婚約破棄されてしまいましたが、別にそれはいいんです。でも浮気をしたのはあなたですよね? それは認めてほしいんですがね王太子殿下。
「この調べによると、王太子殿下が、転校生マリアンヌ・エトワスと不義をしているのは確実です」
「そう」
私は侍従から調査結果を聞きながら、やはりねえとため息をついてしまいました。
私は王太子殿下の婚約者のアイリーン、しかし最近どうも殿下の様子がおかしいと侍従に調査をさせたところ、彼が転校生の男爵の娘のマリアンヌさんと浮気をしていたことがわかりました。
「……どうも、あなたを追い落とす画策をしているようですがお嬢様」
「まあそんなところでしょうね」
覚悟がない、頼りないそんな王太子殿下のことがかわいいなんて思っていた私がバカでした。
私が支えればいいわなんて、おバカさんなアイリーン。
「そうね……私に無実の罪をきせて、婚約破棄の上、断罪ってところでしょう。罪状は、マリアンヌさんをいじめたとか」
私が陳腐な思い付きを言ってみて、ああこれなら彼がやりそうだなと思い、頭が痛くなってきました。
マリアンヌさんがやらかしたマナー違反をいちいち指摘していて、泣かれたこともあり、あれをいじめたとそういえば吹聴していたなあと。
「……クラウス、どうしましょうかねえ」
「そうですねお嬢様、その前にあなた様が動くべきかとお嬢様」
「……やはりそうですね」
あれとて一応王太子、捏造した証拠といえども出されたら従うものもいるでしょう。
私は仕方ないとばかりにため息をついて、対処するべく動き出したのです。
侍従のクラウスを伴って……。
「アイリーン、お前がマリアンヌをいじめ……」
「いじめてませんし、証拠もあります」
彼が動くという情報を手に入れたので、私は証拠を集めて、それを待っていました。
というか……これやっぱり陳腐ですわあ。舞踏会で私を指さし断罪する殿下、その横にはマリアンヌさん。
「へ?」
「いじめてません、これがその調査結果、教師や学院長のお墨付きです。あと、婚約破棄は私からお願いをします。私、不実な方は嫌いですの」
少し言葉を濁しつつ、あなたが浮気をしているのは知っているからこちらから婚約破棄をします。というのをこちらから宣言をします。
私は証拠の書状をクラウスから受け取り、それを翳して証拠ですと皆に示します。
「陛下には破棄をしてもいいとおっしゃってくださってますし、よかったですわねえ。殿下、あ、元婚約者様ですわね。どうかお幸せに。それから殿下の称号はもうありませんわ。次の王太子には第二王子がなるそうです。よかったですわねえ。王太子の重圧がなくなりましてよ」
私はドレスの裾を持ち上げにっこりと笑います。書状はクラウスに託し、そしてやっと重圧から解き放たれましたわねとまた笑います。
「……え、え」
「王太子じゃないなら、媚びを売っても仕方ないわね……さようなら。レオン様~」
ひらひらと手を振って立ち去ろうとするマリアンヌさん、うふふあなたも逃がしはしませんわ、私は衛兵と手を上げます。
「え、え? なんで」
「不義密通の罪により、あなたは断罪され、男爵預かりです。あ、お父様はあなたの男爵の娘の地位を取り上げ、修道院送りにするっていわれておりましたわ」
クスクスっと私は笑ってみます。するとこちらを青い顔で見るマリアンヌさん、衛兵に引きずられ退場していきます。
それを呆然と見ているレオン様。
「……ではさようなら、これにて閉幕ですわ」
私はさようならとレオン様に別れを告げて、会場を後にします。
やっとあれのおもりをしなくてよくなったので、そうですわねえ、旅行でもしましょうかしら。
「クラウス、そうですね、前に行きたいと思っていたのですわ、フェリルの別荘に行きたいですわね」
「ご用意をしております。どうぞ馬車に」
「ありがとう」
クラウスの手を取り、私はにこりと笑います。馬車の用意もされていました。
有能な侍従のクラウスは私のそばにずっといてくれる。
「あなたは私のそばにいてくださいね」
「ええお嬢様、私はずっとお嬢様といっしょにいますよ」
「ありがとう」
さすがに疲れましたわ、私はため息をつきつつ、クラウスの手を取り馬車に乗りました。
あれと離れて少しすっきりしたのかもしれませんわ。
……ありがとうクラウス、ずっとそばにいてくれて、あなたがいたから今回のことも耐えられましたわ。
私は黙って書状を手に、これからどうするかを話すクラウスを見ていました。
彼がこちらを見てにこりと笑い、ずっとおそばにいますよといって笑ったのでした。
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