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【第35話】ここに来て初めて知った超重要な手がかり

~王都ニヴルヘイム中央通り 武器屋 にて~



「うおぉ...ゲームとかで見るやつとほとんど同じだ...」


光の宣言通り、二人はまず装備品を売買している店に来ていた。


店内には、剣・槍・斧・弓・盾・鎧など、RPG定番の武器がズラリと並んでいる。


他にも、煙幕や設置罠などの消耗品として使用する小道具まで、幅広く備えてあった。


種類の豊富さと品揃えの多さは、さすが王都といったところだろう。



「なんだこれ....剣の柄? こんなの一体何に使うんだ?」


まるで玩具店に来た子供の様に興奮している光。


一方、そんな彼の様子を見て、木乃葉はニコニコと微笑ましげに見守っていた。



「本当にファンタジーの世界って感じだね。 気に入ったのあった?」


「うーん....見た目が好みなのはいくつかあったけど、エグゼキューターなら大抵のことは出来ちまうし、買うまではいかないかなって感じ。」


「おや、以外ですな。 昔の光くんなら、武器にはロマンが~とか言ってそうなのに。」


「俺の生活費って、色々あって全額支給して貰ってるから、あんまり無駄遣いできないんだよ.....」



勇者ともなれば、多少の贅沢くらいは許容して貰えるだろう。


やろうと思えばこの店の売り物全てを買い占めることも可能だ。


勿論、そんなことをした暁には重い重い罪悪感に襲われることが分かりきっているので、光は武具に限らず、お金を浪費するような行為は絶対にしない。



(.....ん?そういえば....)


何気ない会話をしている最中ではあるが、光はとある疑問が浮かび、木乃葉に問う。


「......木乃葉ってさ、毎月の学費とか生活費ってどうしてんだ?」


「えっと、ギルドに居た時に貯めたお金と、今ちょっとやってるバイトでやり繰りしてる感じかな。」


「はぁ?! ギルド?!」


予想の斜め上をいく回答がきたので、店内にも関わらず大声をあげてしまう光。



『なに?喧嘩?』

『痴話喧嘩なら余所でやってくれよ』

『今時の若い子は元気だねえ。』


「あ.....すみません。 木乃葉、一回出るぞ。」


光は客と店員に頭を下げ謝罪し、木乃葉を連れ駆け足で店の外に出る。



「ひ、光くんどうしたの.....そんなに驚くことだった?」


木乃葉としては、そこまで激しいリアクションをされるとは微塵も思っていなかった模様。


自分の収入源を伝えただけなのに、突然光が過剰な反応をするものだから、逆に驚いてしまっただろう。



一方、光は額に手を当て、頬に汗をスーッと流し、自分の胸がざわつき始めるのを感じていた。


(......俺は馬鹿なのか? 1ヶ月近くも同じ学院で過ごしていたのに、何で今まで気付かなかったんだ)



「ねえ、大丈夫? 具合でも悪いの?」


首をかしげる木乃葉を、光は人差し指と中指の間からチラリと覗く。


彼は一体、何にそこまで焦っているのだろう。



しばらくして、光は再び木乃葉にとある質問を投げた。


「.....そのギルドって所で、どのくらいの期間過ごしてた?」


「えーと、三ヶ月くらいだったと思う。」


「さ、三ヶ月前....だと.....?」


返ってきた答えが悪い意味で予想通りだったのか、光は青ざめた顔をしながらまたしても黙り込む。



「光くん大丈夫? 私なにか変なこと言った.....?」


さきほどから様子がおかしい光に、心配そうな表情を向ける木乃葉。



「.....大丈夫だ。 それよりも今の話、詳しく聞かせてくれ。」


「えっ、別にいいけど.....立ち話もなんだし、いつものカフェにいこっか。」



そう言って、二人は以前訪れたカフェで話の続きをすることに。


移動中、光は一言も発さずに、ひたすら何かを考え込んでいるようだった。




~カフェ・ディトーレにて~



「じゃあ早速だけど、木乃葉がこの世界に来てから今に至るまで、何があったのか全部聞かせてもらってもいいか?」


「えっとね.....最初に目が覚めた時は―――」



およそ30分以上に渡り、木乃葉が転生してから魔法学院に入学するまでのことを覚えている範囲で話して貰った。



「所々端折って話したけど、大体こんな感じかなあ。」


「......マジかよ。」



木乃葉が話した内容を簡単にまとめると以下の通り。


・この世界で最初に目を覚ましたのは、約三ヶ月前

・目が覚めた時、周りには九条と天谷の二人もいた

・まずは金を稼ぐ方法を探すべく、目が覚めた街の中を色々と回っていたらギルドに辿り着いた

・以降、クエストで生活費を稼ぐ日々が始まった

・魔法は同じギルドのメンバーに色々と教えて貰い、徐々に使えるようになっていった

・とあるクエスト中、同じ転生者である片桐らと偶然出会い、学院の存在を知る

・木乃葉、九条、天谷、片桐、真田、不動、椎名の計7人全員でフォルティス魔法学院に入学する



「ご、ごめんね、黙ってるつもりは無かったんだよ! そもそも最初の方は、光くん全然話してくれなかったし.....」


肘に手をつき、額に手を当て「はぁーー」と溜め息をつく光に何とかフォローを入れようと、木乃葉は慌てて弁解する。



(まさかこんなところでコミュ障の弊害が出ちまうとは.....我ながらアホすぎる....)


普通なら学院で木乃葉たちに出会った時点で、異世界に転生してからどんなことがあったのかを真っ先に聞くだろう。


転生した理由も何もかも分からない現状、お互いが知っていることを共有するのは当たり前である。



しかし、それはあくまで「普通なら」だ。


ご存知のとおり光は元々ぼっちであり、情報共有どころか会話すらしようとしなかった。


木乃葉と仲直りをした後も、この辺りの少し踏み入った話は一度もしなかったのだ。



「.....木乃葉、他に何か知っていることはあるか? この世界に転生させられた原因の手掛かりとか。」


「ううん、その辺の話は全くかな。 ギルドの人にも色々と聞いて回ったんだけどね。」


「.....そうか。」



木乃葉の話を聞いて、新たに判明したことが一つある。



それは、事故で死亡した生徒がこの世界に転生するタイミングが決して同一では無いということ。


少なくとも、光と木乃葉ら三人娘が転生した時期は三ヶ月もズレていた。



つまり――――



(末元の野郎はかなり早い段階でこの世界に転生していて、その間に何かがあったと考えれば.....)


これなら、末元がシルヴィアの命を狙っていることに関して、何とでも理由が付けられる。


他にも、シルヴィアの過去を知っているような物言いだったり、魔法がやけに強力であることにも、これである程度は説明がつくだろう。



(とは言っても、これだけじゃやっぱり何もわかんねえ.....)


結局、末元の真の目的は本人に直接聞かなければ分からない部分なので、何一つとして解決には至っていない。



事故で死亡したクラスメイトは、光を含めて30人。


つまり、まだあと20人以上もの転生者が、この世界のどこかに潜んでいるのだ。



それだけいれば、他にも末元のような悪事をはたらいている奴がいてもおかしくはない。


そう考えると、色んな意味で気が遠くなってくる。



ただ今は、「末元はかなり前からこの世界に居た可能性がある」ということが分かっただけでも、大きな進歩だろう。



「とにかく、話してくれて助かったぜ、サンキュー。」


「よく分からないけど、光くんの役に立てたなら良かったです。」


二人は目を合わせて微笑み、注文しておいたフラペチーノのような物を飲み干す。



「よし、じゃあ次はアクセサリーでも見に行くか。」


「やった! いこっ!」


光と木乃葉が店を出る準備を始めた、その時。


カランカランという入店音が鳴り響くと、10人ほどの団体客がぞろぞろと入ってきた。



「すみません、10名なんですがお席は空いてますか?」


「はい、空いております。 ご案内いたしますね。」


店員とそう話す男は、フードを被っていて顔は良く見えない。


しかし、光は声を聞いただけで、すぐにそれが誰なのか分かった。



『レイリス様、今日はお客さんとして招かれてるっていうのに逆にうちらを引っ張ってくれるなんて.....』

『ちょっと! 街で名前は出しちゃダメって言われてたでしょ! ごめんなさいレイリスさまぁ~!』



フードを被った男の後ろには、よく知った顔が並んでいる。


そう、お店に入ってきた団体は、レイリスとシルヴィアの交流会に参加するメンバーだった―――

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