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【第9話】王とご対面!俺を見た反応が〇〇すぎる

「おはようございます、光さん。 ちゃんと時間通りに来てくれましたね。」


「...うっす。」


朝から女の子と待ち合わせなんて、高校に通っていた時なら起こり得ないイベント。


照れ臭そうにしながらも、挨拶を返す光。



昨晩、光はベッドに横たわると、気を失う様に眠りについた。


飛行機の墜落事故、異世界転生、クラスメイトとまさかの再会、正体不明の魔法、勇者、カノープスとの死闘、王様との対面。


あまりにも濃すぎる内容であり、尋常じゃないほどに疲れていたのだろう。



「じゃあ、早速行きましょうか。 王都ニヴルヘイムへ。」


「その...二ヴなんちゃらってとこには徒歩で行くのか?」


光の質問に、シルヴィアは「へへーん」と得意気な表情で答える。


「なんと、昨日のうちに馬車の手配をしておきました!」


(聖人な上に仕事まで抜かりないとは...これが噂に聞く完璧超人ってやつか)


二人は近くに待機していた馬車に乗り、王都へと向かう。



今朝からシルヴィアは機嫌が良く、昨日よりも口数が多い。


朝食のメニューや泊まった宿の話、馬車から見える外の景色についての話など、とにかくよく話す。


光が勇者であると信じる様になったことで、多少肩の荷が下りたのかもしれない。


きっと、これが本来の彼女の姿なのだだろう。


(美少女、馬車、草原、変な魔物...異世界ってすげえや)


そうこうしているうちに、目的の王都ニヴルヘイムに到着。



~王都ニヴルヘイム にて~



「うっわ...これはまた凄いファンタジーっぽい街だな。 なんか門番みたいのまで居やがる。」


「来てくれたお礼に、あとで街を案内しますね。」


シルヴィアの顔パスで王都の門を呆気なく突破し、二人は城を目指して進む。



当たり前だが、マール村に比べると活気がケタ違いだ。


人の数は何十倍にも及び、建造物の大きさや外観は目を奪われるほど綺麗である。


日本に居た時も田舎住みだった光は、都会の空気に慣れておらず、特に落ち着かない様子。



「着きました、ここが王城です。」


シルヴィアは先程までの楽しそうな様子とは一変、真剣な表情に変っていた。


彼女のオンオフの切替の早さは、さすが王女といったところだろうか。



(あ、いざ城の前に来てみてると緊張する...どうしよう、質問とかされても答えられねえよ絶対...)


「では、お父様の所へいきましょう。」



そう言うと、シルヴィアは身に付けていたフードをフワッと外した。


光に素顔をハッキリと見せるのは、これが初めてだろう。



(.....オーマイゴット)



予想していた通り、シルヴィアはとんでもない美少女だった。


くっきりとした大きな目、吸い込まれるようなグレーの瞳、整った輪郭、肩くらいまで伸びた綺麗なピンク色のミディアムヘア。


そして、チャームポイントの左サイドの三つ編み部分によって、美しさだけでなく可愛らしさまでも存分に備えている。


(俺、こんな子と一緒にクエストに行ったり、飯食ったりしたのか...冥土の土産になるぜ...既に一回死んでるけど)




~ニヴルヘイム城 にて~



城の中へ入ると、メイドや王直属の騎士団だと思われる兵士が挨拶を交わしてくる。


意外にも、光について言及してくる人間は今のところはいない。



しばらく足を進め、王室へと繋がる廊下に辿り着くと、シルヴィア達の前に一人の男が立ち止まった。


「殿下、ご無事でなによりです。 ところで...隣の彼は一体?」


「ごきげんよう、ダグラス団長。 この方が例の勇者様です。」


シルヴィアがそう伝えると、ダグラスと呼ばれた男は光を鋭い目で睨む。


(...なんだこのおっさん。顔が怖えよ)


光は勇者っぽいとはお世辞にも言えない外見の為、怪しまれても仕方ないだろう。



「そうでしたか、これはご無礼をお詫び申し上げます、勇者様。」


意外にも、光を卑しめるようなダグラスの態度はすぐ元へ戻り、謝罪と共にシルヴィアに頭を下げ、この場から去って行った。



「なんか睨まれたんだけど。」


「ごめんなさい、あの人は凄く真面目だから、少し警戒してしまったんだと思います。」


(......警戒っていうか舐めてるだけだよな、あの態度。)



城に来て早々にあんな対応をされてしまっては、連れてこられた身としてはいい気はしない。


いつか必ず、何らかの形で仕返しをしてやろうと心に誓った光であった。




「では、行きますよ光さん。」


気付けば二人は王室の前まで来ていた。


光は唾をごくっと飲み、もうどうにでもなってくれと言わんばかりの顔で王室に足を運んだ。



「シルヴィア=ルー=エルグラント、只今帰還いたしました。 そして陛下、彼が予言の勇者様で間違いありません。」


続いて、シルヴィアは光に「挨拶して!」というアイコンタクトを送る。


「あ、えっと、あの、三刀屋 光と申します...この度はお日柄も良く―――」


「そんなに固くならんで良い。 気を楽にしてくれたまえ、勇者殿。」


思っていたより、王はラフな感じだった。


もっと厳しくて、無礼があろうものなら処刑にされてしまうような、そんな人物を想像していた光は少しだけ安心する。



「シルヴィア、なぜ彼が予言の勇者であると推測したのか、詳しく説明しなさい。」


「はい。 それは―――」


シルヴィアは、光が予言にあった2つの条件に強く当て嵌まっていたことと、先日のカノープス戦での出来事を王に報告した。



「以上の点から、彼こそが予言の勇者だと私は確信しました。」


「ふむ...確かにある程度は納得できる内容ではある。 さて、三刀屋くんと言ったかな、ぜひ君の持つ黒い魔法とやらをここで見せて頂きたい。」


王からの振りに、予想は出来ていたものの、やはり緊張が走る光。


「か、かしこまりました...では―――」


光が全身に魔力を込めると、瞬く間に黒いオーラが体全体を覆った。


しかし、カノープス戦とは違い翼は出現しておらず、目なども通常時と変わっていない。


(さすがに自分の意思であの状態になるのは無理か...)


思った通りにいかず焦る光だったが、この場で失敗したなんて言うことも出来ない。


やり直しはせず、黙って大人しく王の反応を待った。



「これは...確かに黒い魔法だ...シルヴィアのように正確な魔力の大きさは測れないが、ただものでないのは私にも分かる。」


「おそらくですが、彼はまだ秘められた力の半分も出していないと考えられます。 実際、昨日のカノープス戦での彼の魔力は、少なくとも今の倍以上はありました。」


(シルヴィア、ナイスフォロー! だが、完全にはコントロール出来てないのバレちまったか...)



「そして実は、彼は魔法についての知識がほぼ皆無です。 その状態でこれだけの魔力を開放できるなんて、勇者でもない限りは有り得ません。」


シルヴィアの必死なフォローを王は真剣な顔で、頷きながら聞いている。



「そこで私から、大変身勝手ながらご提案があります。 彼を私と共に魔法学院へ入学させて頂きたいと思っています。」


シルヴィアの提案を聞いて、王の顔色が大きく変化した。


「...理由を聞こう。」


シルヴィアは固唾を飲んで話し始める。


「彼の勇者としての素質に疑う余地はありませんが、魔法の扱い自体は未熟であるため、今はまだ不安定要素が多すぎます。 ですから、魔法学院に通い基礎から魔法を学ぶことで、本当の意味での勇者になってくれるはずだと考えました。」



シルヴィアの返答に、何とも言えない表情の王はこう返す。


「それと、お前が魔法学院に通うことに何か関係があるのか? 学院で習うようなことは、既に全て習得済みだろう。」


「おっしゃる通りです。 しかし、彼には一刻も早く勇者としての実力をつけてもらい、時が来たらすぐにでも前線に出れるように準備をしておく必要があります。」


ふむ...と王は初めて声を出して相槌をした。



「その為には、彼の学院での取り組み方を監視する役が必要不可欠であり、その役割をぜひ私に担わせて頂ければと...」


(大丈夫なのかこれ...怪しくなってきてない?)


光は不安な顔でシルヴィアの方を見ると、シルヴィアもまた光と同じように不安そうな表情をしていた。


その綺麗で可愛らしい目と口が、プルプルと震えてしまっている。


(シ、シルヴィアさーーーん?!)



一方、王は一言では表せない様なとんでもない形相をしながら、無言で考え込んでいた。


その顔は怒りを表した表情なのか、喜びなのか、悲しみなのか、さっぱり分からない。



ただ一つ言えることは、とにかく怖い。


元より胃が弱い光は、時間が経つにつれ胃痛の自己主張が激しくなってくる。



思考を続けることおよそ5分。


ついに王がその重い口を開いた。



「その任務、この私が許可しよう。」



『ふぇっ?』



光とシルヴィアは同時に間抜けな声を出した。


「本当ですか?!陛下!!」


「ああ、勇者殿のことも勿論そうだが、お前自身も学院に通いたかったんだろう? それくらいは私にも分かる...娘だからな。」


(まじか、何か分からんけど上手くいっちゃったよ)



「.....陛下。 本当にありがとうございます。」


「お礼を言うのは私の方だ。 よくやった....我が娘よ。」


顔を下に向けている為、ハッキリとは見えないが、シルヴィアは涙目になっていた様な気がする。


今の時点では、その涙に隠された意味までは分からない。



ともかく、今は王の説得が上手くいったことに対して素直に喜ぶべきだろう。



「勇者殿。」


「は、はい!!」


王に呼ばれ、声が裏返る光。


「君には期待している。 勇者としても、娘の友人としてもだ...頼んだぞ。」


「ご期待に応えられるように、精一杯努力します.....」



この後、王の推薦によって光の入学費用や手続きは免除されることになり、明日の入学式にも間に合うことになった。



(学校自体は大嫌いだけど、俺は強くならなきゃいけない。 ここまで来たらやるしかねえ)



こうして、光は無事勇者として認められ、シルヴィアと二人で学院への入学も許可して貰えたのであった―――

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