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【第2話】元ぼっちの俺が何故か美少女に勇者認定されていた件

「とにかく、今自分が置かれている状況を把握するためにも、まずは街に出てみるか。」


鎌瀬との一件を終えた光は、人間の話し声らしき音がよく聞こえる方向へと足を進めた。


「うわぁ...マジでファンタジーの世界じゃねえか。 馬車とか通ってるし...それに剣を担いでる人まで...」



街の本通りとも言えるような場所に来ると、元いた世界では生涯見ることはないであろう光景が広がっていた。


食料やアクセサリーを売っている屋台、馬車、武器や防具を身に付けた人間。


そんな非現実的な光景を目の当たりにした光は、開いた口が塞がらない。


(遠くからコソコソ見ていても仕方ないし、誰かに話し掛けてみるか...いや、そもそも言葉は通じるのか?)



光が躊躇している間に、食料を売っている店の方から声が聞こえてきた。


「そこのおっさん!今日はリンゴが安いよ!子供への土産としてどうだい?!」

「一つ50ルビか、じゃあ三つくれ。」

「あいよー!!!」


聞こえてきた声は光が良く知る言語...そう、日本語であった。


(マジか、日本語かよ...どう見てもここ日本じゃねえけど、てか地球じゃねえだろ。 でも助かった、言葉は通じる!)


風景や人の身なりなど、明らかに元の世界とは異なる場所で、当たり前のように日本語が使われている状況。


光はそれに困惑しつつも、少しばかり安堵した。



「よし、あの人に話しかけてみるか......あ、あのすみません、この辺に最近のニュースとかを集められる場所ってないですかね? そ、そうクエスト情報とか!!」


光はさきほどリンゴを購入した中年男性に声を掛ける。


(やばい、テンパってニュースとかクエストとか横文字使っちまった! これで通じなかったらめちゃくちゃ恥ずかしいぞ!)


「ん?他の街からの移住者か? それならここを真っ直ぐ進んだところにあるギルドにいくといい。 この街に関する情報は大体そこで分かるさ。」


中年男性は特に不思議に思う様子は見せず、普通に答えてくれた。


「な、なるほど...ありがとうございます!」


(あぶねー...やっぱりクエストみたいなのは存在するんだな...恥かかずに済んだぜ)



光は言われた通りの道を進み、ギルドを目指す。


(.....なんかやけに通行人にジロジロ見られるな。 高校の制服着てるからか?)


この街で光の格好は明らかに浮いている。


すれ違う住人の大半が物珍しそうな顔で彼を見ていた。


(なんか陰口言われているみたいで気分悪いな.....さっさとギルドにいこう)


どうにも居心地が悪い光は、早歩きでギルドへと向かった。



~始まりの街 ギルドにて~


「ここがギルドってやつか...思ったよりデカいな。」


田舎のような雰囲気が漂う街において、ひと際目立つ大きな建物、ギルド。


「ちょっと緊張するけど、行くしかねえ...」


光はギルドの入り口を開け、中に入る。


「こんにちは! 今日はどんな御用で?」


中に入ると、受付スタッフと思われる女性が元気な声で迎えてくれた。



「あ、えっと、その、初めてきたんですけど.....」


「初めてのお客さまですね! 当ギルドを利用するにはメンバー登録をして頂く必要があります。 まずはこちらの書類を記入してください。」


「えっ、あ、はい。」


まるでフィットネスクラブに入会するかのような案内を受ける光。


「私は登録の準備をして参りますので、書き終えたらそちらの椅子にお座りになってお待ちください。」


そう告げると、受付人は準備とやらをしに奥のスタッフルームへ行った。



「あー緊張したー.....えーっとなになに、登録者名・身長・体重・年齢―――クラス?」


受付から渡された書類の項目には、よくある基本情報に加えて、"クラス" という見慣れない欄があった。


(え?クラスって何? 俺の場合は2年A組って書くの? この世界にも学校とかあるの?)


受付人は準備で席を外しているため、質問しようにも出来ず、申込用紙を書く手が止まってしまう。


「仕方ない、受付の人が戻って来るまで待つか。 あのアホ(鎌瀬)のせいで疲れてるしな。」



休憩スペースの椅子に腰掛け、大きく息を吐いた後、眠る様に目を瞑る光。


するとどこからか、これまた聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「やっと見つけました.....予言の勇者様。」


光は重い瞼を開き、意味不明な台詞が聞こえてきた方向に視線を移す。


そこには、顔を隠すようにフードを被り、薄いピンク色をしたセミロングヘアがチラリと覗く少女が立っていた。



おそらく年齢は光と同程度だろう。


身長は165cmほど、華奢でスタイルが良く、チラッと見える右サイドの髪の一部を三つ編みにしている。


フードを被っていて顔は良く見えないが、間違いなく可愛い...と思う。


しかし、ルックスの可愛らしさとは裏腹に、どこか強い信念を持っているような、そんな目をしている少女だ。



「.....えっと、もしかして俺に話しかけてますか?」


「はい、あなたに言っています。 勝手ながら居場所を探らせて頂きました。」


ピンク髪の少女の発言に、脳内に疑問符が大量発生する光。


「あなたという人間と、あなたが持つ力は、必ずこのエルグラントに平和をもたらすと予言に出ているのです。」


「ごめん、ちょっと何言ってるか全然分からない。 エルグラントってこの世界のこと?」


「世界ではなく、この国の名です。 そして単刀直入に言います、あなたの力を我が国にお貸しください。」



ピンク髪の少女は、数時間前まで日本にいた光にとっては、馴染みのない言葉ばかり口にする。


(まあ、ありがちなストーリーと言えばそうだけどさ、絶対言う相手間違ってるだろ.....)


少女の話す内容自体はともかく、何故それを自分に話しているのか、光はそこに一番戸惑っていた。


高校でぼっちを貫いていた自分が勇者なんて、何かの間違いだろうと呆れかえる。



そしてこの出会いが、異世界での運命を大きく左右することになるとは、当時の光には知る由もなかった―――

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