柿の実となる
また柿の木を訪ねた。
その実が色づいていた。
すっかり朱色になって、
熟してきている。
ここまで熟しているとは
思っていなかった。
鳥に食べられるだろうと、
熟すことなど想像しなかった。
まともに育っていても、
それが当たり前のことでも、
途中で駄目になると、
どこか、思いがちなのだ。
人間に対しては特にそうだ。
この人もあの人も、
みんな散り散りになっていくと、
心のどこかで見越している。
果たして、そんなものだろうか。
人間は、柿の実のように、
熟しきれないのだろうか。
ただ年をとることではなく。
熟さず、まだ何も知らないのに、
熟せず、まだ何も話してないのに、
時ばかり過ぎるのは何故だろう。
後少しで、今年も終わる。
やっぱり、帰らなきゃ
自分が自分でいられる所へ。
熟して、甘くなって、落ちて、
柿の実となる所へ。
そこから新しい芽を生み、
新しい時代の、心のきっかけに
なれるなら、それは嬉しい。
そのために書き続ける、嬉しい。