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【第33話】幼馴染って、やっぱりいい

~セシル=アンベール講師の研究室 にて~



「そんな! セシル先生、何故ですか?!」


光とレイリスは、急遽決まった模擬戦の許可を取るために、セシルの研究室へ訪れていた。


しかし、その申請はあっさり断られてしまう。



「お前ら二人がやり合ったらタダじゃ済まないことぐらい分かるだろ。 そんなもん許可できるか。」


「しかし、先程もお伝えしたようにこの模擬戦には重大な意味が――」


グリフレッドとの模擬戦の際は二つ返事で許可をしてくれたのに、今回は頑なに拒否するセシル。


やはり相手が相手なだけに、そう易々とOKは出せないのだろう。


一見かなりの適当主義に見えるが、芯だけはしっかりしている教師なのだ。



「ただでさえFODの件で学院側も忙しいんだから、これ以上面倒事を増やすな。 分かったか?」


『はい...』


結局、セシルが意見を変える様子はなく、二人は諦めて研究室から退出しようとする。


「あ、レイリスにはちょっと頼みたいことがあるから残ってくれ。 三刀屋はさっさと帰れ。」


セシルの指示に光は「はいはい」と返事をし、渋そうな顔をしながら研究室をあとにした。



「先生、私に頼みたい事とは?」


「...模擬戦は許可しないが、一つだけ君に言っておきたいことがある。」


どうやら、レイリスに頼みたいことがあるというのは、呼び止める為の口実だったようだ。


「ここは魔法学院だ。 国王陛下やヘカトンケイルの管理下にある組織ではない。」


「...? それがどうしたんです?」


「三刀屋を君の事情に巻き込むな、ということだよ。 あいつはごく普通の生徒なんだ。」


「いえ、彼はただの生徒では――」


レイリスが何かを言いかけたところで、セシルはデスクの上を軽く叩き、話を中断させる。



「ただの生徒だ。 それ以上でもそれ以下でもない...いいな?」


セシルはいつものダルそうな態度とは真逆の、真剣かつ鋭い目でレイリスを見る。


これにはさすがのレイリスも観念したのか、無言で会釈をし、研究室から出ようとする。



「あ、悪い、あと一つだけ。」


「今度はなんです?」


「もし今後、三刀屋と直接やり合う機会があったとしたら、No.3の君と言えど勝てる保証はどこにもないぞ。」


「...」


セシルの言葉にレイリスは特に反応はせず、もう一度頭を下げてから退出した。



研究室から出ると、ドアの前で光が立っていた。


「遅かったな、何を話していた?」


「...君には関係のないことさ。」


「まあいい。 で、許可なんて無くてもやるだろ? さっさといこうぜ。」


セシルに断固拒否されたのにも関わらず、光はやる気満々な様子。



対して、レイリスは既に冷静モードに切り替わっていた。


「許可が出ない以上、模擬戦は出来ない。 規則に背くのはヘカトンケイルの一員としても重罪に値する。」


「ならどうするつもりだ? じゃんけんで決めるか?」


「勝負はお預けだ。 それにわざわざ直接戦わなくとも、君にだって僕の言っていることがそのうち分かるさ。」


そう言い残し、レイリスはその場から去っていく。



「なんだあいつ...」


レイリスのスカした態度に呆れ、光は両手を上げて溜め息をつき、自らも学院をあとにする。


そんなこんなで、結局二人の対決は実現せず、配下につくかどうかという話も一時保留となった。



~翌日~


(あーねっむ...昨日はあの野郎のせいで、最悪な気分のまま夜を過ごしちまった)


光があくびをしながら教室に入ると、レイリスが爽やかな笑顔でこちらへ向かってきた。


「おはよう三刀屋くん! 今日もクールな表情をしているね!」


昨日の態度とは打って変わり、今度は気持ち悪いくらいフレンドリーに接してくるレイリス。


誰が見ても分かる通り、無理矢理に見繕った態度だ。



(なるほど、あくまでクラスの中では俺に対してもそーゆーキャラを貫く感じね)


昨日の好戦的な態度も、今の爽やかイケメンキャラも、きっとどちらも彼の素なのだろう。


実際レイリスは「良い奴」であり、誰にでも好かれるタイプだ。


シルヴィアの話が絡んでこなければ、だが。



光とて、入学初日にも関わらず、一瞬にしてクラスの中心人物と化したレイリスを敵に回したくはない。


ここで変にクラスの連中から反感を買わない様、レイリスのノリに合わせる。


「ああ、おはよう。」


簡単な挨拶だけ済まし、自分の席に座る光。



すると、木乃葉がいつものふわふわした表情でこちらに寄ってきた。


「光くん、レイリス様と仲良くなったの?」


ここ最近、末元の襲撃事件やレイリスのことなど、密度の濃いイベントが多すぎて気疲れしていた光。


そんな彼にとって、小学生の頃から変わらない木乃葉の存在は、癒しそのもの。



そこで光は、何かを思い付いたかのようにハッとした表情をし、話し始める。


「いや全く。 それより木乃葉、今日の放課後なんだけど、一緒に王都をプラプラしてみないか? 明日休みだしさ。」


「ほぇっ!?」


「あ、悪い、何か用事あるなら普通に断ってくれ。」


「いきます!!! いや、いこう!!!」


万が一にも光から誘いを受けるなんて思ってもいなかったのか、目を見張り、大袈裟なくらいのリアクションを取る木乃葉。


その表情は、傍から見てもかなり嬉しそうだった。



「そ、そうか! じゃあ放課後にまた声かけるよ、サンキュー。」


「ううん、楽しみにしてるね。」


幼馴染だけあって、やはりこの二人の関係は今も固いままだ。


光は、木乃葉に対してだけは、本当の意味で気を使わずに素の状態で接することが出来る。


男女の関係というより、やはり親友という雰囲気に近い。



そのままの二人が他愛もない話をしていると、シルヴィアが教室に入ってくる。


クラスの生徒らがシルヴィアに挨拶をする、見慣れた光景。


そのルーチンの中に、今日からレイリスも加わっていた。



「おはようございます、シルヴィア様。 昨晩の会議ではダグラス大佐がですね――」


王女殿下であり絶世の美女でもあるシルヴィアと、若くしてヘカトンケイルのNo.3に君臨する天才レイリス。


そんな超高スペックの二人が華やかに会話するその光景に、クラスの生徒らは見惚れてしまう。


『待って、マジで尊い』

『これは映画のワンシーンか何かですか?』

『究極にお似合いじゃん...あの二人』



一方、教室の隅からそんな様子を眺めていた木乃葉と光。


「さすがに絵になるねー。 私達が居た高校ではあんなのまずお目に掛かれないよ。」


純粋に見たままの感想を口にする木乃葉に対し、光は心底不満そうな目でレイリスを睨んでいる。


冴えない男がイケメンを妬んでいるその姿は、あまりにも"哀れ"だった。


(待て...あの時のシルヴィアの言葉を思い出すんだ)


荒立った心を落ち着かせる為に、いつかのシルヴィアの言葉を思い出す光。



『私にとっての勇者は、あなた一人だけですからっ!☆』



台詞こそ一字一句同じものの、光の妄想内シルヴィアは、異常な程あざといキャラになっているらしい。


何とも虚しい脳内だが、効果は抜群だった。



(ククク...そんな態度を取ってられるのも今のうちだぜ、レイリス)


自分に都合の良い過去を思い出して気分が良くなってしまったのか、ボソボソと独り言を言い始める光。


傍から見たら、一人でニヤニヤしながら呟いている、ただの気持ち悪い男であった。



「光くんどうしたの? 具合悪いの? 先生呼んでこようか?」


そんな光を見て、木乃葉は本気で心配している様子。


声を掛けられ、ふと我に返った光は、いつもの落ち着いた口調へと戻る。


「...問題ない。 じゃ木乃葉、放課後はよろしくな。」


「うん!じゃあまたね!」


そう言葉を交わすと、木乃葉は嬉々としながら自分の席に戻っていった。



肉体的にも精神的にも疲労が溜まっていた光は、気分転換に木乃葉と二人で王都内を見て回る約束をする。


光は休日も全て魔法の勉強に費やしていた為、王都に来てからは、寮と学院以外のところに行ったことはほとんど無い。


それこそ、シルヴィアと木乃葉と三人で立ち寄ったカフェくらいのものだ。



異世界に来てから苦労が尽きない光には、このくらいの救済はあってもいいだろう――

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― 新着の感想 ―
[一言] ひかるとキノハの関係が親友から恋人へとさらに良くなるのを見るのはもっと面白いでしょう。
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