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【第77話】二度目の来城

~フォルティス魔法学院 特別合宿所 入口にて~



("足"ってこれかよ............なるほどな、一本取られちまったぜ)


レイリスに言われるがまま、荷物をまとめて集合場所に来た光はそんな台詞を心の中で呟く。


行きの手段がまさかの馬車だったので、この世界の公共交通機関はもう「そういうもの」だと思っていたのだが、さすがは王直属の騎士団ヘカトンケイル。


用意してくれた移動手段は、なんと空間転移魔法だった。


これでこそ魔法、これでこそ異世界だと、一人で勝手に納得をしながら光は二回頷く。



「では皆、頼む」


『はっ!!』


レイリスがそう言うと、彼の部下と思われる5人のサイキックが、転移用のゲートを一つずつ作成した。



「んじゃお先~」


「うげー、僕あんまりこれ好きじゃないんだよなあー......入るのやだなー........」


「あはは........すぐ終わりますから.........」


まずは九条、ナギサ、シルヴィアがそれぞれゲートに身を運び、時空の間へと消えていく。



(よし、じゃあ俺も行くか.........)


光は彼女らを見送った後、自身も続く様にゲートへ片足を踏み入れようとするが、


「.......待て、三刀屋 光」


「あ.....? 今度はなんだよ?」


なぜかレイリスに呼び止められてしまう。



また変なことを言い出すんじゃないかと光は少し警戒するが、その内容は意外なものであった。



「貴様には、一生かけても返せないくらいの大きな借りを作ってしまったな。 本当に心から感謝している」


「なにを言い出すかと思ったらそんなことかよ。 普通に気持ち悪いな」


「あの場に居ながら、結局僕は最後まで何もできなかった。 もし貴様がいなかったら、シルヴィアはあのまま―――――」


「いや、そういうのいいからマジで。 ったく、俺は先に行くぞ」


「なっ! ま、待て―――――」


「........お前も遅れんなよ」


話の途中にも関わらず、光はそう言い残して先にゲートに入ってしまう。


照れ隠しなのか何なのか分からないが、相変わらずのコミュニケーション能力だ。



「なぜあの男は最後まで人の話を聞かないんだ.......しかし奴らしいといえば奴らしい反応、か」


対してレイリスは、ほんの少しだけ笑みを浮かべながら一言そう呟き、光を追う様に自らもゲートに入っていくのであった。




~エルグラント王国 ニヴルヘイム城 にて~


「ねえ見て鈴音!! あそこに置いてある鎧めっちゃダサい!!!!!」


「うわマジじゃん、ダッサ、ウケる。 ここの人たちのファッションセンスどうなってんの。 私が一から教えてあげようかな」


慣れ親しんだ王都に戻ってきた光たち一行は、レイリスによって王が待つ城へと案内されていた。



『シルヴィア様、レイリス様、お戻りになられたのですね。 お元気そうで何よりです』


『風の噂でお聞きしたのですが、"例の件"は本当なのでしょうか.....?』


城の中ですれ違う人々は皆、シルヴィアとレイリスに深く頭を下げつつ、軽い挨拶をして去っていく。


シルヴィアは当然として、レイリスもここではかなり上の立場の人間だというのが、これを見ると改めてよく分かる。



近頃はすっかり「口うるさくて面倒臭い厄介なクラスメイト」のイメージが定着していたが、彼は若干16歳にして王直属の騎士団No.3に上り詰めた天才なのだ。


光をはじめ、ディアボルスのメンバーは彼に対してもう少し敬意を払うべきなのかもしれない。



「ナギサくん、九条くん、こちらへ来て貰ってもいいかな?」


遊園地に来たかのようにはしゃぎ動き回るナギサと九条を咎めつつ、レイリスは次の指示を出す。


「では僕とシルヴィア様はこれから、陛下に一通り報告をしてくるから、三人はそこの部屋で待っていてくれ」


「了解。 んじゃ、またあとで」


光とそう言葉を交わすと、レイリスとシルヴィアは王室のある方へと歩いていった。



「さて、待機してろって言われたし、早速俺らもあの部屋に――――――」


そう言いながら光は後ろを振り向くが、ナギサと九条の姿がどこにも見当たらない。


(.......嫌な予感がする)


なんとなくデジャブを感じた彼が、眉間にシワを寄せながら辺りを見回すと..........



「ちょっ、ナギサっち見て見て! まるで人がゴミの様に見えるよ!!!」


「ほんとだ! ちっちゃ!!! あ、てかうちの神宮ここから見えるんだ、なんか変な感じだなー」


「え、ナギサっちって神様なの!?」


「ハッ?! しまった、僕としたことがつい口を滑らせてしまった......まーでもバレちゃったらもうしょうがないかー、かっー、できれば知られたくなかったんだけどなー、かっー!!」



光がいる位置から少し離れた所にある大きなアーチ窓の前で、これまたやかましく騒いでいる二人の姿があった。



(あいつら.......洞窟の時のあれといい.........なぜいちいち騒がないと気が済まないんだ.......)


"陰"の人間である光には、彼女ら"陽"の思考が理解できない。


とにかく王の関係者の方々に目を付けられたら困るので、すぐに黙らせるべきだろう、一般常識的に。



「かっー、神様はつれーわーーー! いやマジでつれー........わぁ?」


「アホなこと言ってないでさっさと来い。 あと、次やったら前みたいに蜘蛛召喚するからな」


「くっくも?!......くも........くもは嫌です.........くもだけは絶対嫌です.........」


光の忠告に、ナギサは過去のトラウマを思い出したのか、ガクガクと震えあがり途端に大人しくなった。


まさに効果覿面である。



「んー......? あ!そういえば.........」


ここでふと、九条は何かに気が付いたからしい。


そして彼女は突然わざとらしく首を傾げ、頬に人差し指を当てるポーズを取りながらこう言った。


「三刀屋ってさー、なんかナギサっちにだけやけに厳しいって言うかー、なんかちょっかい出す回数多くなーい?」


「..........いや、別に」


「だってお前って基本自分からは話し掛けないじゃん? でもナギサっちには結構グイグイいってるじゃん? つまりおかしいじゃん?」


「まーこんな問題児、他にいないからな。 必然的に注意する回数も多くなるだろ」



光が冷静にそう返すが、九条はイマイチ納得がいかないと言った様子で唸り出す。


「いやそういうことを言ってるんじゃなくてさー、なんかあれなんだよなー。 なんていうの、こういうのって?」


「さあ........」


ハッキリしない物言いの九条に、光は呆れながら一人で待機室へと歩いていく。



そんな彼の後ろ姿を見ながら、お返しとばかりに呆れた様子で溜め息をつく九条。


「うーんさすがは三刀屋 光、恐ろしくノリが悪い。 あいつ高校の時、どうやって毎日過ごしてたんだ? てか教室にあいついたっけ.....? ま、いいや、ナギサっち、ウチらもいこっか」


「........ほーい」


そう言って、ナギサと九条の二人も待機部屋とやらに向かった。

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