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【第81話】エルグラント王国 過去編④

(シルヴィアだけじゃなくて、ガーネットまで呪術とかいうの持ってたのかよ......でも、それなら何で俺と戦った時に使わなかったんだ? どんな魔法でも無効化できる最強の能力なんだろ?)


国王の話を聞いている中で、光の中に浮かんだ一つの疑問。


ガーネットが聖なる(セイクリッド・)浄化の光(リペレイション)とやらを本当に扱えるなら、そんな強力な力、光との戦闘時に使わない手はないはず。



何らかの発動条件や制限などがあるのだろうか。


シルヴィアは魔力感知の力を比較的自由に使用している様に感じたが、同じ呪術でもモノによって条件が異なるのだろうか。



いずれにせよ、一人で考えたところで答えが分かる話ではないだろう。


その辺りの解説がこの後に出てくることを期待し、光はひとまずこの疑問は胸にしまっておくことにした。



「以降の話は、実際にシルヴィアとグナンと共に行動をしていたダグラスの方が詳しい。 ではダグラス、頼むぞ」


「はっ!!!」


国王が不意にそんなことを口にすると、一歩引いていたダグラスが前に出てくる。



どうやらこれ以降は、演説者がダグラスに切り替わるらしい。


「陛下が仰った通り私は当時、殿下とグナン団長と共に、豹変した団員達を救済すべく都内を駆け巡っていました―――――――」




~5年前 ニヴルヘイム城にて~



『ダグラス曹長、やはりここにもいました!! あれを見てください!!』


「あれは確か、ブルーノ班所属の二等兵か........なんてことを.......クソォッ!!!」


城内に侵入し、壁や扉を荒れ狂う様に破壊し続ける狂団員たち。


そんな彼らを抑えるために、私はやむを得ず剣を振るいました。


同胞を手にかけるなんて愚行、考えたくもなかったです。



しかし、そうでもしなければ最終的に陛下と殿下の命に関わる。


だから私は心を鬼にし、何名かの同胞の心臓を貫きました。



『キヒヒヒ......ダグラス.......くたばれェ!!!』


かつて私の部下でもあった団員にまで、私は剣を向けられました。


ですが、元部下とはいえ見逃してやることはできません。



「........許せ」


私の喉に襲い掛かる剣を弾き、魔法で彼の命を絶とうとした、その時でした。



「待て!!! ダグラスッ!!!!!!」


「ッ!!? 団長!?」


殿下を連れ、大急ぎでこちらに向かってくるグナン団長の姿を見たのです。


私は魔法を打つのをやめ、元部下を羽交い絞めで抑える方向に移行しました。



団長は殿下をこんな危険な場に連れ出して、一体何をするつもりなのか。


私はその意味を、数秒後に理解することになりました。



「シルヴィア様!!! 彼に"あれ"を!!!!!」


団長がそう言った直後。


殿下の小さな身体が、まるで神聖なる光に包まれているかのような輝きを放ったのです。



「こ、これは......まさか......!!!」


その光は次第に殿下の右手一点へ、吸い込まれるように流れていきます。



「.......準備はこれで終わり。 どう?案外綺麗なものでしょ?」


「シ、シルヴィア様.......」


「はいはい分かってる分かってる........じゃあやるわよ」


そう言って殿下は、右の手の平に生成されたダイヤモンドの様に輝く光玉を、私が抑えていた元部下の胸部に優しく触れさせました。


すると、目を開けることさえ困難なほどの眩しい光が、彼の身体全体を包み込み、


その刹那、彼の目にどんよりと漂っていた闇の気が、何事も無かったかのようにフッと消え去ったのです。



『......あれ、俺は何で城の中にいるんだ......?......さっきまで確か港で帝国軍と.......って、殿下ぁ?!』



結果は成功でした。


殿下の聖なる(セイクリッド・)浄化の光(リペレイション)は、元部下に乗り移っていた正体不明の妖魔を見事に振り払ったのです。



「なんとお美しい輝きなのでしょうか......これが殿下の中に眠るお力......素晴らしい......」


私はその輝きに、思わず見惚れてしまうことになります。


これほどまでに美しいものが世の中に存在していたなんて、と子供の様に目をキラキラさせながら、殿下の右手をしばらくの間見続けてしまいました。



しかし、今は感動している時間などありません。



「シルヴィア様、やはり成功した様です!! 城の外で苦しんでいる団員達の所にも急いで行きましょう!!」


「もう、だから言われなくてもわかってるわよ。 でも念のため、ダグラス達にも来て貰った方がいいと思うわ」


殿下は有難いことに、私共にそう言ってくださいました。


私の班は、私を含めて計5名。



中には、当時殿下と同じく10歳になったばかりのレイリス少年もいました。



「それもそうですね......ではダグラス班、これから私と殿下共に行動することを許可する!!! ゆくぞ!!!!」


『はっ!!!』


こうして私とレイリスは、団長と共に団員達の救済に向かったのです。



また城内を移動中、同世代の殿下とレイリスの間にこんな会話がありました。


「あらレイリス、あなたもここに居たのね。 全然気付かなかったわ」


「はい!!! 僕も殿下をお守りする為、全身全霊を注いで戦います!!!」


「そう。 それよりルーナは今どこにいるの? ちゃんと安全な場所に避難させてるんでしょうね? もしあの子になにかあったら絶対許さないから」


「確かルーナは一般の民と同じく、避難用の船舶へ早々に移動させていますので、大丈夫かと.....」


「ふーん、ならいいけど。 はーあ......こんなくだらない戦争なんてさっさと終わらせて、私は早くルーナに会いに行きたいわ。 せっかく夕方から二人きりでティータイムを過ごす約束をしてたのに」



当時、城のメイドとして雇っていた現シルヴィア様を、殿下は溺愛していました。


同世代の少女ということで、何か通ずるものがあったのでしょう。


それはもう傍から見たら、本当の姉妹としか思えないぐらいの仲の良さでしたよ。



殿下はご両親以外に心を開かない方だったのですが、現シルヴィア様に対してだけは、まるで人が変わったように明るく、年相応の少女といった感じで接していましたね。



私達はそんな殿下の姿を日々微笑ましく見守っていました。



「殿下......どうか無理だけはなさらず、何かあれば私共に何なりとお申し付けください.......」


「急になに? あなたは本当に心配性ね、ダグラス」


この時、私も陛下と同様に嫌な予感がしてなりませんでした。



殿下へゆっくりと迫る一人の男の影が、不意に見えた様な気がしたのです。

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