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【第14話】 圧倒的な実力差

~フォルティス魔法学院 模擬戦用ルームD にて~



光はグリフレッドに言われた通り、模擬戦用ルームの入口に来ていた。


「逃げずに来たか、三刀屋 光。」


(...誰が逃げるか、バーカ)


グリフレッドは学院から借りてきた鍵を使ってルームに入る。



そして、何やら生徒手帳を取り出し中身を読み上げ始めた。



" 生徒間における模擬戦は、下記三つの条件を満たしている場合のみ実行を許可する "


①模擬戦をする為の正当な理由があること

②お互いが同意の上であること

③担任の魔法講師から実施の許可を得ていること


「お前、セシル先生から許可なんて貰ったのか?」


「安心しろ、昼休憩の際に頂いている。」



セシルは見ての通り、かなり適当だ。


『模擬戦?おっやれやれ。私が許可する。 ただ、殺すのはNGな。』


おそらく、こんな感じのやり取りがおこなわれたのだろう。



「よく分かんねえけど、要は俺を殴りたいってことか?」


「君の行動を改めさせたいだけだ。 僕が勝ったら、君はシルヴィア様に謝罪し、今一度態度を改めろ。」


グリフレッドがこの模擬戦を挑んできた理由はこれ。


一見、頭に血が上りやすいだけの馬鹿に見えるが、彼は彼なりの正義を持って行動していたのだ。


しかし、彼の思いは光に通じない。


それどころか、どうやら地雷を踏んでしまったようだ。



「...俺が理由もなしにシルヴィアを避けるわけねえだろ。 仕方ねえんだよ、そうでもしないとシルヴィアに迷惑が掛かるんだから。」


「君、何を言って―――」


光はシルヴィアを避けたくて避けているわけではない。


それなのに、赤の他人であるグリフレッドに知ったような口を聞かれれば、誰でも頭にくるだろう。



「...模擬戦、俺が勝ったら二度と口を挟んでくるなよ。」


「ふっ...話が早くて助かる。 さあ、始めようか。」


お互いに譲れない理由がある、グリフレッドと光の模擬戦が始まった。



「行くぞ! アーデント!!!」


そう唱えると、魔法陣が足元に出現し、そこから湧き出た光がグリフレッドの身体を覆う。


「これは僕の攻撃力を格段にアップしてくれる、ドラグーンの強化魔法だ。 このパワー、君に凌げるかな!」


強化された肉体を武器に、グリフレッドは距離を詰めてくる。



しかし、光は微塵も焦る様子を見せない。


右手を前にかざし、魔法を唱える。


「カオス・ディフェンダー」


黒く巨大な盾が光の目の前に現れると、グリフレッドの攻撃をいとも簡単に防いだ。



「なっ?! なんだその色の防御魔法は! ガーディアンが黒い盾を出すなんて聞いたことないぞ!!」


「だからどうした? それより、よそ見してていいのか?」


グリフレッドが振り返ると、背後から黒い矢のようなものが大量に飛んできていた。


「う、うわぁああああ!!!」


「これはカオス・レイザーだ。」



光は今日授業で学んだ内容を自分なりの理論に置き換え、脳内で新しい魔法をいくつも生み出していた。


もっとも、光と同じ魔法を使える人間は他に存在しない為、一人で研究するほかないのだが。


「こいつ、見たことも聞いたこともない魔法を使うぞ...どうなってるんだ。」


「もういいだろ、さっさと負けを認めろ。」


「負けを認める? 有り得ないね。ドラグーンはな..己の身が亡びるまで戦い続けるのが使命なんだ!!」


(...気合でどうにかなるレベルの実力差じゃないだろ)



光はグリフレッドの根性は認めるものの、既にボロボロの相手を痛めつけたくはない様子。


「まだやるのか? 言っとくが、俺はまだ力の100分の1も出してねえぞ。」


「ふふふ...君は確かに強いかもしれないが、僕には勝てない。 なぜなら、これから"バーサーカー"を使うからね!!」


バーサーカーとは、魔力を一度に全て開放し、一時的ではあるが圧倒的な身体能力を得ることが出来る、諸刃の剣だ。


下手をすれば、しばらく魔法が使えないほどの蓄積ダメージを被る可能性がある。


しかし、今のグリフレッドはそんなリスク管理が出来る状態ではない。



「来い...バーサーカー!!!」


先程と同じようにグリフレッドの足元に魔法陣が発生し、肉体強化が始まった。


ただ、今回の魔法陣は先程よりも大きく、ルーン文字のようなコード(魔法を構成する術式)の数も多い。


「ふ、ふふふ、はぁ...今の僕の攻撃、いくら君でも防げないだろう!」


まさに狂戦士と化したグリフレッドが光に襲い掛かる。



「これで終わりだああああああ!!」


しかし、彼が全身全霊の力を込めた攻撃を放った時、もうそこに光の姿は無かった。


そして突如、模擬戦ルーム内にふわりとした落下音が数回発生する。



「.....へ? これは....僕の制服の生地か....? それに髪の毛....?」


「八ッ....いい前髪だな、俺に感謝してくれよ。」


なんと光は、瞬間移動でもしたかのように光速でグリフレッドの後ろに回り込み、彼の制服と前髪を一瞬にして切り刻んでしまったのだ。



「 ば、化け物だああああああ!!!!!」


光が使った魔法は"カオス・ディスラプター"。


あのカノープスを一撃で再起不能にした、凶悪な魔法だ。



あまりの実力差に戦慄し、グリフレッドは叫びながら無様にも逃走してしまう。


彼は本気で光に勝つつもりだったらしいが、悲しくも実際のところは茶番にさえなっていなかった。



「あーーーしょーもな......やる意味あったのかこれ? さっさと帰って勉強しよ。」


「待ってください。」


模擬戦用ルームの端にある物陰から、今の光にとっては最も馴染み深い声が聞こえた。


「......シ、シルヴィア、いつからそこに。」


「初めからです。 一応、あなたが勇者としての道を外すことがないか、影から監視していました。」


グリフレッドが光を模擬戦ルームに誘った時の会話が、シルヴィアの耳にも入っていたらしい。


それにしても、ルームのスペアキーまで調達済みで、更には光たちよりも先回りして行動している仕事っぷりには恐れ入る。


さすがは王女といったところだろうか。



「監視って、意外と怖いことするのな...。」


「私はあなたの監視役としてこの学院に来たのですから、当然です。」


シルヴィアは名目上、光の監視役としてこの学院に来ている為、監視自体は特に不思議なことではない。


ただ、今までの彼女なら、おそらく模擬戦が始まる前に止めていたはず。


あえてそうしなかったのは、きっと光を心の底から信じているからだろう。



「いい加減に話してください、私を避けている理由を。」


シルヴィアは真剣な表情で光に問いかける。


「屋上で言った通りだ、俺と話してるところを他の奴らに見られるとシルヴィアに迷惑が掛かる、それだけ。」


「その迷惑というのが、何を指しているのかサッパリ分からないのですが。」


そう返されると、光は途端に言い返せなくなり、ハァと溜め息をついてから話し始めた。



「俺、実は.......」


「実は?」


もう一呼吸おいて、続ける。



「.......元々、ぼっちだったんだ。」



「........え?」



ついに光は、シルヴィアに自分が元々高校でぼっち生活を送っていたことを話す。


それを聞いたシルヴィアの反応は―――

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