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【第23話】復讐は程々に

~フォルティス魔法学院 競技用スタジアムにて~



イベントは予定通り進行しており、一試合目の椎名VSチェルシーがおこなわれていた。


「フレイム・ソード!」


「アーデント!!」


『椎名選手は手に持っていた短剣に火属性魔法をエンチャント! 対してチェルシー選手は肉体強化魔法を使い自らの攻撃力を倍増させていくぅ!!』


魔法を見る限り、椎名はソーサラーで、チェルシーはドラグーンのようだ。



やはり個人戦に出場する選手は、単独でも力を発揮できるソーサラーとドラグーンが大半を占めていた。


「当たったら熱いし痛いよー!」


「そんな遅い攻撃、私に当たると思いまして?」



『女の子同士の対決はいきなりヒートアップ!!! お互いの激しい攻撃が交差したァ!!!』


『椎名ちゃんがんばれー!!!』


二人の熱気に、観戦していたチームメイト達も感化され、応援のボリュームが更に上がる。



新入生向けの超一大イベント、ファースト・オブ・ディクター。


ただのお祭りイベントではない、それぞれのクラスが本気で勝ちに来ている。


その気迫を存分に感じられる、熱い開幕戦だった。



手に汗握る接戦の行方は、最後に意地を見せた椎名の勝利。


『最後の最後で、椎名選手のフレイム・スピアが直撃!!! 勝ったのは椎名選手だァァ!!』


初戦を制した椎名は、これによって二回戦への進出が決まった。


つまり、光が一回戦を突破した場合、次の相手は椎名 桃花となる。



(椎名が勝ったか...さて、そろそろ俺の出番だな)


第一試合目が終わり、次はついに光の試合。



『それでは第二試合、片桐 純選手と三刀屋 光選手の入場です。』



実況のコールが鳴ると、スタジアムに二つ用意されている選手入場用の扉から、光と片桐が姿を現す。


大きな歓声に包まれる中、ついに因縁(?)の二人が相まみえた。



「よう三刀屋、久しぶりだな。 さすがのお前も、こんな世界に来てまで"ぼっち"やってるわけないよなァ?」


異世界に来て初対面だというのに、会って早々片桐は挑発をする。



しかし光は一切反応せず、試合開始のゴングが鳴るのをただただ待っていた。


「ちっ、無視かよつまんねーな。 まあいい、お前なんて一瞬で終わらせてやるよ。」


片桐は余裕の表情をし、笑いながら指定の開始位置へと下がっていった。




『試合の準備が整いました!! それでは第二試合...レディ....ファイトッ!!!!』



試合開始のゴングが鳴ると、スタジアムは再び地響きのような歓声に包まれる。


「一撃で決めてやるぜ!! ロック・ヴァイパーァァッ!!!」


片桐は土属性魔法を操るソーサラーだった。


岩で形成された大量の毒蛇のような物が現れ、一斉に光に襲い掛かる。



「ハハァッ!! 逃げる気力も失ったかオイ!?」


「喰らえ...ナイトメア・ゲイト」


無抵抗に見えた光だが、聞き慣れない魔法を唱えると、彼の目の前に突如ブラックホールのような物が現れる。


しかも、よく見ると両目と口がついており、気味の悪い悪魔の顔のような形状をしていた。


そして瞬く間に、その大きな口で片桐の魔法を全て飲み込んでしまったのだ。



「は? 俺の魔法がき、消えた...?」


『おい、なんだあの気色悪い魔法!?』

『あいつエレメンタルらしいから、あのキモいのが精霊なんじゃねえの?』

『魔法を飲み込む精霊とか...キモい...』



目の前で起きた異様な光景に、片桐は信じられないといった表情。


スタジアム内もザワつき始め、あれほど大きかった歓声が、今は止んでしまっている。



ただ、観客や片桐は、攻撃魔法を打ち消したことに対して、驚いているわけではない。


それくらいの魔法、ガーディアンやサイキックであれば容易に使える。


問題は光の目の前に出現した奇妙な物体、ナイトメア・ゲイトだ。



「フ、フンッ...孤独のお前にはピッタリの精霊だぜ! もう一発食らわせてやればいい話だ、食らえロック――」


片桐がもう一度魔法を唱えようとした瞬間だった。



ズシャァ!という大きな斬撃音が、スタジアム全体に鳴り響いたのだ。



「え...なんでロック・ヴァイパーが俺に...グハッ!!!」


なんと、先程飲み込まれた魔法がナイトメア・ゲイトの口から吐き出され、片桐の身体を貫くという、異様な光景がそこにはあった。



完全に意識の外からの攻撃だった為、片桐は防御態勢を取っておらず、クリーンヒット。


そして、特に傷の深かった腹部から血を垂れ流し、倒れ込んだ。



『お、おおーっとこれは、片桐選手に致命傷だァーーー!!』


数秒前からすっかり黙り込んでいていた実況は、ようやく声を取り戻し、高らかに声を上げる。



一方、地面に痛々しく倒れ込む片桐の姿を見ても、光は攻撃を止めるつもりは一切なかった。


「...この程度で降参してもらっては困る。 さっさと起きろ...ナイトメア・ペイン!!」


新たな魔法を唱えると、ナイトメア・ゲイトを形作っていた黒いオーラが螺旋状の鎖に変形し、片桐の身体を締め上げる。


「ヒッ...ギャアアアアアアア!!!!」


仮にも勇者と言われている男が使うような魔法とは思えない、残酷な魔法で片桐を追い込む。


その光景はもはや模擬戦などではない。


ただの拷問であった。



『またまた謎の魔法を放つ三刀屋選手! これはもう勝負は決まったかァ!!?』


実況の盛り上げ方が上手かったのか、さきほどまで引き気味だった観客も光のヒールっぷりに乗ってきた。


『あのファースト...もはや悪魔じゃねえか!! いいぞもっとやれ!!』

『もっと変な魔法見たいから、止めんなよ審判!!』

『キモいけどちょっとカッコいい...いややっぱキモい』


スタジアムは再び大きな歓声に包まれる。



「無様だな片桐...だが、俺の恨みはこんなものでは――」


そう呟き、光は次の魔法を唱えようとするが...




『勝負あり! 勝者は1-Aの三刀屋選手です!!!』



さすがに後遺症が残るほどの傷を負わせるわけにはいかない為、審判はここで試合終了のゴングを鳴らした。


(...そろそろかと思っていたが、仕方ないな)


審判のコールを聞いて、嫌々ながらも片桐を拘束していた魔法を解除する光。



「三刀屋..お前のその力は一体...」


倒れ込んでいた片桐が顔だけを上げ、光にそう問う。


対して光は、まるでゴミを見るかのような目で片桐を見下し、答えた。


「...どうだ片桐? 今まで散々馬鹿にきた奴に殺されかけた気分は?」


「クソッ...お前なんかに...この俺が...」


完全なる敗北を喫しても尚、片桐の強気な態度は変わっていない。


教室の隅っこで大人しくしていた光なんかに、自分が負けるわけがない、そう信じてやまないのだ。



「なにか...なにかイカサマしてるんじゃないだろうな?!その黒い精霊、色々とおかしいぞ!!」


「...ダセえな、お前。」


片桐の必死な言い訳にも、冷め切った態度で返す。


そして、結局光はそれ以上何も語らず、思ったよりもアッサリと控え室へ戻っていった。



個人的な感情だけで言えば、本当はもっと痛めつけてやりたかったはず。


だが、それでは片桐や鎌瀬のような人間と同類だ。


必要以上に貶めることはせず、やられた分だけキッチリ返す。


それが光のやり方、ということだろう。




ついに開幕したファースト・オブ・ディクター。


光は模擬戦(個人)部門の一回戦を危なげなく突破し、二回戦へと望む。


次の相手は、同じく元クラスメイトの椎名 桃花だ。


はたして、光の復讐劇はどんな結末を迎えるのか―――




~選手控え室 にて~


(.....そういえば、シルヴィアはちゃんと見てくれてたんだろうか)



※以下の台詞はフィクションです


『光くぅーん!! 一回戦突破おめでとう!! この調子なら余裕で優勝だね!!.....あ、でもでもぉ...君は勇者なんだから、私のこともちゃーんと守って、ね?☆』



光は控え室でたった一人、その残念な脳みそで非現実的な妄想をしていたが、すぐに我に返る。


(...冷静に考えて、シルヴィアはこんなこと言わないな、うん。 いや、むしろ言わないで欲しい。)


自分の妄想に自分でツッコミを入れているその姿は、見るに堪えない。


さきほどまで悪魔の様な振る舞いをしていた人間とは別人のようであった。

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