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【第22話】聖戦、開幕?!

遂にこの日がやってきた。


ファースト(一年生)向けの一大イベント、チーム別対抗戦。


その名も「ファースト・オブ・ディクター」(以下、FOD)。


フォルティス魔法学院の一学年は全部で5クラスあり、全クラス強制参加だ。



スペクトラム、模擬戦・団体、模擬戦・個人の三種目があり、それらの順位を競うシンプルな行事。


日本で言うところの球技大会や体育祭みたいなものである。



これらの種目の最終順位に応じて、選手が所属するクラスにポイントが加算されていくルール。



故に、このポイントが最終的に最も高いクラスが優勝となる。


生徒会や他学年、教師も観戦するイベントの為、自らの力を学院内にアピールするにはもってこいの場だ。



また、特に活躍した生徒には、学院で大きな権限を持つ生徒会から入会の声が掛かることもある。


その為、ファーストの生徒はこの日に向けて、皆必死に練習してきたことだろう。



そしてついに、その日がやってきた。



~フォルティス魔法学院 競技用スタジアムにて~



「――ファーストの生徒諸君は今日から2日間、これまでの練習の成果を存分に発揮出来る様、全力で臨んでください! 学院長の私からは以上です。」


『ウオオオオオオ!!!!!』


学院長の挨拶が終わると、生徒が集まるスタジアムの中は、まるで地響きのような歓声に包まれる。



一方、大の学校行事嫌いである光は、クラスの列の最後尾に居座り、相変わらず冷凍庫のように冷めていた。


(...やっぱり苦手だわ、これ系のイベント。 早く帰りてえ。)


「何をシケた面をしている、三刀屋。」


光のやる気のなさを感じとったのか、セシルがわざわざ先頭から喝を入れに来た。



「前にも言ったが、もしお前が個人戦優勝できなかったら、その時点で1-Aの総合優勝は消える...あとは分かるな?」


「...まあ、1on1で負けるのは嫌なんで、そこは任せてください。」


学校行事自体は心の底から嫌いな光だが、そこそこの負けず嫌いではある。


それに、シルヴィアが見ている前で無様な姿を晒すわけにはいかない。


団体競技ならともかく、個人で参加する以上、彼に敗北は許されないのだ。



「そういえば俺、他のチームのレベルとか全く知らないんですけど、うちと比べてどうなんですか?」


今更だが、光は他人との無駄な接触を避けるタイプの為、他のクラスの生徒とは一切関りがない。


「木乃葉たちと同じく、元の世界から転生してきた人間が他にも学院にいるのではないか」と考えた時もあったが、居たら居たで嫌なので見て見ぬ振りを続けていた。



その現実逃避は今も進行中で、すぐ隣に1-Bの生徒が並んでいるが、あえて見ないようにしている。


つまり、どんな生徒がいるのか、どんな能力を持っているのかなど、何一つ知らないのが現状である。



「実は私にも他チームの情報は隠されている。 しかし、単純な魔法の練度で言えばうちのチームは最弱だろう。」


「さ、最弱?! ...マジで?」



当日にとんでもないことを聞かされる光。


「毎週講師だけで会議をやっているんだが、そこでの話を聞く限り、明らかに生徒のレベルがうちより高い。」


「へえ...他のチームの奴らってそんなに強いんすね...」


「あくまで総合力だがな。 個人の力なら、お前やシルヴィアに勝る奴はおそらくいない。 だが、FODは1人が強くても優勝はできん。」


「だから、まずは俺が優勝しないと何も始まらない...ってわけか。」


「そういうことだ、よく分かってるじゃないか。」


セシルは「頼んだぞ」と光の肩を叩き、列の先頭へ戻っていった。



種目は、模擬戦(個人)→スペクトラム→模擬戦(団体)の順におこなわれる。


そして早速、一種目目の個人戦が幕を開けようとしていた――




~出場選手控え室 にて~



「えーっと...参加者は15名で一人がシード。 俺の出番は2試合目だから...もうすぐか。」


光は、ついさきほど渡されたトーナメント表を見て、今後の流れを確認していた。


自分の出番が来るまでは、クラス毎に用意された控え室で待機することになっている。



「俺の1回戦の相手は...ほぇっ?!!!!」


トーナメントに記された一回戦の相手の名前を見て、あまりの衝撃に大きな声を出してしまう。


見間違いなどではない。


トーナメント表には確かにこう記されていた。



""一回戦 第二試合 三刀屋 光 VS 片桐 純""



「片桐ってあの...高校で同じクラスだった...」


ここにきてついに、今まで見て見ぬ振りをしていたツケが回ってくる。



案の定、転生者の中で魔法学院に入学したのは、光や木乃葉たちだけではなかったのだ。



「お、落ち着け俺...他の参加者は――」



★ファースト・オブ・ディクター 個人戦参加選手一覧


1.椎名 桃花

2.チェルシー=ララ

3.片桐 純

4.三刀屋 光

5.フェリッサ=マリ

6.真田 優斗

7.九条 鈴音

8.トレス=ニコル

9.サーシャ=マリア

10.デイアナ=ビセット

11.イヴリン=デル

12.不動 連

13.ルイーザ=シー

14.グリフレッド=マイヤー

15.ナギサ=トワイライト



「......」


個人戦出場選手の名簿を見た光は、もう考えるのをやめた。


片桐という男がこの学院に居たことだけでも、光にとっては十分すぎるほどの衝撃だったはず。


しかし、現実は我々が考えるよりも更に非情なものであった。



なんと個人戦の出場者の中には、まだ見ぬ元クラスメイトの人間が四名もいたのだ。



「...よし、今日はもう帰ろう。」


「三刀屋、さっきから何一人でボソボソ喋ってんの? 緊張?」


顔色を悪くし、さらには独り言まで発している光を見て、同じく待機していた九条が声を掛ける。



「九条、この学院に片桐とか椎名が来てるってこと知ってた?」


「そりゃー知ってるさ、てか入学前から出会ってたし。」


「さ、左様でございましたか...」


「この前、皆で集まってご飯食べにいったけど、三刀屋誘っても来ないだろうから声かけなかったんだよね。」


試合当日、しかもこれから自分の出番が来るというのに、これ以上と無い最悪な気分になってしまった光。


今まで現実と向き合おうとしてこなかった本人が悪いと言えば悪いが、元ぼっちの立場になって考えると分からないでもない。



しかし、今の光は以前とはもう違う。


友達と言えるくらい親しい相手は木乃葉とシルヴィアしかいないが、それでもクラスの一員として応援してくれるメンバーがいる。


(いや待て...これは、奴らにこの世界での俺の力を見せつけるチャンスだ)



★片桐 純と椎名 桃花は、クラス内の中間ポジションにいた人間である。


片桐は、自分に彼女が出来た途端にイキり始める典型的なウザい奴で、光が恋愛経験ゼロなことを煽ってきたこともあった。


椎名は中学校時代にいじめを受けていた経験がある生徒だ。


故に、ぼっちの光を見ると過去の自分と重ねてしまい、無意識に横暴な態度を取ってしまうことがあった。


つまり、この二人は光にとって害だった人間である。



★不動 連と真田 優斗はいわゆるオタクグループに属していて、クラス内では下位ポジションだった。


カースト下位の彼らと、最底辺の光は近い存在かと思いきや、実際は違う。


彼らは、唯一自分よりの下の存在である光を常に見下していた。


「俺はお前のようなぼっちとは違う」という考えをモットーに、徹底的に見下す。


そう、スクールカーストというものは下位にいけばいくほど、自分の立ち位置に敏感になってしまうものなのである。


逆に、天谷・九条・末元のようなトップカースト連中は、最底辺にいる人間のことなんて眼中にすらない為、光にとっては無害の存在だった。



「ククク......フハハハハハハッ!!!!!!」


数秒前まで死んだ魚のような目をしていた光が、今度は急に大声で笑い始めた。


「うわびっくりしたあ!!! ちょ三刀屋、頭大丈夫か?保険室いくか?」


「三刀屋くん! 試合前で緊張するのは分かるが落ち着くんだ!」


当然、すぐ傍で見ていた九条とグリフレッドは光の精神状態を心配する。



「フッ...俺はいたって冷静だ、心配するな。」


どう見ても冷静ではないが、そんなことを呟いた後、控え室の椅子から立ち上がった。


九条とグリフレッドは、ついに光の頭がおかしくなってしまったと思い、可哀想な人を見るような目でこちらを見ている。



「我が混沌たる刹那の精霊"エグゼキューター"よ...処刑の時間だ。」


光は、自分の右手を見ながら唐突に痛々しい台詞を吐いたかと思えば、ついに控え室から出ていってしまった。



「...三刀屋、マジでやばいわ、あれ。」


「僕たちがもっと彼のことを気遣ってあげていれば...クソッ!! 自分が情けない!」


光の不可解な行動を目の当たりにして、九条とグリフレッドは謎の責任を感じてしまっているようだ。



とにもかくにも、光の試合はもうじき始まる。



高校時代の鬱憤がここにきて一度に爆発し、完全に"キレてしまった"光。


1回戦の相手、片桐 純に対し、どんな攻撃を仕掛けるのか。


色んな意味で目が離せない聖戦がついに幕を開ける――


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