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空城の計?

王太子と同じクラスでさらには隣の席で監視されているという最悪な新学期をスタートさせてしまった。


あれから王太子は基本的に私の側から離れなかった所為でララと作戦を練り直す事が出来なかったが放課後になれば王太子は生徒会長の仕事があって監視を切り上げるしかないようで私はその隙を狙ってララと密会をすべく学園で1番目立たない場所にある裏庭のベンチに2人で来ていた。


「春の出会い作戦は失敗に終わったけど次の作戦はうまくやるわよ」

「もう王太子殿下を誑かすのは諦めた方が良いのでは?」

「何を言ってるの! まだ始まったばかりじゃない」

「既に王太子殿下は特定の方にご執心のように見えましたが?」

「あら、そうなの?」


もしそうならその特定の方とやらを探ってその方との仲をうまく応援して私が綺麗に退場すれば良いだけじゃないか。


希望が見えてきましたわね。


「それで、その特定の方というのは誰?」


私がそう言った瞬間、ララがこれでもかと大きな溜息を吐いた。


「私の口から言うべき事では無いかと思います」


何だそりゃ。


「まぁいいわ、特定の方とやらは分からないけど恋にはライバルがいた方が燃えるっていうものよ」

「はぁ」

「という訳で、王太子のララへの好感度を上げるためにララにはお使いに行ってもらうわ」

「お使いですか?」


私は今日の昼、トイレに行く時に偶々拾った生徒会の資料をララに渡す。


「これを生徒会室に届けに行くわよ」

「落とした資料を届けるだけでは、そんなに好感度は上がらないのでは?」

「今日のこの時間、生徒会は講堂の方で仕事をしているわ」

「それだと生徒会室は無人で尚更意味がないのでは?」

「無人だからこそ行くのよ、そして王太子が来るまで待って、困ると思ったからずっと待ってましたって言うのよ」


大事な書類を拾ってくれたばかりか無人の生徒会室で待っていてくれるなど好感度アップ間違いなしだ。

公爵家のメイドである事がバレてこちらから誘惑するのはちょっと不味い状況になったがバレない程度に好感度を上げていき王太子の方から仕掛けさせれば問題は無い。


そうして私達は生徒会室を目指して歩きだしたのだった。


「あら、扉が半開きじゃないの、不用心ね」

「中には誰も居ないみたいですね」


もしかして鍵が掛かっているかもと心配していたが鍵どころか扉を半開きにしたままにするなんて逆に心配になるわね。


「まぁ、私達には都合が良いし入りましょう」


生徒会室の中に入るとしっかりと整頓されていて王太子の性格が出ているようだ。

講堂の片付けはまだ時間が掛かるだろうし折角なら生徒会の弱みを握るのも良いかもしれないと思い立ち、机の引き出しなどを手当たり次第に物色していく。


「ララ、あなたも何か弱みになりそうな物を探しなさい、あの王太子なら不正の一つや二つ出てきてもおかしくはないわ」

「私は嫌ですよ、ただでさえ危ない橋を渡っているのにこれ以上危ない事はしたくありません」


そんな言い合いをしていると、鍵を掛け忘れるなんて僕とした事が中々の失態を犯してしまったなぁと講堂に居るはずの王太子の声が廊下から聞こえてきた。


私とララは咄嗟に顔を見合わせると私は部屋の隅にあった掃除ロッカーの中へ隠れ、ララは落し物の書類を持って扉が開く瞬間に備えた。


「おや、君は公爵家の?誰も居ない生徒会室で何をしていたんだい?」

「この書類を拾ったのでお届けに来たのですが誰も居ませんでしたし不届き者が入って来るかもと思ってお待ちしておりました」

「それはすまない事をしたね、礼を言おう」


王太子はララに感謝を伝えると何故か黒い笑みを浮かべた。

あれは私もララもよく知っている企み事がうまく行った時とかに浮かべるような表情だけど王太子はどうしていまその笑みを浮かべたのだろう?


王太子は学園という場所なので、褒賞を与えられないのが苦しいが気をつけて帰ってくれとララを見送ると部屋の内側からガチャンッと鍵をかけた。


鍵をかけ忘れたなら外側から掛けないとダメでしょう!と内心でツッコミを入れながら王太子はもしかしてこれから誰にも見せられないような事をするのではないか?という期待が湧いてくる。


弱みを握るチャンスだと私はロッカーの隙間から王太子の行動をよく観察する。


どうやら王太子は何やら探して物をしているようでカーテンの裏や机の下を覗き込んでいる。


私はそれを見て冷や汗が止まらなくなり始めた。


部屋に鍵をかけてまで何を探しているのかは知らないが探し方を見る限りそれは結構大きな物じゃないかと思う。


そうなると私が今入っているロッカーが開かれる可能性は非常に高いのだ、もし助かる道があるとしたらロッカーを開く前に探し物が見つかる事を信じるしかないわね。


しかし、足音が近づいてきて、私の祈りが届く事はなく無常にも私は眩しさに目を細め、王太子は微笑みを浮かべたのだった。


「こんな所で何をしているんだい?リーナ」

「…………ロッカーの点検?」

「随分と下手な嘘をつくんだね」


王太子はおもむろに近づいてくると私の両腕の下に手を差し入れて持ち上げると抱きしめてきた。


「な、何をするの!」

「生徒会室に理由もなく勝手に侵入しちゃう子にはお仕置きをしないとね」


耳元で囁くように喋る王太子に私は何とか拘束を振り解こうと抵抗するがビクともしない。


「生徒会は今、人手が足りなくてね、リーナがもし忙しい僕を想って助けに来てくれたならお仕置きは無しにしてあげるよ」

「そう、そうなのよ!私は生徒会を助けに来たのよ!」

「ありがとうリーナ、助かるよ」


こうして私は生徒会室から無事に脱出するのと引き換えに生徒会長補佐という全く嬉しくない肩書きが付いた上に放課後すら王太子の監視下におかられる事になってしまったのだ。


ちくしょう……

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