ? というか気付いていたの?」
「僕がリーナの事をどう思っているか分かる?」
「問題児?」
王太子はさっきよりも大きなため息を吐くと首を横に振って睨んできたあとに、私の後ろの木に腕をついてきて私は彼の腕にとらわれてしまった。
「君は言われないと分からないだろうし、この際だから言っておくよ」
「な、なに?」
王太子は私の目を真っ直ぐ貫いてくる。
「僕は君を愛している」
「へ?」
王太子が私を愛している? これはどういう類いの冗談だろうかと一瞬思ったが、彼の目は真剣そのもので本気っぽい
「あなた、私の事が好きだったの?」
「むしろ、どうして今まで気付かなかったのかと言いたいよ」
なるほど、今まで私の謀略を封じる為にやっていた事は私が好きだったからなのか。
私は眼前にある美形を見ながらどうお断りしようかと悩む。
よし、正攻法でいこう。
「私はあなたの事を愛していないし、婚約を破棄したいと思っているわ」
「そう言うと思ったよ」
王太子妃になんてなったら、自由に謀略をめぐらせる事もできないし、妃としての責務や教育を受けて外交の場にも出なければいけないし絶対に嫌だ。
王太子も私の姦計に気付いていたみたいだしこの解答は予想していたようで特に反応はない。
「それなら、僕と勝負をしないかい?」
「勝負?」
「学園の卒業式までに君が僕に惚れたら僕の勝ち、君が惚れなかったら僕の方から婚約を解消するっていうのはどう?」
なるほど、1年間王太子を避け続ける事ができれば私は幸せな謀略ライフを確約されるわけね。
「いいわよ、その勝負、のりましたわ」
「なら僕はありとあらゆる手段で君の心を手に入れないとね」
王太子の事を徹底的に避けた上で他の女の子を焚きつけたりと今までとやる事は変わらないけど、私が王太子に惚れなければ勝ちなんだから楽勝だわ。
一年後この勝負を持ちかけた事を後悔させてやるんだから
「あの、イチャコラしてる所申し訳無いのですがこの状況を何とかする方を優先しませんか?」
声のした方向を見ると、意識が戻ったらしいララがこちらを見ていた。
「ララ! 目が覚めたのね! どこか痛い所はない? 痛めてた右足は大丈夫?」
「ええ、痛めていた右足もこれ以上酷くなる事も無かったようで別段大丈夫なようです」
「それは良かった、まずはこの状況を脱する為に現状把握から始めようか」
「まあ、間違いなく遭難している所かしらね?」
「一応助けを呼ぶ為の笛もあるし、ララの事は僕が背負っていけばそれなりに移動もできると思うが」
斜面を頑張って登るのも有りかと思ったが、結構急で登るのは無理そうね。
そうなると、現在地の把握と救助にきた人に気づかれ易いようにするのが先決かしら。
「まずは、周囲が見える開けた所を探して登りましょうか」
「下るのではなく登るのですか?」
「そうよ、下に下ると沢があったりしてとても危険だし高い所を目指して現在地を把握できた方が闇雲に動くよりいいわ」
「それなら僕がララを背負うのでリーナは笛を吹いて貰っての良いかい?」
こうして私達は登山道に戻る道を探しつつ、周囲を確認できる場所を目指して歩きだした。
ただ、怪我人を背負っている状況だし体力の温存も考えないといけないので歩く速度はかなり遅い。
落ちてしまった急な斜面に沿って歩きつつ、上に向かっていけるような傾斜の緩やかな所がないかを探しつつ、笛を吹いていると斜面の上の方から声がした。
「おい! そこに誰か居るのか!?」
「その声はレオンか! そこの斜面から滑り落ちてしまってね! 助けを呼んできてもらえるか!」
「分かりました! アデリーナ様とララ嬢もそこにいらっしゃいますか?」
「ああ、居るぞ!」
「それと怪我人はいらっしゃいますか?」
「足を痛めてしまった者が1人居る」
レオンはそこで待っていて下さいと言って急いで助けを呼びに行ってくれ、15分程待っていると教師や騎士達が来てくれてロープを上から投げてくれた。
「さあ、リーナ掴まってくれ」
「私は後でいいわ、先に怪我人のララを引き揚げて欲しいの」
「わかった」
騎士達の掛け声がしたあと、ララが無事に王太子に支えられながら引っ張り上げられたのを確認して安心していたら、王太子がまた下りてきた。
「どうして、アルフォード殿下がまたくるのよ」
「他の男が君が触れると思うと耐えられないのでね」
「だからってわざわざ危険を犯すだなんて」
悪態をつきながら私は王太子に抱えられつつ縄を掴む。
「アルフォード殿下」
「なんだい?」
「ありがとう、助かったわ、あなたが居なかったら最悪な事態は免れなかったわ」
「それは、どういたしまして、惚れた?」
「それはありませんわ!」
そして私も無事に上に戻る事ができララと生還できた事を喜び合ったのだった。