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【第42話】4on4のサバイバル開幕?!気になるそのメンバーは...

元南ヶ丘学園の生徒たち一行は、学院が所有する合宿所に向け、馬車で移動している最中である。


合宿と言えば、学生にとってはかなりの一大イベント。


授業の一環と分かっていながらも、多くの生徒は全力で楽しもうとするだろう。


しかし、この物語の主人公・三刀屋 光は何故か今この時、これ以上と無い窮地に追い込まれていた。



「だからさぁ、あんたいつから鈴音や木乃葉と仲良くなったわけ?」


威圧するように足を組み、鋭い目でこちらを睨みながらそう聞いてきたのは、天谷 愛華だ。


ご存知の通り、光が元々通っていた高校で、カーストの頂点に君臨していた女である。


この世界に転生してからも、入学初日に一言交わしただけで、それ以降の絡みは一切無かった。



初めから「居ない者」として認識されており、きっと卒業までこの調子でいくのだろうと、そう思っていた。


光にとってはその方が都合が良く、むしろありがたい話だ。



そんな彼女から唐突に飛んできた質問、いや...尋問。


光はそれに対し、しどろもどろにも何とか答えていた。



「仲良くなったというか...九条と話すようになったのはFODの練習の時から...ですね。」


「ふーん...で、木乃葉は?」


「えっと、実は木乃葉とは小学生時代からの仲でして!ハッハッハ!.....ハハ.....ハァ.....」


こんな情けない男が、一国を救う勇者だと誰が信じるだろうか。


桁違いの強力な魔法を持っているにも関わらず、元々格上だった天谷には全く頭が上がらない。


シルヴィアが見たらどう思うだろうか、想像するだけで泣きたくなってくる。



「愛華ちゃん、そんな尋問みたいな聞き方しなくても...」


「そうだぜ、三刀屋は見た目こそアレだが、実力はマージで半端ないぞ。」


言葉に詰まり苦しんでいる様子を見かねて、木乃葉と九条がフォローに入ってくれる。


(.....助けてくれるのは嬉しいが、心を傷付ける刃がこっそり混ざっていたのを俺は見逃さないぞ、九条)



親友二人にそう言われ、「はぁー」と軽くため息をつく天谷。


今度は何を言われるのだろうかと、光はごくっと唾を飲み込む。



「や、別にいいんだけどさ...じゃあ何でアタシのことはスルーしてんのかって話。」


「...へ?」


天谷の言葉を聞いた瞬間、脳内に疑問符がいくつも浮かび上がる。


彼女の発言の意味が、すぐには理解できなかった。



(...え?どういうこと?は?)


頭をフル回転させ、唐突に提示された超高難度の暗号を解きにかかる。


しかし、基礎的なコミュニケーション能力が欠けている光には、中々答えが出てこない。


普通の人間なら考えるまでもなく、その意味は理解出来たであろう



脳内で必死に考えている内に、天谷は再び口を開き、こう言った。


「木乃葉と鈴音とは話す癖に、アタシだけ無視とは良い度胸してんな、お前。」


(な、なるほどな...)



ようやく意味が分かった。


高校時代、低カーストの人間を徹底的に無視し続けていたあの天谷が、まさかそんなことを思っていたとは。


異世界に転生して性格が丸くなったのか、元からそうだったのかは不明だが、これには意外の一言である。


かと言って、慣れ慣れしく話し掛けようものなら、恐ろしい仕打ちが待っていたに違いない。



「む、無視してるっつーか...そ、そう!タイミングが無かったんだよ、タイミングが!」


「同じクラスなんだからタイミングなんていくらでもあっただろ。」


「いやぁ...確かにそうかも...アハハハ.....」


機嫌を損ねない様、必死に誤魔化す。



それっぽいことを言っておけば丸く収まる場面だ。


光の対応は、誤魔化しとしては100点だろう。



しかし、空気を読めない女がここには2人もいた。


「愛華、こう見えて結構寂しがり屋だからな。」


「光くんと愛華ちゃん、絶対仲良くなれるよ!」


(なっ、馬鹿!余計なこと言うんじゃねえ!)



終わった。


この展開は、間違いなくキレられる奴だ。


そう確信した光は、恐る恐る天谷の顔を見る。


しかし、彼女の表情は予想していたものとは随分と違っていた。



「まああれだ、お前も数少ない元2-Aのメンバーなんだからさ、協力して生きていこうぜって話。」


(...なるほど、そっち系か)


天谷の主張には、素直に同意せざるを得ない。


この世界については、今もまだ分からないことが山ほどある。


光よりも三か月早く転生していたとはいえ、彼女も不安が尽きないことだろう。



本来は元クラスメイト同士、もっと協力し合うべきなのである。


実際、自ら一方的に他の転生者とのコミュニケーションを絶っていたことで、損していた部分も多々あった。


転生のタイミングがそれぞれ異なっていた件の話なんて、まさにそうだ。


光は腕を組み真剣な表情で二回頷いた後、天谷に言葉を返す。



「.....一理あるな。 分かった、今日から天谷には積極的に情報共有していくよ。」


ついに、元女王との友好関係を築くことに成功した。


謎の達成感からか、光はすまし顔で軽く微笑む。


この後、天谷から握手とか求められてしまうのだろう。


しかしそんな幻想は、非情にも一瞬にして打ち砕かれる。



「は?いや別に積極的とかそういうのいらねえから、キモ。」


「三刀屋、愛華はそこまで求めてないぞ。 察しろよ。」


「光くん、それはちょっと...ね。」


天谷はケダモノを見るかのような冷たい視線を向け、隣に座っていた九条にシュッと寄りかかる。


その流れで、馬車の中が三人娘の笑い声で包まれた。


ただ意見に賛同しただけなのに、あまりにも酷い仕打ちである。



(やっぱりこいつら"終わってる".....けどまあ.....)


怒りを抑える為に握り拳を作るが、それとは逆に表情自体は柔らかい。


いまこの場で起きている"ソレ"は、一種のコミュニケーションだ。


勿論、それは光も十分に分かっていだろう。



出発前はあんなにも胃が痛かったのに、気付けば治まっている。


こういうのも悪くないかもしれない、そんなことを思いながら残りの移動時間を過ごした。




~フォルティス魔法学院 特別合宿所 にて~



「早速だが、ここの隣にある森林ステージを使って丸1日間、対人間を想定した実践練習をおこなう。」


到着早々、なにやら物騒なことを言い出すセシル。


この世界には一応法律的なものは存在するが、日本のようにしっかりとは機能していないらしい。


その為、犯罪行為は珍しくなく、街やクエスト中などに人間から襲われた例は数えきれないほど報告されている。


(.....つまり"自分の身は自分で守れる様にしとけ"ってことか)



そして、単なる模擬戦ではなく、実際に起こり得るシチュエーションというのが今回の肝。


森林ステージと言うだけあって、面積はとんでもなく広く、無数の草木に囲まれ、今にも魔物が現れそうなくらい本格的なダンジョンに仕上がっていた。


これだけの環境で練習できる機会など、魔法学院の生徒でもない限りまず無いだろう。



「一人でサバイバル生活を送れって話じゃないぞ。 実戦を想定し、4人でパーティーを組んで行動してもらう。」


『マジで?!だ、誰と組もうかな~。(チラチラ』

『お、お前何考えてんだよ!...俺も混ぜろよ』

『シ、シルヴィア様と...1日...森の中で...』


しょうもないことで盛り上がっている男性陣を余所に、セシルは説明を続ける。



「あ、FODの練習の時に対人戦の経験してる奴もいるから、戦力が均等になる様にパーティーはもう決めてあるぞ。」


『ガーン...』

『もう今日は帰ろうぜ...』

『いや待て、まだ希望はあるだろうが...諦めんなよ...』


数秒前まで最高潮に盛り上がっていた男たちのテンションは、セシルの無慈悲な発言によって一気に下がってしまう。



(お前ら欲望に忠実すぎるぞ.....少しは自重しろ)


光は可哀想なものを見る様な目で、男性陣の様子を後ろから眺めていた。



「パーティーはこの後発表するが、まずはルール説明からだ。」



■特別授業その1 対人訓練 in 森林ステージ


☆開始時、各リーダーに「バッジ」が1枚配布される

☆他のリーダーが持つバッジを魔法と戦術を介して奪い、最終的に集めたバッチの数を競う

☆バッジを奪われた場合は合宿所に強制転移させられ、新しいバッジを貰ってから再スタート

☆武器および攻撃系の魔法は、殺傷能力Cランク以下かつ下位魔法のみ使用可能

☆野宿の道具は提供されるが、場所と食料は自分達で確保・調達すること

☆18時~6時までは休戦時間とする。

☆成績が優秀だったパーティーにはご褒美あり

☆1-Aから1-Cまでの生徒が参加。計15パーティーで競う




「とまあルールはこんな感じだ。 何か質問あるか?」


『あの...お手洗いとかはどうしたらいいんですか?』


一人の女子生徒から、ごもっともな質問が出る。


男ならともかく、年頃の女の子に野宿は厳しいものがあるだろう。



「安心しろ、デバイサーで現在地と用件を言ってくれれば、その位置に仮設トイレを空間転移させる。」


『あ、それなら良かったですー。』

『いやーそれぐらいはしてくれないと困るよねー。』



(...いやいやいや!さらっと凄いこと言ってるけど!!反応薄すぎだろ!)


この世界で生まれ育った人間からしたら、よくあることなのかもしれない。


「魔法」というトンデモ技術を惜しみなく生かした、いい例だ。


そういうところは無駄に近未来的なのに、なぜ移動手段が馬車なのかと、再び呆れ返る光だった。



「他に質問はないなー? んじゃ最後にパーティーを発表するぞー。」


(...ゴクリ)


中学と高校時代、体育の授業などでグループ分けをする際、毎回緊張していたのを思い出す。


頼むから面倒臭い奴とは組まさないでくれ、なんなら先生相手でも構わん、などとよく脳内で叫んでいた。



「パーティーAのメンバーはアッシュ・レオナ・シルヴィア、あと――」


初っ端からシルヴィアの名前が出てきたことで、クラスの男子生徒達は一斉にザワつく。


『い、いきなりかよ...なんて残酷なことしやがる...!』

『アッシュお前...あとで〇〇すからな』

『最後の一人...頼む...頼む...!』


シルヴィアの強さを考慮した場合、光やレイリスが同じパーティーに選ばれることはないだろう。


そんなことをしたら、チームバランスの崩壊待ったなしだ。


おそらく、比較的実力が控えめの誰かが、適当に選ばれるはず。



このあとセシルが発する言葉に、男性陣の注目が一斉に集まった。


必要以上に焦らしてくるのはワザとなのかそうでないのか分からないが、再び緊張が走る。



「最後はレイリスだ。 続いてパーティーBだが――」


予想外の人選に生徒たちは驚きを隠せず、説明を中断させる勢いで抗議が始まった。


『さすがにその二人が組んじゃったら、他のパーティー厳しくないですか?』

『いいなあシルヴィア様...』

『レイリス様なら仕方ねえか...いやしかし...』


的確な指摘をする生徒だけでなく、完全に私怨でボソボソ言っている生徒もいるが気にしない。


ともかく、こればかりはセシルから納得のいく回答を貰わなければならないだろう。



(あー...そーゆーことね)


徐々に空気が荒れていく中、光だけはこの人選の理由を分かっていた。


学院の所有地とは言え、今回使用する森林ステージは"ガチ"なところだ。


極端な話、何が起きてもおかしくない。



実戦に近い環境というのが醍醐味なのだが、言い換えればそれは、大きなリスクを伴うということでもある。


要するに、王女殿下の身に何かが起きてからでは遅いのだ。


万が一にもそうならない様、保険としてレイリスを同じパーティーに入れた。



「――というわけだ。 勿論、レイリスには程々にする様に前から言っておいたから、一方的に虐殺されることはない。」


『そ、そういうことでしたか...レイリス様、シルヴィア様、申し訳ございませんでした!』


「いえいえ、お気になさらず。」


「実力が均衡する様に、僕がちゃんと調整するから大丈夫さ。」


『待て...じゃあ結局はアッシュの一人勝ちってことか?』


セシルの説明を受け、クラスの生徒達は一斉にレイリスとシルヴィアに謝罪する。


全く関係ない話をしている輩もチラホラ見受けられるが、そこには触れないでおこう。



その後も、パーティーB、C、D、Eのメンバーが順に発表されていった。



肝心の光はというと...


『ふぇぇ...大丈夫かなあ』

『カトレアと一緒だ!嬉しい~!』

『三刀屋がいれば、もしかしたらシルヴィア様たちにも勝てるかもな!』


お世辞にも仲が良いとは言えず、名前さえもあやふやな男子1名、女子2名とパーティーを組むことになっていた。


せめて木乃葉や九条、最悪グリフレッドでも良かったのに、一人も知り合いがいないとは不運である。



『ん、三刀屋くん、私たちの話聞いてる?』

『おいおいどうしたんだよ三刀屋、この前一緒にトイレ掃除やった仲だろ俺達!』


しかし、意外にも他のメンバーたちは、気さくに話し掛けてくれていた。


それもそのはず、光はもう昔のような"真性のぼっち"ではないのだ。


ただ根暗で捻くれていて一人で過ごしている時間が多いというだけで、嫌われているわけでも距離を置かれているわけでもない。



そうなれば、メンバーの期待に応えてやるのが自分の仕事だ。



「...ああ、俺に任せろ。 シルヴィアだろうがレイリスだろうが、全員なぎ倒してやる。」


『なんだ、気合十分じゃねえか!』

『頑張るぞー!!』

『お、おおー...!』



同じ目標に向かって一致団結するパーティーDのメンバーたち。


ついに、フォルティス魔法学院の特別合宿が始まった―――

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