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【第47話】しばしの休息!になるはずだったのだが.....

時刻は18時00分。


森の中はすっかり暗くなり、一日目のゲームが終了を迎えていた。


ナギサとの対決以降も、光たちは一度も敗れることなく順調に戦い抜き、バッジは合計で11枚集まった。


結局、シルヴィアのパーティーとは一度も遭遇しなかったが、文句なしの戦績だろう。



そして今は、メンバー全員で今夜の野営地を探しているところである。


「やっぱさ、野宿するならあそこしかないっしょ!」


レットがそう言いながら指差す場所は、大きな入口がひときわ目立つ、海岸近くの洞窟だ。


一応、サバイバルのスタート地点でもあったエリアである。



「そうねー、他に行く当てがあるわけでもないし、あたしもここで良いと思う。」


「うん、私もここでいいけど...三刀屋くんは?」


「.....ん? ああ、俺は別にどこでも構わない。 君達に任せる。」


「どうした三刀屋? あんなに勝ちまくりだったのにテンション低いな。」


「.....疲れてるだけだ。 気にしないでくれ。」



ゲームが終了してからというものの、なぜか光は空気の抜けた風船みたいにボーっとしていた。


長時間リーダーとしてチームを引っ張ってきたことで、心身ともに疲れてしまっているのだろうか。


会話にも全然入ってこない為、気に掛けていたカトレアが話を振ったのだが、相変わらずの様だ。


「他人とあまり話さないのはいつものこと」だとか言ってはいけない。



「ならいいけどよ。 じゃあここで決まりってことで! とりあえずテントとか送ってもらおうぜ!」


「人に任せてないであんたが先生に連絡しなさいよ。 男でしょ。」


「なんだとこの野郎.....俺はずっと囮役やってて誰よりも疲れてるってのに......」


「はあ?疲れてるのは皆同じなんですけど。」


「シズルちゃん...私が連絡するから喧嘩しないで...」


事あるごとに口論になっているこの二人。


ここまで来ると、むしろ仲が良いのではないだろうか。


仲介役のカトレアがいなければ、そのうち本気の喧嘩に発展しそうではあるが。



「......これで良し、と。 連絡終わったよー、約5分後に転移させるとのことです!」


「ありがとうカトレア~~~、ほんといつも可愛いなあお前は!!」


「もう、やめてよシズルちゃん...三刀屋くんたちも見てるんだから。」


恥ずかしがりながらそう言うカトレアだが、シズルに抱き着かれてまんざらでもない様に見える。



場所と道具の手配が済んだら、次は食料の調達だ。


この森には、果物・山菜・魚などの一通りの食材が採取できる。


実はこれも授業の一環であり、ただのお楽しみタイムではない。



この世界では森で一夜を明かすというのは良くある話らしく、生徒の大半が一度は経験することになるとセシルから言われていた。


その際に、食材の集め方や調理の仕方、その他諸々のスキルが身に付いていないと話にならない。


だからこそ今のうちに少しでも慣れておくように...という意図がこの授業にはある。


特に、ギルドに所属しクエストで生計を立てていく場合は必須とのことだ。



「よっしゃ、じゃあどんな感じで役割分担する? やっぱ魚は食いたいよな~。」


「適当に二人ずつで海チームと森チームに分けたら? あ、でもあたし魚触れないから海はパスで。」


「いや、魔法使っても良いって言われてるんだから得意の超能力でなんとかしろよ。」


「ハァ?! 素手だろうが何だろうが嫌なもんは嫌なの!」



相変わらずのバトルを繰り広げる二人を余所に、ここでカトレアが遠慮がちに手を上げる。


「わ、私は魚釣り得意だから海がいいな...。」


「お、じゃあカトレアはそっちな!! 俺は森の方が魔法を活かしやすいから森が良いんだけど....相方がなあ。」


「なんですってぇ......あたしだってあんたなんかと一緒とかお断りよ!!」


「え、えっと.....じゃあ三刀屋くんはどっちがいい?」


カトレアがそう尋ねると、メンバー三人の視線が一斉に光の元へ集まった。



次に光が発する言葉によっては、また例の二人が喧嘩を始めることだろう。


皆が注目するその答えは何なのか、ついにその重そうな口を開く。


「あー....俺は少しゆっくりしたい気分だから、出来れば釣りの方がいい。」


「じゃあ、私と三刀屋くんがペアで、シズルちゃんとレットくんのペアでいいのかな?」


「まあそれでいいんじゃねえか? 早く飯食いてえし、文句言ってられねえよ。」


「そうね.....悔しいけどそれに関しては同意するわ。」


彼らは朝の8時から何も口にしていないのだから、かなり空腹状態のはず。


森チームの二人が上手くやれるのか心配だが、背に腹は代えられない。


これで無事(?)ペアが決まったということで、各々自分たちの担当する場所へ進んでいった。



「カトレア~!! とびっきり美味しそうなの釣ってきてね~!!」


「任せてー! シズルちゃんも、レットくんと仲良くねー!」


「ったく....カトレアの奴、余計なお世話だっての。」


「はぁ? あなたうちのカトレアちゃんに文句があるってわけ?」


言った傍から不安要素しかないやり取りを見せられ、苦笑いするカトレアだった。



今晩の食事のクオリティは自分のたちの腕に掛かっている。


向こうのチームに負けじと、ビシっと気合を入れるカトレア。


「えっと、三刀屋くんって釣りしたことある?」


「いや、多分無い。」


「そっか! 私子供の頃よくやってて、結構慣れてるから任せて!」


「お、おう......」


カトレアと言えば「はわわ...」とか「ふえぇ...」みたいなイメージだったが、得意分野ともなるとここまで変貌するものなのか。


オタクが趣味の話になると饒舌になるアレに近いのだろうか。


ともかく、普段との温度差に光は少し戸惑ってしまう。



「そもそもこの世界の.....じゃない、この辺の人たちってどうやって釣りをするんだ? 魔法を使うんだろ?」


そう質問すると、「ちっちっちー」と言いながら人差し指を左右に振り、得意気な顔をするカトレア。


確かに、魔法が使えるこの世界でわざわざ釣り竿などを使って漁業をする必要は無さそうに思える。



「釣りに魔法とか邪道だよ三刀屋くん......玄人は釣竿一本に限る。」


「いや、魔法を使った方が早くないか......?」


「魔法を使うとお魚が痛んじゃうの! 分かってないなあ全く。 私が教えてあげるからちょっとこっち来て!」


「え、ちょ.....行ってしまった。」


カトレアは鼻息を荒くしながら、竿に使う材料を取りに向かう。


完全に面倒臭い奴と化しており出来れば関わりたくないのだが、ペアを組んでいる手前、放っておくわけにもいかない。


光は軽くため息をつきながらも、彼女の後を追った。



「はい釣り竿の完成!! どお?結構うまいでしょ?」


「.....まあ、即席にしては凄いと思う。」


「でしょでしょ?! これを使えば三刀屋くんだっていっぱい釣れるよ!!」


「ハハハ......だといいな。」


森に生えていた正体不明の植物のつる、丁度いい大きさの枝、変な気色悪い植物の棘、これら三つを使い見事な釣り竿が完成。


また、餌に関してはその辺にあった謎の木の実を使うとのことだ。


しかし、あの大人しいカトレアにこんな趣味があったとは、意外としか言いようがない。



ともあれ、これで準備は万全。


さっそく二人は海岸へ向かうと、座るのに丁度良い土手があったのでそこに隣り合って腰掛けた。



「多分だけど、この海ならマヤメとかジニマスとかが釣れると思うよ! しかも美味しい!」


「へ、へぇー.....詳しいな。」


「釣りに関しては自信あります! それでね、竿の持ち方なんだけど――」


遠足に来た子供みたいにはしゃぎながら、うんちくをペラペラと語るカトレア。


その姿を見ていたら、なぜだか昔よく川辺で一緒に遊んでいた木乃葉の顔を思い出した。



彼女との関係は、今ではすっかり元通り。


子供の頃のようにべったりくっついているわけではないが、それでも親友であることに変わりはない。


もう二度と話すことは出来ないのだろうと諦めていた時期もあった。


それが、まさか異世界転生という非現実的な事象のおかげで救われることになるとは、思ってもいなかっただろう。


(なんか最近、事あるごとにこの世界に感謝している気がする......心の中で)



「三刀屋くん、私の顔見ながらニヤニヤしてたけど、どうかした?」


「いや、別に。(やらかした...顔に出てたか...)」


「.....なんか授業中と違って、あんまり喋らないんだね。 でもこっちが本来の三刀屋くんなのかな?」


「ウッ.....ま、まあどちらかと言えば今が()かな。」


「やっぱりそうなんだ.....。」


確かに、作戦会議の時やサバイバルゲーム中の光は、口数が普段の10倍はあった。


しかし、それはあくまでリーダーとしての役割を果たす為に、指示を出したり作戦を練ったりしていたからである。


つまり、いわゆる業務的なやり取り以外でのコミュニケーションを取るのが苦手な「コミュ障」ということだ。


カトレアにそれを察せられてしまい、心がズキっとしてしまった。



それからと言うものの、魚が釣れる気配は一向になく、ゆっくりと時間だけが過ぎていく。


不思議と先程のやり取り以降、二人に会話は無く、カトレアも広い海の奥をただ見つめているだけ。



さすがの光もこの気まずさが耐えられなくなったのか、珍しく自分から話を振る。


「ま、全く魚釣れないな.....やはり魔法を使った方がいいんじゃないか?」


話と言ってもその場しのぎの適当な話題ではあるが、彼にしては上出来だろう。


しかし、波の音で聞こえなかったのか、カトレアは反応してくれない。



(.....え?無視?マジ?俺なんかした?)


見た目こそクールに決めているが、もしかして嫌われてしまったのではないかと、冷や汗が出てくる光。


だが、ここでようやくカトレアが口を開く。



そして、視線は海に向けたまま、どことなく切なそうな表情でこう言った。



「三刀屋くんってさ.....好きな人とか、いたりする?」


「.....は?」



全く予想できなかった完全に斜め上からの回答に、思わず変な声が漏れてしまった光。


何の前触れもなくカトレアが唐突に繰り出したこの発言。


それには一体、どのような意味が込められているのだろうか―――

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