【第12話】「悲報」元ぼっちの俺、入学早々やらかす
~フォルティス魔法学院 1-Aの教室 にて~
「え、あ、もしかして光くん...?」
光は自分の教室に入って早々、木乃葉と目が合ってしまった。
それだけでも光にとっては大打撃だが、神からの鉄槌はこれだけでは終わらない。
「お、見て鈴音、木乃葉もうちらと同じクラスじゃん! よっしゃあ!」
「ラッキー、でもなんか木乃葉、固まってない?」
あまりにも不運である。
元クラスメイトの3人組は、見事に全員光と同じチームだったのだ。
「木乃葉どしたー? うちら3人同じクラスだ....って、んん?」
「この人、三刀屋なんとかって人じゃない? ほら、同じクラスだったあれ。」
異世界に来ても容姿は変化していない為、勿論即効でバレてしまう光。
「マジだ、三刀屋じゃん。 へーあんたも転生してたんだ。 まあいいや、木乃葉こっちこっち!」
「あ、うん! 愛華ちゃんも鈴音ちゃんも同じチームなんだね!」
「そのチームって呼び方、慣れないわ。 背中が痒くなるっていうか。」
人間は、嫌われるよりも無関心の方が、何倍もつらいという説がある。
いっそのこと、キモいだのなんだの言われた方が良かったのかもしれない。
木乃葉らは、光のことなど一切眼中に無く、3人で黒板の前あたりに移動し、楽しそうに話し始めた。
(...いやほんと、皆さん今後もその感じでいいんで、ほっといてください)
光は全てを悟ったかのような目で遠くを見つめた後、自分の席に移動する。
光の席は窓際の最後列、超当たりの席だった。
(神よ、せめてもの情け...感謝いたします)
席に着いた後、しばらく光は、窓の外を見て黄昏れていた。
(しかし、マジで異世界の学校に入っちゃったんだな、俺...)
元の世界と学校自体の構造に大差はない。
パッと見、ちょっとお洒落な大学の講義室にしか見えない。
(早く授業始まんねーかな。 つーか、授業が楽しみに感じるなんて小学校一年生以来だ。)
光が一人で考え事をしていると、何やら教室内がザワつき始める。
『シルヴィア王女殿下だ!』
『えーー私達と同じチームなの?!』
『うおおおおおお!殿下ぁぁぁぁ!』
そう、我らがエルグラント王国の第一王女である、シルヴィア=ルー=エルグラント様がおいでになられたのだ。
「あはは...どうも、シルヴィアでーす...。」
当の本人であるシルヴィアは、クラスメイトの反応に苦笑いを浮かべている。
即座にシルヴィアの周りには人が群がり、大騒ぎになった。
(シルヴィア、俺と同じクラスだったのか...)
唯一話せる相手と言っても過言ではない彼女と同じクラスであることが判明したのに、光は浮かない様子。
その理由はただ1つ。
シルヴィアと光が親しげに話していたら、それを良く思わない人間が出てくるのが分かりきっているからだ。
ほぼ間違いなく、光はクラスメイトから敵対視されるだろう。
それだけならまだいいが、シルヴィアに何かしらの害が出ることだけは避けたい。
(あんなに学院生活を楽しみにしてたのに、俺のせいで台無しになっちゃったら可哀想だからな....極力、シルヴィアと教室内では話さないようにしよう)
そんなことを思った矢先、シルヴィアが光の姿を見つけると、嬉々としてこちらに歩いてきた。
「光さん! 同じチームだったんですね、良かったです!!」
シルヴィアはあまりにも、あまりにも"良い子"すぎる。
捻くれたことを考えていた光とは正反対に、とびっきりの笑顔で光に話し掛けた。
しかし、光は無表情のまま。
(...やめてくれ、シルヴィア)
「あ、あれ? 光さん、聞こえてます?」
光は席から立つと、そのままシルヴィアを無視し、教室から出ていった。
「光さん...どうしたんだろう。」
『おい、さっきのあいつ誰だよ』
『シルヴィア様に話し掛けられて無視とか、マジ有り得ないんだけど』
『あとで軽くあいつ締めてやろうぜ』
クラスメイトの反応は当然といえば当然だろう。
誰もが憧れるシルヴィアに直接話し掛けられたのに、一言も返さずそのまま立ち去る。
光にも考えがあっての行動だが、それは普通の人には到底理解できない。
そう、これはぼっちを経験した人間にしか分からないことだから―――